表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
短編集  作者: 無音
6/7

お題「引き出し、コイン、金魚鉢」

ジャンル:ほのぼの、日常物

あらすじ:男の子が引き出しの中から見つけたコインを飛ばして、占いしようと思ったら、金魚鉢にクリーンヒットしてしまった!

 お父さんの引き出しからそれを見つけた時は、飛び上がりそうなほどに心が躍った。

 金色の錆びた、一枚のコイン。日本の硬貨にしては大きくて、日の光を受けて鈍く光る高級そうな代物だった。後ろに彫られているのは、モンサンミッシェルとか言ったものだったけな。

そんなものがぽつん、と、お父さんの部屋の机の引き出しから見つかった時は、これって運命なんじゃね!?と思った。これは、もしかしたらずっと昔に滅びた古の王国の金貨で、引き出しの中で僕に見つけられるのを静かに待っていたのかも。または、なにかすっごい魔法を使う時に対価として使うのかな。僕は考えるうちにわくわくして、居てもたってもいられなくなった。

僕はそっとこのコインをつまんで、手のひらに載せた。ずっしりと重い。これは僕のものだ、と僕は勝手に確信した。そしてこっそりとお父さんの部屋を出た。

部屋から出て一段落すると、僕はあたりを見回した。これを置くのにちょうどいい場所を探すためだ。家じゅうを駆けまわり、棚という棚を開け、隙間という隙間を覗いて探し回った。それでもいい場所は見つからず、僕は困ってコインを見つめた。

今さっき見つけた硬貨をじーっと見ていると、不意にとんでもないことを思いついてしまった。――これでコイントスをしてみたら、どうなるんだろう?

これは僕が見つけた、魔法の硬貨だ。僕の運命のコインだ。だったら、これを使って、自分の運を占ってみてもいいんじゃないか? いい感じに信憑性もあるだろうし。

思い立ったが吉日! と思って、僕は声を上げた。

「コインさんコインさん、僕の今日の運勢はなーに?」

 そして僕は硬貨を、天井まで届くくらいに高く放り投げた。コインは飛び、くるくる回って、それで、がちゃん、という音がした。

 あ、やばい、と僕は危機を察知した。あれは、あれだ。お父さんが社内ゴルフの景品で引き当てた、ちょっと高級な金魚鉢だ。ガラス製で、口のところにガラスのひだひだがあって、サザエさんで見たことある、と最初見た時は思った。ちょっと背伸びして金魚鉢を見ると、見事に真ん中の部分に穴が開いていた。

 どうしよう、やらかした。僕はこの数週間で最大の焦りを覚えていた。中に何か入れてごまかそうと思い、ハンカチかボールか靴下を探しにいこうと振り返った時だった。

「……あ。」

 そこには、僕のお父さんが無表情で仁王立ちしていた。


 あの後夕ごはんで、僕はお父さんに今までで最高の回数だけ謝り、なんとか許しをもらった。聞けばあの硬貨は、僕のお父さんが若い時にフランスで買った思い出の品らしい。魔法のコインじゃなかったのは面白くなかったが、お父さんがお母さんに懐かしそうに話しているのを聞くのは、新鮮で楽しかった。



(終)


このお題はこれで終わりです。お付き合いいただきありがとうございました。

くすって笑ってもらえたなら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ