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【抗魔執行官:ゴスロリ死神娘と虎獣人】

【抗魔執行官:ゴスロリ死神娘と虎男】

初動捜査をする機捜きそうと鑑識からの情報を受けて、聞き込みを開始した凛太朗達だったが、その時、近くの廃墟ビルから微かに聞こえて来た悲鳴とも取れる叫び声に気が付いた。

もし、同行者に土地勘のある交番勤務の警官がいたなら、ある筈が無い場所に不可思議な廃墟ビルがあることに気が付いたかも知れない。

だが、二人は寂れた工場跡地にある廃墟ビルの敷地に何かに誘われる様に足を踏み入れてしまった。

その廃墟の周辺には俄かに霧が掛かり、さながら幻想郷に紛れ込んだ異様な雰囲気に包まれていた。

凛太朗は敷地に足を踏み入れた時、何か得体の知れない不安に捉われ体に悪寒が走った。

それは理屈では説明できない感覚であり、危険を知らせる予感だったのかも知れない。

この後、予想もしなかった運命が彼を襲うが、当然、今は、その事を知らずにいる。


廃墟ビルを入って、上階から聞こえる物音を頼りに足音を殺しながら中央の階段を登った。壁には、あちらこちらにスプレーで落書きがペイントされていて、夜露でグロテスクに光る剥き出しのコンクリート壁には蜘蛛の巣が、あちらこちらに張り巡らされていた。

ペンライトを頼りに四階まで階段を上がると、そこには窓から異様に赤い月明かりが、さし込んでおり、この階の奥、暗闇の中で男女が、数人絡み合って蠢いているのが見えた。

このビルにたむろしている不良グループなのか、若い女性から漏らす悲鳴とも喘ぎとも取れる声が聞こえた。

近寄って物陰から様子を伺う、数名の少女が男達に押し倒されている姿が目に入った。

薄暗くて分かりにくいが、床には千切れた洋服やピンク色した花柄の下着が散乱している。状況から明らかに暴行をしている最中に思えた。

全裸の少女は全部で3人、大柄な男達の黒光りしたデカ〇〇で、一方的に責められ犯されている。

奇声を上げながら激しく少女達を犯し続け、歓喜とも絶望とも取れる喘ぎ声が少女達から漏れている。


「うわっ、えげつない・・・」


凛太朗は女性に苦手意識があったが、30歳まで、女性を知らなければ魔法使いになれるという根も葉もない都市伝説を信じていたので、その手の事に免疫がまったくなくショックを受けた。

だが、男のさがは正直だ。何時の間にか股間で、ビンビンになったジュニアが気になった。

これは廃墟ビルに女性を連れ込んだレイプだ。

手掛かりを探しているラブホ路地裏殺人事件とは関係ない犯罪に偶々遭遇したのだ。


「凛太朗、この男達を制圧、検挙する。必要があれば拳銃を使って構わん」


目の前で起こっている犯罪を老刑事は見逃す訳にはいかなかった。

指示を出しながら物陰から飛び出し男達を大声で威嚇した。


「こら、おまえたち、ここで何をしている。やめるんだ!」


男達は、その声に少し驚いた様子だったが、殺気を伴う鋭い視線をいっせいに向け、「ギギーギギー」と蟲の鳴き声の様な声を上げた。すると次の瞬間、信じられない事が起きた。

男達の体が突然、膨れあがり、背中は縦に大きく裂け、中から角と赤黒い肌を持つ異形の者が現れたのだ。

更に肩の肉が盛り上がり、背中からは幾つかの黒い突起物が出て、大きな物は蝙蝠の羽根の様なものと尻尾になった。

それはさなぎから脱皮し羽化した蝶の変態の様であるが、現れたのは何れも大きさが三メートルは越える人間の常識サイズを遥かに凌駕した羊や馬、牛馬頭の生き物だった。

もし、この世に異形の者がいるのなら、目前の生物はデーモン(悪魔)や魔物と、たとえられる類に違いない。

得体の知れない生物は凶悪な表情を向けて悪寒を伴う殺気を放って来た。

少女達は既に魔物の巨大化した〇〇〇に下半身を引き裂かれ、大量の血を流しながら白目を剥いて倒れている。


「な、何だ、信じられん。

あれは・・・バ、バケモノ」凛太朗達は我が目を疑い、思わず拳銃をホルスターから取り出しトリガーを絞った。

「バン・バンバン」乾いた銃声が響いて、数発の弾丸が、バケモノ達に命中し、一瞬、怯んだ様に見えた。

だが、次の瞬間、バケモノの盛り上がった鎧の様な筋肉が、ゆっくり脈動する。

「なに!」竜馬は銃弾が、命中したにも拘わらず、何も無かった様に平然としているバケモノの姿を見て唖然とした。

「バンバンバン・・・」凛太朗達は狂ったように9発装填できる弾倉が空になるまで打ち続けた。

しかし、バケモノは銃弾を受けても、殆どダメージを受けていないばかりか、飼い犬が喜んでいる時、尻尾を振る様に垂れ下がった尻尾を悠然と振る仕草を見せた。

バケモノの中でも、ひと際大きく赤い鎧の様な皮を持つ牛頭が笑った様に思えた。

その瞬間、恐怖からゾクッと背筋に悪寒が走った。

サバンナで捕食者のライオンに睨まれた縞馬シマウマの心境だ。

「凛太朗、逃げるんだ・・・」それが老刑事の最後の声だった。

バケモノの指先から鉤爪が、数本伸びて来た。

逃げる暇を与えず彼の胸を貫いた。

凛太朗は、この時、馬頭の赤い眼光に既に捉えられ金縛り状態だった。

それでも呪縛から逃げようと必死に足掻いた。だが、魔物の尻尾が、鞭のようにしなり飛んで来て、背中の肉を容赦なく抉った。全身に激痛が走る。さらに首に尻尾が巻き付き拘束された。

「うぅぅ・・・」首が閉まって息が出来ない。硬いコンクリートの床に力なく崩れ落ちた。

背中に傷を負い、血が大量に床に滴り意識が朦朧とする。

寒気がして体が震えてきた。

「もうダメか・・・」と思った。

その時だった。

そこにいきなり空間が裂け剣が出現、硬そうな魔物のシッポが断ち切られた。

それで凛太朗は危機一髪救われる形になった。

現れたのは、大剣を持った二メートルは優に越え様かと思える体躯の男と、黒を基調としたゴスロリファッションに身を包み、夜なのに何故か日傘を持った可愛い金髪の女の子だった。


「間に合った様ね・・・タイガー、僕はケガ人を神通力で、彼らにヒーリング(healing:治療)をするから、先に魔物達の相手をしてくれる。」


「姉御、美味しいところを貰って、いいのかな?

うふふ、魔物をれるのは久しぶりだぜ」


「いいから逃がさない様にね・・・」


ゴスロリ娘は大男に指示をして、老刑事を見る。

だが、もう駄目だと思ったのか、こちらに駆け寄って手をかざす。

彼女の手からは暖かさを感じる光が出て、やさしく包んでくれる感じがした。

かなり深手を負っていたが、見る間に傷口が塞がり痛みが消えていった。


「もう傷は治ったわ・・・でも未だ動けないでしょうから、少しここで休んでいなさい。」


タイガーと呼ばれた男はゴスロリの彼女が、傷を治している時に魔物と対峙していた。


「野郎ども、銀河の平和を守る正義の味方、タイガー様が相手だ。

3匹同時に掛かってきな!カモン(come on)」、カモン」


大男は大剣を肩に乗せながら、変なポーズをしながら魔物達を挑発した。


「猪口才な、この人間風情が・・・」


大きな牛頭魔は人間の言葉で怒りの感情を顕わにする。

掠れたような声を上げながら距離を詰め鋭い鉤爪で攻撃をした。

「ガン・・・」

強烈な鋭い魔物の鉤爪攻撃をタイガーと呼ばれた大男は大剣で受け止めた。

「ガンガンガン」魔物は更に連続攻撃を加える。

だが、虎男は大剣を軽々と扱い全ての攻撃を受け流し、そればかりか返しの太刀を魔物に浴びせ掛けた。

魔物は鎧の様な皮膚を纏っている。だからいくら大剣であろうとも致命傷を与えることは出来ないが、それでもドス黒い血が辺りに飛び散った。

そこに横合いから馬と羊頭の魔物が攻撃を加えて来た。

虎男は羊頭魔の角攻撃を紙一重で躱すが、馬頭魔の突進をもろに体に受けて壁に吹き飛ばされた。その衝撃でコンクリートの壁には亀裂が走る。

並みの人間では致命傷になる様な壁への激突だ。だが、虎男は平気な顔をして立ち上がる。

この時、この虎男の脳にはアドレナリンが分泌され興奮状態だった。

頭から頬に流れる血を掌で拭い、それを口に含みながら虎男は笑みを浮かべだ。

この男を知らない者には狂っているとしか思えない仕草だ。


「待ちな・・・3対1じゃ、少し分が悪い様だ・・・オラの本当の力を見せてやる。」


タイガーは剣を背中の鞘に納め、突然、と理解不能のポーズをしながら獣の様な咆哮を上げた。

「ウオー・・・タイガー変身‼」咆哮と共に筋肉が盛り上がる。

毛穴からは体毛が生え、体は大きく変化、猛獣化、全開の戦闘モードになった。

「ガォーガォー」その声は、まさに猛獣の吠える声だ。


「貴様、獣人か?

何故、この世界にいる?」


「あはは・・・そうさ、俺は虎の中の虎と言われた大虎だ。

貴様達と同じ、この世界にはいてはならない存在さ、この姿になったからには容赦はしない。」


虎男は壁を蹴り、跳躍、馬頭魔に300kgの巨体で体当たりした。

さすがの魔物も虎の全体重を掛けたタックルの衝撃で壁際まで飛ばされる。更に魔物に覆いかぶさり、牙の生える顎で、魔物の首の肉を食いちぎった。

だが、それで終わりではない。

そこに羊頭魔の鉤爪が伸びてきた。不覚にもその攻撃を受けてしまう。

何本かがタイガーの体を貫いた。だが、咄嗟に致命傷にならない様に急所を避ける。

この攻撃をあまり受けると危険だと察したタイガーは再び跳躍して間合いを取った。

そこに羊頭魔は驚く事に口から火炎弾を吐いてきた。

これは素早い動きで躱し幾つかは前足で叩き落とした。



その時、ゴスロリの彼女が割って入った。

「タイガー待たせたわね・・・」


彼女は見るからに戦闘向きではない恰好をしていた。

だが、魔物が放つ殺気など意に介さず、自ら殺して下さいと言わんばかりに魔物の前に出る。


「僕が相手するわ、覚悟しなさい」


ゴスロリ娘は恐ろしい異形の馬頭魔を前に悠然としていた。

それに真夜中のビルの中で可笑しい事に畳んでいた日傘を差した。

何のつもりか・・・だが、手に持っている日傘は、その形を変える事で意味をなした。

彼女が日傘を持ち上げた。

馬頭魔は何のつもりか訝しんだ様子を見せる。

ゴスロリ娘が、日傘を持ち上げた瞬間、スイッチが入ったかの様に傘は輝き、形を変え大鎌になった。

その鎌は、草を刈る鎌の比ではない。柄の長さが2M、大きな刃が付いていた。

大きさから、彼女の細腕では扱えそうな武器ではない様に見えた。

だが、それは杞憂だった。

彼女は重力を無視するかの様に自分の背丈以上の重そうな鎌を演武の様に軽々と扱ったのだ。

もし、ゴスロリ娘が、髑髏どくろ仮面を付けたなら、その姿は誰もが恐れる。そう、あの死神を連想したであろう。

ゴスロリ娘は馬頭魔に悠然と近づいて行く、殺してくださいと言わんばかりに・・・攻撃に対する警戒心はまったくない。

そんな彼女に牛頭は少し戸惑いながらも容赦のない爪攻撃を加えた。

だが、彼女は爪の軌跡を先読みしているかの様に難なく躱した。

魔物の攻撃は足元のコンクリートを虚しく壊すだけだった。

高速で迫っていく爪を避ける方法は無い、だが、何故か小娘に、あたらない。

「ガァァ・・・」何故だ・・・このちっぽけな人間の女は攻撃を見切っているのか?

その時、だった馬頭魔の動作が一瞬止まる。

目の前の小娘に底知れない殺気と恐怖を感じたのだ。思わず後ずさった。

馬頭魔は、この時、何を、この人間の娘に見たのか・・・?


「死神・・・」


その時、馬頭魔には人間の顔を持つ小娘に魔族も恐れをなす死神の影が重なって見えていたのだ。

ゴスロリ娘が、赤い月明かりが写る程、研ぎ澄まされた大鎌刃を振り下ろした。

それは牛頭魔の防御と分厚い皮鎧を無視するかの様な一閃だった。

その瞬間、魂が抜けたかの様に、馬頭は、あっけなくコンクリートの床に崩れ落ちた。

ゴスロリ娘は姿形から見た目はか弱い人間の小娘の様だったが、実は魔物相手に汗一つ流す事ない強者だった。


虎男は羊頭魔の吐き出す火炎弾と爪攻撃を警戒して、少し距離を取っていた。

それは羊頭の攻撃パターンを見極めていたのだ。

タイミングを見計らって空中に飛び上がる。

虎男は羊頭にタックル攻撃をする。

クラッシュ(つぶす:crush)攻撃は彼の得意とする必殺技だ。

羊頭は、攻撃を双角で受け止め、ダメージを最小限に抑えながら鉤爪攻撃を返して来た。

タイガーが噛みつきで対抗し接近戦になる。互いに攻め手を欠き決定的なダメージを与える事が出来ずに消耗戦になった。





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