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俺の妹は別に5人いる  作者: 天野ゆう
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第3話 多人格の条件

2019/11/19執筆





これでよくわかった。

秋穂は入れ替わったときのことを覚えていない。


「なぁ、多人格の時のことは他の人格の人は覚えてないのか?」


「う、うん。例えるなら夢と同じで薄っすらとしか認識できないんだよね」


「……少しは認識できるのか?」


「うん。だけど基本的には寝てる間に情報共有されるからその時思い出しすかのように認識する感じだけど」


「寝てる間に……か」


……ってことはさっきまでの出来事も明日には秋穂に知られてしまうのか。


「うん、だから勉強した内容とかも次の日にはみんな把握はしてるつもりなんだよ」


「……それってつまり他の4人も覚えたらテストとか楽勝だよな」


「あはは……そうだね」


何か聞いたらまずかったのか目をそらされた。


「と、とりあえず日常生活では私が基本的には表に出てるけど状況によっては入れ替わっちゃうんだよ」


「状況?」


「……私、多人格ではあるけど他の人格は全くの別人じゃないんだよね」


「え?」


「4人とも名前は"秋穂"じゃないけどみんな私の感情から出現した人格なの」


「私がお兄ちゃんに抱く感情から派生してるからそれに偏った時身体が乗っ取られる感じになるの」


「……例えば?」


「……ひなこって子の話だとね、私が少しでも欲情したり、エッチな気分になったり、最近ではお兄ちゃんのことを考えた時にも出てくるようになった。」


「……は、欲情……?」


「そ、そんな反応しないでよ…。私だって恥ずかしいんだから」


「ご、ごめん」


「だから……今日お兄ちゃんに抱きついてたのは"ひなこ"って子で性欲の感情から派生した人格ってこと」



と、いうことはさっきの子はひなこという人格なのか。



なんとなくだけどわかってきた。



秋穂の人格は全くの別人格ではなく秋穂のとある感情が大きく具現化された人格なのだろう。


兄妹に恋するなんて秋穂は常識的に考えておかしいと思ってそれを押し殺してきた。

だけどそれが我慢できなくなった感情の1つが生理的・本能的欲求。


そのなかでも性欲のリミッターが外れたんだろうか。


ナルシストな考え方だがそれだと説明がつく。しかもこれが仮に合っているのであれば全く別のの感情の人格までいるということになる。


「……今まで大変だったな」


「…お兄ちゃん……」


兄妹の壁を感じ葛藤だったり罪悪感だって重くのしかかっただろう。


それなりの覚悟で避けてきたのだろう。


だけど……どうして……


「どうして今それを話そうと思ったんだ?」


「………私の人格最初は2つだけだったんだ。だけど一年で5つに増えてたんだ。よくなるどころか悪くなってた」


「え?」


「だから先生別の方法として、逆にお兄ちゃんに他の人格の人達と接して改善する方法を取ったの。それが半年前」


「……だったらどうして言わな……」


「言えなかった」


「散々無視してたし……なんて声かければ分かんなかったし………嫌われてるかもって考えたら言えなかった……」


秋穂は泣きながらも続ける。


「学校だってお兄ちゃんと同じ高校にしたかったから推薦入試受けた。お母さんとお父さんには真実を話すことは自分から言いたいっていうわがままも聞いてもらってたし……」


……だから父さんたちは何も言わなかったんだな。それにうちの高校に入る理由もわかった。


「今日、トイレですれ違った子が傷つけたかも、悪い印象与えたかもって話してくれてそれで……このままじゃダメだって」


秋穂が俺に伝えてくれる中で少しずつバラバラだったピースが少しずつ埋まっていくのを感じた。


「……でもそんなこと考えてたらひなこに身体乗っ取られちゃっててお兄ちゃんの部屋にいたの。でもやっぱりあれも私の本当の気持ち……」


「……もういいよ。秋穂」


「…お兄ちゃ…」


「ふぅ〜。まじでそういうことは早く言えよ。俺なんか本気で嫌われたかと心配したじゃないか」


「……心配……?」


「あぁ。でもとりあえずそれは誤解って分かったからもう気負わなくていいよ」


「───っ!」


「これから一緒に今までの分もいろいろ話そうぜ」


「……ありがとう……お兄ちゃん……」


好きと言われて悪い気はしない。

キスはちょっと驚いたけどノーカンだよな。


……これからは前みたいに仲良く一緒にいろいろできるといいな。




「……秋穂含め他の3人はあんたのこと好きだから納得してるけどね……」


「…………。」


「…私は絶対にあんたなんか認めないから!」


次の日、秋穂に眠りから起こされると同時にゴミでも見るような冷たい目で言われた。


「………えっと………え?秋穂は?」


「……あんたひなことのこと覚えてないの?情報共有したんだから……あとはわかるでしょ?」


「あ」


「本当に気持ち悪い。妹に欲情するとか……」


「ちがっ…!」


「……なんで私が出てきたと思う?」


「は?」


「……秋穂、あんたに幻滅したんじゃない?だって私が表に出てこれたんだもん」


「な、何を言って………」


「私はさくら。秋穂の男に対する嫌悪感から生まれた人格なの」


「………ってことは!」


「よろしくね。変態お兄ちゃん…。ふふっ」

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