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1-07 巫女? 聖女? いえ男爵令嬢です

 久しぶりに城の中を歩くけれど、何一つ変わったことはなかった。厨房の皆さんは元気かな、お世話してくださったメイドさん達も元気だと良いな。


 そんなことを考えていると、謁見の間へたどり着きました。大きな扉の前で深呼吸です。


 私の名前が呼ばれ、扉が開かれる。無駄に広い謁見の間に入るのはこれで二度目ね。最初は婚約の義で、陛下の前でアルフレッド殿下に指輪を頂いた時。


「ユーフェミアよ、久しいな。何やら火急の用件のようであるが、直答を許す。用件を申せ」


 陛下は相変わらずお元気そうで、ちょっと安心しました。


「ありがとうございます。本日は――」


「――長い、さっさと済ませろユーフェミア」

 ちょ、竜神さま~せっかち過ぎます。


「神とは随分と傲慢な存在であるのだな」

 ああ、陛下……お気持ちはすごく、すごく分かりますが、危険すぎます。


「あんたは自分より――」

「――ストップです! 竜神様ストッ~プです! 余計に話が進みません! 陛下も申し訳ございません。竜神様は今日まだお菓子を食べておられないので、少しばかり気が立っておられるのです!」


 自分でも滅茶苦茶なことを言ってる気がしましたが、決して間違いでもないはずです。


「ふむ、菓子か……確かに茶の時間は大事であるな。神とて同じことか。では帰りに何か持たせるとするか。それで、ユーフェミアよ、改めて用件を申せ、簡潔にな」


 国王陛下、やっぱり素敵な人だわ。何処かの神様と大違いね。


「はい、我が領に蔓延っていた死病でございますが、竜神様の助力により終息に向かいつつあります」


 私は陛下に、これまでの経緯を出来るだけ分かりやすく簡潔に説明した。十五年しか生きてないけど、一番緊張したかも。


「では、バルドが治める地に元凶があると? 何故そのような場所に……死病が発症しているという報告もないが?」


「それについては、分かりません。ただ、放置はよろしくないと思われます。また、竜神様のお話では、すでに手遅れになっている村もあるということです」


「元が呪いだからな、ほっとけば不死者が発生するぞ。もう発生しているかも知れぬがな」


 不死者って、そんな話聞いてないのですけれど竜神様、それ大事なことですよ。


「まあ、不死者など俺が焼き払ってやるが、穢れた土地は穢れたままだな。この娘が望めば浄化できるが、人様の土地だ、そこまでしてやる義理もないだろう」


「穢れの浄化とは! そなた聖女か」

「い、いえそのような大それた者ではございません!」


 聖女様とか、そんな大袈裟な……確かにエリ……聖水はまだ余裕もあるし、祈ったら死病を治せる井戸にしちゃったりできるみたいですが、私は普通の女の子です!


「聖女が何者かは知らぬが、この娘は俺の巫女。さしずめ竜神の巫女という感じか、穢れの浄化など容易いこと」


「わ、私は聖女かどうかはともかく、死病を抑える力を竜神様から頂いたのは事実でございます。呪いを断ち切ることも、竜神様は可能だと仰っています」


 話が何だか私の立場的に、色々と不味い方向へ行きそうなのでここは、本題に戻して早く退散した方が良さそうだわ。


「場所も我が男爵領と近く、対岸の火事では済まされない状況でございます。バルド公爵領での行動の許可と、公爵様へご協力を頂けるように書状を頂けましたら、直ぐにでも公爵領へ向かう所存でございます!」


「うむ……」


 私の説得というか、話はちゃんと通じたようです。公爵領での活動許可証と公爵様への協力を仰ぐ内容の書状を目の前で書いていただき、内容を確認して封をして頂き、早々に王城を退散することにしました。


 ◇◇◆◇◇


 王城から我が家への帰り道、陛下から頂戴したお土産のお菓子に機嫌を良くした竜神様は、チョロいというかなんというか……。


「ただいま帰りました」

「おお、ユフィ……無事でよかった」


 お父様がお出迎えしてくださったけれど、これって無事だったのかしら?


「はい、公爵領での活動許可と、公爵様への書状も頂いてきました。少し疲れましたので、部屋で休ませていただきます。詳しい話は夜にでも……」


 頂いたお菓子をアリスに渡して、竜神様に出すお茶を用意するように指示をして、私はベッドに横たわる。絶対に寿命が縮んだ気がする!


 夕方まで休んで、食事の後に王城での話を、お父様が倒れてしまわないように要点だけ説明して、お休み前にティータイムです。ホットミルクだけど。


「陛下から頂いたお菓子は如何でしたか、竜神様?」

「ん? 旨かったが、俺はユーフェミアが一番好きだな」


 え、え、っと、好きってお菓子の話ですよね!

 ちょっと言葉が足りないです竜神様、知らない人が聞いたら誤解されます!


「という訳だ、お前のアレを食べたい」


 な、なんでそんな意味深な言葉を、見つめながら言うんですか!

 って、ちょっとドキドキはしますが、もう慣れました!


「アップルパイは無理ですよ、時期が違いますから。森のお屋敷に取りに行けば作れますど、それはどころじゃないですし」


 シルフィードもお迎えに行ってあげないとダメね。公爵領の件が終わったら、竜神様にお願いしてみようかな、ついでに林檎も持って帰ってくればアップルパイも作れるし!


「う~ん、そうだな……さすがにもう数日はかかるか」


 数日で済めば良いのですけれどね。


 明日はバルド公爵様へのご挨拶に向けて、公爵家に先触れ出すために城下町まで行って、お会いできるのに何日ぐらいかかるのかなぁ。


 陛下の書状もあるし、早くお会いできるとは思うけど……。

 ゆっくりと眠りに落ちながら、未だ常識にとらわれていた私は、竜神様のせっかちさをすっかり忘れていたのでした。



お読みいただき有難うございます。

毎日更新の予定ですが、変更などあればあとがきで告知します。

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