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1-03 狐さんとアップルパイ

 甘くて旨いものというリクエストに答えるため、今私は馬車の中です。


 お菓子大好きという伝説を真に受けていたお母様が持たせてくれた、家宝と言えなくもない冷蔵の魔道具、冷蔵庫の中にはバターと卵がまだ残っていました。


「あとは、小麦粉二種類とお砂糖、シナモンもあったはず」


 本当は冷蔵庫ごと持っていきたいけど、重くて一人では運べません。

 必要な材料を持って、竜神様の待つお屋敷に戻りました。


「竜神様、お庭にある林檎をいくつか頂いてもよろしいでしょうか?」


「好きにしろ。それよりも早くしろ、腹がへった」


「ありがとうございます。折角なので美味しく作りたく思います、お時間はお許しください」


 林檎をいただく許可はもらったし、バターが溶けちゃう前に先に生地を作っちゃわないとね。


 美味しいお菓子と聞いて、真っ先に思い付いたのはアップルパイでした。


 とっても美味しそうな林檎を目の前にして、材料もあるからこれは作るしかないわよね。


 私の得意なお菓子だし、お腹すかせて待っていらしてね竜神様!


 コネコネと生地を作っていると、首もとに狐さんが飛び乗ってきました。


「邪魔しちゃだめよ、狐さん。大事なところなの、ここじゃ簡単に冷やせないから手早く作らないとだめなの」


 作ったあとも冷蔵庫に戻さないとダメだから、手早く……ってなんだかひんやりしてきたわ。


「あなたが冷やしてくれてるの?」


 首もとの狐さんから魔力を感じる。そして明らかに冷え始めてる手元の生地。

「ありがとう! とりあえず、これぐらいでいいから、しばらく冷たくしておいてくれる?」


「キュキュ!」


 冷蔵庫に戻る必要がなくなったので、生地は任せて林檎を取りに庭に出るけど、狐さんは首に巻き付いたまま。大丈夫かなぁ。


 近くで見るととても大きくて立派な林檎の樹でした。けれど、問題発生です。林檎の実に私の手が届きませんでした。


「うーん、うーん、あとちょっとなんだけど……登るのは無理だし」


 林檎の樹の下で唸っていると、ボトっと枝ごと林檎さんが落ちてきました。


「貰っちゃっていいのかなぁ……ありがとうございます林檎さん」


 無駄にするのも勿体ないので、枝ごと持ち帰り、さてコンポート作っちゃいますか。


「なんだ、枝ごと採って来たのか」


「だ、ダメでしたか?」


「ダメなら枝ごと採れるわけないだろう。ちゃんと持って帰って庭に植えてやれ」


 植えてやれって、林檎の樹ってそんな育て方だったかしら。まあいいわ。


 林檎の皮をむきながら、相変わらず首に巻き付いてる狐さんに剥いた皮を差し出すと喜んで食べてくれるのが、とっても可愛い。


「おい、まだか!」


「痛っ! も、もうちょっと待っててくださいね」


 魔力の籠った竜神様からの催促で手元が狂って指を切るなんて……。しばらくお料理してなかったものね、仕方ないわ。


「キュキュ~!」


 血のにじむ指先を優しく狐さんが舐めてくれると、不思議と痛みがなくなって血も止まっていきます。


「ありがとう、狐さん。そういえば、お名前あるのかしら?」


 さっきから狐さんって呼んでるけど、竜神様なら知っているかしら。


「竜神様、この不思議な狐さんのお名前はご存じですか?」


「自分の名前も忘れた俺に、それを聞くか? 好きに呼べばいいだろう、もうお前のモノだ」


 私のモノ? どういう意味かしら。まあいいわ、何て呼ぼうかな赤と青の狐さんかぁ……フォンランでいいかしら。


「狐さん、フォンランって呼んでもいい?」


「キュキュキュキュ!」


 とても喜んでるみたいで、何だか胸の辺りが温かくなって心が繋がったみたいに感じました。よかった、気に入って貰えたみたい。


「あとは、コンロに火を着け……たいけど、どうやって使うのかしら?」


 魔導コンロみたいだけど、魔石がみあたらないし、どうしようかしら。


「キュ!」

「フォンラン?」


 フォンランが一声鳴くと、自然とコンロに火が着いて、私とコンロが魔力で繋がった感じがします。試しに強火に念じてみると火力が上がって、弱火に念じると火力が下がります。


「何これ、便利すぎ! フォンラン、あなたが最高ね! オーブンも準備しておこうかしら、お願いできる?」


「キュキュ!」


 予想通り、オーブンに火が点って魔力が繋がるのを確認して、温度調整をイメージすると思いどおりの温度に調整できて感動しちゃいました。


 ここまで来れば、もう何も怖くないわ。生地もちゃんとフォンランが冷やしてくれていたみたいで、こっちも魔力の繋がりを感じることが出来た。


 これは過去最高のアップルパイが完成しそうな予感です。


 その後、何度か魔力入りの催促を竜神様から頂いて、無事にアップルパイが完成しました。


「お、お嬢様! も、申し訳ございません」


 焼き上がった甘い匂いに釣られたのかしら、アリスが目を覚まして、飛び上がるように側にやってきました。


「いいのよ、身体は大丈夫?」


「はい、もうこの通り大丈夫です。これはお嬢様がお作りに?」


「そうよ、竜神様が甘いお菓子が食べたいって仰ったの。いま切り分けるから、アリスはお茶の用意をしてくださる? お湯の準備は出来ているから」


「はい!」


 馬車から持ってきた木製のお皿に切り分けたパイを乗せて、フォークを添えて、まずは竜神様へ。


 アリスがカップに注いでくれたお茶で準備は万全です。


「お待たせ致しました竜神様。アップルパイが甘いので、お茶はお好みでお砂糖をいれてくださいね」


 竜神様がフォークも使わず一口でパイを頬張るのを見て、驚きながらも一口私もいただきます。


 予想通り、過去最高の仕上がりです。林檎がやっぱり美味しいからかな。火加減も理想的に調整できたし。


「旨い。旨いが足りぬ……」


 アリスと私が一切れ食べ終わる前に、残りのアップルパイは全て竜神様が食べてしまわれました。


「そう思って、もう一つ焼いてあります。アリス、切り分けてきてくださる?」


「はい、お嬢様!」


「こんなに小さく切らずともよい、倍ぐらいに切ってくれ。あと、お前達にはやらん、全部俺のものだ」


 ふふ、竜神様って大きいけれどなんだか子供みたいね。これで満足して、私のこと手伝ってくださるかしら?


念のため記載しておきます。

03と04を一時間ほど間違えて逆に投稿していた時間帯がありました。

ご注意下さい。

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