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【時の部屋:終末時計】仙人&時を刻む鳥

【時の部屋:終末時計】仙人&時を刻む鳥


その木は不思議な林檎の木だった。

赤、青、黄、紫など大小、七色のリンゴが、たわわに実っている。

カラフルな色を除けば形は普通のリンゴと変わりがないのだが、小さな時計が付いていて時を刻んでいた。

魔女の水晶玉が言うには、この時の部屋に生えている林檎の実は『時の実』といい、食べると若返る不思議なリンゴだそうだ。


林檎の大樹の下には、ひとりの老人が腰を掛けていた。

凛太朗達を見るや、にっこり笑って満面の笑みを浮かべる。

好々爺然(こうこうやぜん:人がよいおじさん)という感じの老人だ。


「お爺さん、この辺りに時神がいると聞いたんだが、何処にいるのか知らないかい?」


「時神様に何の様かね?

ホーホホホ、誰かと思えば、死神様と獣人、それにお前さんは、人間かい?

どういう組み合わせなのか知らんが、珍しいのう。

特に人を見るのは二千年、いや三千年は経つかもしれぬ・・・」


「俺達の住む世界が危機を迎えている。

だから、ここにある終末時計の針を少し戻して貰うために来たんだ」


「そうかそれは難儀じゃのう、じゃが時神様が何と言われるか分からぬぞ・・・ほれ、この先を真っすぐいきなされ、時計が沢山ある。

時計台にある一番大きな時計が、お前さん達が探している終末時計じゃ、大方、その辺に時神様はいる筈じゃわい」


「ありがとう。ところで、お爺さんは、ここで何をしているんだい?」


「ハハハ、儂かい。

少し話が長くなるが、この年寄の話を聞いてくれるかい。

儂は、名を徐市(じょふつ)という。

三千年程昔、未だ儂が人じゃった頃、中華を統一した秦始皇、嬴政(えいせい)様の命により仙人が持つと言われた不老不死の神薬を求めて東方の三神山に旅をしたのじゃが、結局、目的を果せなかった。

儂は罰を受けるのが怖くて東方の倭国に逃げたが、流浪の旅の末、次元の裂け目に迷い込み何時しかこの地に辿り着いたという訳じゃ。

この地で漸く不老不死になる方法を見つけはしたが、気が付けば長い時が過ぎてしまい皇帝に神薬を届ける事も出来ず、ただ、ここで、仙人として下界を見ながら過ごす日々を送っておる。

ほおれ、あそこに飛んでいるのが、儂が探し求めたフェニックス(不死鳥)じゃ、あの鳥の血を飲めば不老不死になる。

魔法の国ではポーションとかいう紛い物が出回っているようじゃが、これこそが神薬じゃ、飲めば例え灰になっても蘇る事ができる。


あ、そうじゃ、お前さんがここに来たのは、きっと運命の導きに違いない。

ちょうど死神様もおられるから、人間の、お前さんにこの瓶に入った不死鳥の血、不老不死の神薬を託すことにする。

皇帝に神薬を献上する役目を果せなかったが、人に神薬を託す事で儂に与えられた役割を終えた事にしよう。これでやっと肩の荷を下ろすことができる。

儂は仙人として長く生きて疲れた。ここらで終わりとしても良かろう。

死神様、後は『冥府送り』を頼みますじゃ・・・」

仙人はそう言うと不老不死の神薬が入った瓶を凛太朗に託した。


「わかったわ・・・この死神マスターカトリーヌが、時の部屋の仙人の最後を看取ってあげる」

そう言うと日傘を大鎌に変え、黒いローブ姿の死神モードになった。

そして魂を刈る死の大鎌を振り下ろし魂の紐を断ち切った。

その瞬間、仙人は苦しみから解き放たれたかの様な表情を見せる。

時の部屋に吹く筈がない風が吹いて老人は塵となって消えた。


カトリーヌは冥界との狭間にいて、仙人だった老人を見下ろしていた。

三つの決まり、「死の書」を確認し、老人の最後の言葉を聞いた。


「唯一つ、悔いを残すとすれば女子の柔肌を知らず死んで行くことじゃ・・・だが、まあ、それも今生で叶わなかった夢だと諦める事にしよう。

死神様、儂を苦しみから解き放ってくれてありがとう」

これが時の部屋で長く生きた仙人、古文書にも名前が残る徐市の最後の言葉だった。


『ふん、老人になっても性欲は枯れぬか・・・愚かな人間の性(さが)は仙人になっても変わらぬな』カトリーヌは言葉を投げ捨てた。


老人に教えて貰った道を真っすぐ歩いた。

道すがら本を背負った不思議な鳥の群れが飛んでいるのが見えた。

一匹がやって来て凛太朗の肩に止まる。すると鳥が背負った本が開かれた。

その本には何も書かれていなかったが、次の瞬間、文字が刻まれ始めた。

そこに書かれたのは凛太朗の生い立ちと抗魔執行官になるまでの事だった。

この鳥には気に入った人の『一生を書き残す』習性があると魔女の水晶玉が教えてくれた。

鳥は時の部屋で永遠に生き続ける。

本に刻まれた記録、生きた証は、例え本人が死んでも、この世界の残される事になるという。

凛太朗の生きた証がこれからも刻まれ、そして歴史となる事だろう。


さらに歩いて行くと雲の道がひらけた。

そこには数え切れない大小の時計が空中に浮かんでいて、中央には大きな時計塔が建っていた。それが老人が言った終末時計に間違いない。

時計の針は十二時を指そうとしていた。午前零時になる時、世界が終わるという。

終末時計は、変わった時計台に載っていた。

この時計塔の土台にはネズミの回し車の様な物が付いており、魔物が疲れた様な表情で、それを回しているのが見えた。

魔物は時計台の構造から回し車を回転させる事で、発電し終末時計を動かしている様に思えた。

凛太朗達が近づくと時神が姿を現した。



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