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【エルフ娘:鬼女 アンナ(精霊魔法の使い手)】

【エルフ娘:鬼女 アンナ(精霊魔法の使い手)】


鬼女は戦いの最中に急に体が重くなった様に感じた。

勿論、自らに不運と言う災厄の呪いが掛けられたなど露ほども知らない。

この時、タイガーの身を挺したクラッシュ攻撃に対し、正攻法で方天戟のリーチを生かした攻撃をしていたならそれでも勝利の女神は彼女に、ほほ笑んでいたかも知れない。

だが、獣人が、急所を狙って攻撃の間合いに飛び込んで来ることが容易に想像出来たにも拘わらず、この場面で、彼女は必殺技の一撃を選択し勝負を決める事にした。

それは人間の男に徒ならぬ危険な気配があり、この戦闘を長引かせてはいけないと戦闘で培った危険予知の能力が、警笛を鳴らしたからである。

彼女の強さは勝機を得たりと思えば例え危険予知の警笛が鳴っても勝に行く所なのだが、タイガーの掛けた超災厄の影響を受けてなのか?何時もと違った判断をした。

この瞬間には判断を曲げられたものであろうと必殺技を放てば勝利に繋がると彼女は信じて疑わなかった。


「はあー、必殺 鬼神竜槍」鬼女は闘気を方天戟に溜め、気合と共に竜を形成した闘気の槍弾を放った。

人間や獣人相手に、この必殺技を使う事になるとは戦う前には予想もしない事だった。


凛太朗の死霊弾は、方天戟から竜の闘気が放たれるや、それ自体に意思がある様に途中で方向を変え、迎撃ミサイル弾の様に主人を攻撃から防御した。

殆ど同時に三者から放たれた各々最強の必殺技だったが、勝敗を決めたのはタイガーの攻撃だった。

タイガーの身を挺した必殺のクラッシュアタックが、攻撃の間隙を縫って炸裂したのである。


「なに・・・わあー」


「ゴ~ン」鈍い激突音が辺りに成り響いた。

300KGを超えるタイガーの巨体が、地上数メートルの高さから、鬼女目掛けて体当たりしたのだから、その運動エネルギーは途轍もなく大きく、彼女は凄まじい衝撃を受けた。

首筋の急所をタイガーに噛み千切るまでもなく、2メートルを超える大女の鬼女は完全に動かなくなった。


万が一にも地獄界で五指に入る絶対強者が、人間如きに敗れる筈がないと高を括り遠巻きに見ていた赤・青鬼達だったが、女将軍が倒されたと知るや動揺が走り逃走する鬼が出る事態になった。

それでも下廻りの鬼として、意地がある者達は敵わぬと知りながらも、それぞれの武器を片手に二人に果敢に挑んだ。

だが、妖刀村正の進化により強力な飛び道具を得て、新な戦い方を知った凛太朗に敵う筈がなかった。

形成したマシンガン、M134から無数の死霊弾が音をたて連射され鬼達はハチの巣状態にされた。

イメージしたマシンガンは本物そっくりの「ドゥルルルルルルルル」という連射音を上げたので、銃マニアの凛太朗的には満足だった。

凛太朗の顔に、オタクの若者が時として見せる同様の不気味な薄笑いが浮かんだのは彼の気持ちが自然に現れたものだった。


粗方、鬼達を打倒した時だった。

「きゃ~助けて・・・」エルフ娘が悲鳴を上げた。

凛太朗が振り向くと青鬼に彼女が捉えられているのが見えた。


「人間よ、抵抗をやめるんだ。

この雌が意識を持たないゾンビになってもいいのか・・・首をへし折れば、例え再生の風が吹いても、ふふふ、この娘の意識は戻らないぜ・・・もう直ぐ地獄から援軍が来る筈、それまで大人しくしてるんだ・・・」


「しまった」タイガーだけでなく、彼女にも幸運の加護をして置くべきだったと凛太朗は後悔したが、これから、どのような展開に成ろうとも加護を与えて置くに越したことはないと考え直した。


「願わくば彼女に幸運の加護を与えたまえ・・・」


凛太朗が女神の加護を付与した途端に、エルフ娘を暖かそうな光が包み、何かの変化が起こった様に思えた。

「え・・・」彼女は小さな声を上げた。


「私から離れろ!青臭い鬼め・・・」エルフ娘が声を上げた瞬間、青鬼は吹き飛ばされた。

それは凛太朗に取って思ってもみない変化だった。


「私は、精霊魔法の使い手として、嘗てはエルフ魔法王国で、お抱え魔術師を務めた者、魔王との戦いに挑み敗れて、この世界に来てから力を失ったが、力を削ぐ呪縛が解ければ地獄とやらの鬼など敵ではない。」

彼女の喋り口調は、それまでの年相応の少女から、一転して自信に溢れた超越者の様に変化していた。


「二人共、驚く程、強いんだね・・・兄さん達、力が戻って来たからには、これから一人でも充分、やって行けるが、約束した事だから心配はいらない、腐界まで案内する。

凛太朗殿、タイガー殿だったか、私は名をチェリーと言う、赤い実のチェリーだ。よろしく頼む・・・」

凛太朗達は腐界へ行く途中で、思ってもみなかった仲間を得る事になった。

彼女は凛太朗達の目的が済んだ後、精霊魔法の力をカトレーヌに認められて、抗魔執行官として働く事になる。


地廻りの鬼達を倒してから、休む暇もなく装甲した大型の火車が太鼓を鳴らしながら、多数、上空に現れた。

亡者の狩場ではあるが、反乱は地獄界の瓦解に繋がると危惧した閻魔大王が地獄の精鋭を差し向けたのだ。

大型の火車から偃月刀(えんげつとう)や槍・大剣など強力な武器を持ち、金・銀の戦闘鎧・盾、地獄旗らしき旗を身に付けた重装騎兵の鬼達が、二人の前に降り立ち隊列を組んだ。

明らかに今迄の人間狩りをしていた鬼達とは違う、訓練されたた戦鬼の軍団だった。

隊列から少し離れた場所に降りた金色の戦闘鎧を着た指揮官らしき黒鬼が、馬鎧を着けたユニコーン(Unicorn:一角獣)に跨り、声が届く所まで近づいて凛太朗達に話掛けてきた。


「お前達が、そこに倒れている鬼女将軍を倒したのか・・・」


「何も悪い事をしていない俺達を捕らえようとしたから抵抗したまでの事、正当防衛だが、いけないのか・・・」


「これは異なことを言う・・・ここは罪びとに与えられた最後の場所、だから地獄に行くまで欲のまま、何をして過ごそうと勝手だが、ここで罪を犯そうが、犯すまいが、その事に関係なく我々鬼は捕縛の権限を与えられる。

それに対して異議は唱える事が出来ない。

これは我ら、この地を支配する鬼が決めた掟だがな・・・。

ところで、地獄も含めて、この亡者の狩場では支配者たる我々を倒す程の力を持ちえない筈だが・・・制約の足枷を受けない、お前達はいったい何者だ・・・?

えへん、答えぬなら、まあ、それはどうでもいい。

有無を言わさず捕まえる迄の事、心配するな少し痛いが気ままに吹く風が治してくれる。

兵達よ!この者達に情けは、いらん、見せしめに串だしにして、市中引き回しの上、磔をした後、地獄に連れて行く、心して掛かれ・・・」


「は・・・騎馬隊前に、相手は小人数だ。一気に押し潰す。・・・構え」司令官の言葉を受けて副官らしき具体的に指示を出した。


その時、急に霧が流れて来て人影が見えた。

その人影は手に大鎌を持ち黒装束を着た髑髏顔の死神だった。


「え・これは誰かと思えば死神殿ではないか、何用があって、この死者の国に来られたのか・・・貴殿達、死神は死者を冥府に送るまでが役割の筈、この死者の狩場には用はないと思うが・・・」


「黒鬼の将軍、ちょっと待ってくれぬか・・・この者達は決して悪い者達ではない。

それに創造神様の眷属なのだ」


「何、創造神様の眷属とな・・・うむ、さて、死神殿が言う上位神の眷属ならば何用があって、我らの領域に足を踏み入れたのだ・・・」


「この人間は眷属見習いの身、腐界に棲む竜鬼の肝を食し、魔族のメンタル攻撃に抵抗力を付けるために腐界に向かわせ、ここに立ち寄ったまでのこと、地獄界に仇なすもので無く、他に他意は無い」


「竜鬼の肝とな・・・竜鬼は人間のみならず、我々鬼迄、食する者、あやつは鬼族に属する者なれど、邪悪な魔物になり果てた面汚し、何時か止めなければと思っていた所だ。

分かった・・・死神殿、いや、マスターに成られていたか・・・この事は不問にいたそう」


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