【金鎧の騎士:籠城(ろうじょう)戦】アーサー王に恋した男
【金鎧の騎士:籠城戦】アーサー王に恋した男
話を凛太朗に戻すことにする。
凛太朗は、アーサー王に無限大の女神の加護と運を与えた。
それは彼女が絶世の美女だったからではない。
いや少しは、そういう気持ちがあったかも知れないが、それよりは魔物に城を包囲され絶望的な状況にありながら、騎士達の先頭に立ち命を賭してでも臣民を守ろうとする彼女の姿に心を動かされたからである。
例えるなら彼女は戦場に咲く一輪の花、凛太朗は、そんな彼女に惹かれ共に戦い守る決心をした。
真夜中になって、ガサガサ何かが擦れる様な音が聞こえてきた。
魔物達が城壁の外に集まり始めたのだ。
「凛太朗、魔物達の鳴き声が聞こえるかい?
時を置かず攻め込んで来るかも知れない。
この城は高い壁と深い堀に守られている。だから守りに徹している限り、おいそれと攻め込まれる事は無いが、援軍が来るなら未だしも、今となってはその望みはない。
もう城の中にいる者達以外に大陸中探しても生き残りはいないだろう。
あの魔物達の多くは元をただせば我が国の臣民だったんだ。
ある日、陽が昇ると見た事も無い大樹が、田園風景の広がる我が大地に忽然と現れた。それが悪夢の始まりだ。大樹は気まぐれではあるが、種子を射出する。
それは生き物に寄生し、その種を植え付けられた者は数日後、魔物へと変貌する。
あの大樹、いや魔樹は夜になると動き回り、僅か数年の間にこの大陸を魔物の跋扈する世界に変えたのだ。
だから、これから始まる籠城戦は、ここにいる戦力だけで戦わなければならぬ。
先が見えないばかりか生き残る望みない戦いである事を分かって欲しい。
迷い人である貴敬には申し訳ないが、この魔物達の囲いの中から戦って逃げる事も叶わないだろう。
そうだ凛太朗、少し、このアーサーと、そこに立っている城壁塔に登らぬか?」凛太朗はアーサー王に誘われ彼女の後を歩いて城壁塔の上に登った。
そこには夜空いっぱいに星空が広がっていた。
「凛太朗、この塔から見える夜空に輝く星たちは宝石を散りばめた様だろう。
貴敬の住んでいた世界の夜空はどうなんだ・・・?」
「私の住んでいた街の夜空は、この世界の星々には及びもつきません。
ただ、川には七色に輝く橋や天にも届きそうな輝く塔があり、街は光で溢れております」
「そうか・・・凛太朗の、住んでいた所は、この世界からすれば、上位の世界にあたるかも知れぬな・・・。
もし、生き残れたら、このアーサーを凛太朗の世界に連れていってくれぬか・・・⁉」
「分かりましたアーサー王、この凛太朗、きっとお連れ致します」
彼女に少しでも生きる希望を持って貰うため凛太朗は約束した。
この時、凛太朗には彼女の瞳が、夜空いっぱいに輝く星よりも奇麗に思えた。
昆虫は日中よりも夜間に活発に活動する。魔物達も、その習性を受け継いでいた。
戦いはギギーという鳴き声が、最高潮になった真夜中に唐突に攻撃が始まった。
人が充分に力を発揮できない暗闇の中に魔物達が襲って来ることが危惧されたが、幸いな事に今夜は満天の月明かりがあった。
戦いの火蓋を切ったのはやはり羽根を持つ魔物達だ。
高い城壁を難なく飛び越えて襲って来た。
「月明かりが我らの味方だ。天は未だ我らを見放してはおらぬぞ‼
弓兵、城壁から矢を射かけよ!近衛兵、城兵、門を死守せよ‼
女子供は城壁に這い上がってきた魔物に石を落として撃退する様に・・・百人隊長、騎兵、重装歩兵達は魔物達が城内に雪崩れ込んだら盾となり押し戻すんだ‼
奴らの唾液は危険だ。近接戦を避けて、槍で攻撃せよ!」アーサー王は手際よく指示を出した。
彼女は飛んでくる魔物を空中で刺し殺すなど達人級の槍さばきを見せた。
凛太朗も村正で侵入して来た魔物を切り捨てる。
数十匹は切り捨てたであろうか、村正の刀身に人面瘡が現れた。
ソウルエナジーが、充分に補給されたのだ。
「旦那、魂はもう充分だ!」
「分かった」
凛太朗は戦うという共通の目的で、この頃、村正と一体感を持てる様になっていた。
呼吸を整え村正に闘気を流す。携帯式ミサイルをイメージ化、造形能力を使い、FGM-148 ジャベリン対戦車、歩兵携帯式多目的ミサイル砲を作った。
この携帯用ミサイル砲の射程は2000M、装甲貫徹力は600MM以上、遠くにいる大型魔物の硬そうな鎧皮も簡単に打ち抜き一撃で倒す事ができる強力な武器である。
凛太朗は城壁塔に登って、蟲魔物の黒い群れ、塊を見渡した。圧倒的な数だ。
ミサイル砲のターゲットにする危険な大型魔物を探した。
月明かりがあるとはいえ闇夜ではっきりと見えないが、蠢く者達の中に中小の魔物を引き連れる山の様な魔物がいるのが分かる。
『大きさから言って、人種が魔物化したものではない。
大型動物が魔物化したものか・・・』
凛太朗は最初のターゲットになる魔物に狙いを定め幻想砲のトリガーを引いた。死霊弾は放物線の弾道を描き目標にした大型魔物を撃破した。周りにいた数十体の魔物も爆発に巻き込まれて吹き飛ぶ。
この後も連続して数発の対戦車ミサイルを魔物の黒い固まりに打ち込んだが、焼け石に水、波のように押し寄せる魔物達の勢いは止まらない。
凛太朗は幻想砲を今度はHMGに作り変えてバースト射撃(一度のトリガーで複数の弾丸を発射)をした。
『ドドド・・・ドドド・・・』
外堀は押し寄せた魔物の死体で埋まったが、それを踏み台に乗り越え魔物が城壁をよじ登って来る。
遂に門が開けられて巨大な蠍、蜘蛛や蜈蚣、それに得体の知れない魔物が城壁の中に雪崩込んで来た。
「押し戻せ‼」百人隊長が叫ぶ。
騎兵、重装歩兵が魔物達を迎え撃ち城内は混戦状態になった。
アーサーは負けじと魔物相手に奮戦するが、魔物に食い殺される者が続出する。
彼女も混戦の中でムカデ型の魔物に噛みつかれ傷を負ってしまう。
「アーサー王がやられた」
その声は混戦になってからサブマシンガンMP5に持ち替えて戦っていた凛太朗にも届いた。
凛太朗は倒れている彼女の周りを魔物から守っていた騎士達を掻き分け、直ぐに回復ポーションを飲ましたが、紫色した肌の変色は変わらなかった。
「いかん、毒にやられている。
誰か毒消しのポーションを持っていないか?」
凛太朗は大声で叫んだ。だが、魔物達と戦っている最中でもあり誰も反応しない。
近くにいる騎士も首を振るだけだ。
凛太朗は言いようのない絶望に苛まれた。
その時だった。
神々しい光球が突然、空中に現れ、ゆっくり城内に降り立った。
それは女子高生の姿をした対悪魔対策室の室長、円城寺五月だった。




