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【パラレルワールド】NO3 虚無の世界

魔法陣からあらわれた赤い悪魔は、見る者を怯えさせる瞳と頭部に逞しい二本の角を持っていた。

それは、この悪魔が魔族の支配階級である事を意味している。

悪魔は美しい白銀の長髪を持ち、肉鎧に覆われた真っ赤な巨躯は完璧だった。

異次元から転移し未だ意識が混濁しているかの様な表情を悪魔は浮かべ、虚ろな目を凛太朗達に向けた。


「凛太朗、魔法陣を破壊するんだ」


瘴気を吸収し巨大化する悪魔に危険を感じたのか、カトリーヌが、慌てた様子で指示をするのが聞こえた。

凛太朗は、その声に反射的に反応して行動した。

赤い悪魔の意識が、はっきり覚醒していない隙を突き、凛太朗は魔法陣が描かれた大理石の床に掌を突き瞬間的にエネルギーをチャージする。


「逃げるんだ」「地雷 爆裂」


凛太朗は仲間に向け叫びながらサイコキネシスを応用した能力を使い地雷の様に床を爆発させた。

これは魔法陣を破壊するのと同時に赤い悪魔を倒すものだ。

自らはサイキックバリアで、瞬間的に爆風で凶器となった瓦礫から体を防御する。

この爆発で轟音を伴い魔法陣の描かれた床は吹き飛び洋風館は半壊した。

悪魔は、爆風をもろに受けたが、それでも傷一つ負うことは無かった。

そればかりか悪魔は詠唱も無しに突然、超高熱の火炎魔法を凛太朗に放って来た。

凛太朗は瞬間的にバリアを張り防いだが、中庭まで吹き飛ばされた。

女神の加護があり致命傷にはならなかったが、体が焼爛れ大きなダメージを受ける。

ヒーリングでも施さなければ立ち上がれないダメージだが、凛太朗に流れる不死鳥の血が、働きDNAレベルから再生能力を活発化させ、次の瞬間には立ち上がった。


洋風館は炎に包まれた。

赤い悪魔は燃え盛る炎を気にも留めず姿を現した。

悪魔の体からは瘴気が立ち上がる。


「ワレハ、アカイグンダンヲヒキイル、マオウ、アスタロスデアル、

オマエタチ、ナノカ、ワガシモベ、インキュバスヲ、タオシ、ワガ、クワダテヲ、ジャマシタモノワ・・・?」


凛太朗は驚いた。

世界を破滅に導いた企てを画策したのはインキュバスだと考えていたが、目の前にいるアスタロスという異次元悪魔を率いる魔王が、自ら陰からインキュバスを操っていた張本人だと事の真相を明かしたからだ。

この言葉が抗魔官達の怒りに火を点けた。

最初に動いたのは死神カトリーヌと吸血鬼のデルフィーヌだ。

二人は呼応した様に、それぞれ死神の大鎌とティソナデルシドという炎の剣を持って斬り掛かった。


「ハア・・・」「ヤー・・・」


それに対し魔王は左右の腕を魔剣に変化させ紅蓮の炎を纏った。

死神の大鎌は心と体を切断する必殺の鎌である。

現世に生きる者なら命を断ち切れぬものは無いと言われる神の大鎌だが、魔王の魔剣は、その必殺の大鎌を簡単に跳ね返した。


「なに・・・」カトリーヌは大鎌の打ち込みを受けられて驚いた表情を見せた。

連続攻撃を更に繰り出すが魔王に躱される。

「食いちぎれ」吸血鬼のデルフィーヌは炎の剣に宿す火炎竜を召喚し攻撃したが、それも魔剣で風を起こし火炎竜を打ち消されてしまった。

精霊魔法を使うエルフのチェリー、黒魔術を使う悪魔のアンナは有効射程と索敵能力の許す限り距離を取り、ヒットアンドアウェー(hit and away)で攻撃した。

だが、魔王は攻撃魔法を受けても意に返さず、すべてを払い除ける。

タイガーの戦い方は一撃必殺離脱戦法だ。悪魔の首を狙って果敢に飛び掛かる。

アンドロイドのエリザは途轍もない重い強拳でカウンターパンチ狙いか・・・。

烈しい戦闘が展開された。

魔王は攻撃を躱しながら、突然、攻撃に転じた。

掌を前方に突き出し抗魔官達に向け暗黒魔術を発動した。


「ギブ、デス(Give death:死を与える)」それは確実死を与える言葉だった。


魔王は、この時、不死の者に死の魔法を掛けるという大きな間違いを犯した。

だが、死神カトリーヌや吸血鬼のデルフィーヌ、悪魔のアンナ、アンドロイドのエルザの不死の者、それに再生能力がある凛太朗は別として、少なくともタイガーやチェリーは死の淵に立たされたのは事実であるが・・・。

それも創造主である室長が、瞬間的に神通力で魔王の暗黒魔法を無効化された。

もし、魔王がデス魔法以外の魔法を選択していたら、この後の展開は変わった筈である。


「ナニ、ワガチカラガ、オヨバヌト・・・」


今度は魔王が、驚愕の表情を浮かべた。

凛太朗は魔王が、以前、倒した火炎竜と同じアグリゲート、集合体ならば幻想砲では倒せないと思いながらも勝機を見つけるために妖刀村正を瞬間的に幻想砲に造形、最大パワーで幻想砲のトリガーを放った。


「打ち抜けー」


死霊弾は抗魔官達を避けながら魔王の胸部を貫いた。

魔王は一瞬、苦痛の表情を浮かべたが、体に穴が開いても致命傷にはならなかった。

まもなく風穴が開いた箇所の再生が始まった。だが、傷口が思った様にできない。

それでも魔王は魔力を魔剣に集中させた。超魔術を発動させるつもりだ。


「凛太朗、ここからは私が、お相手するわ・・・。」


仲間の後方でフォローに徹していた室長が、危険を察知し魔王に対峙した。


「魔王さん、ここは私が作った隔離空間、超魔術を放つのに必要なダークエネルギーは存在しない。残念ね。だから、これでTHE END」


次の瞬間、室長から神々しい光が放たれた。

魔王は、神の光に消滅されそうになるが、転移魔法を使って逃亡を図った。

しかし、隔離空間を抜けた先は・・・漆黒の闇が広がっていた。

室長は隔離空間を四次元世界から切り離し、果ての次元宇宙に移動させていたのだ。


「魔王さん、そこは何も存在しない虚無の世界、しかも無限の広がりがある。

いくらあなたでも、そこからは抜け出せないわ、あなたいい男だから生かして置いてあげる。

だから、せいぜい反省しなさい。

これで、生きる者が少ない、破壊された現実世界は消える運命を辿る事でしょう。

新たなパラレルワールドが、現実世界として存在する日も近いわ・・・。」

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