プロローグ
2019/09/16
俺の妹は可愛くて人気者でどんな人にも優しく社交的で人望も厚く非の打ちどころのない女の子───。
ということになってるらしい。
妹の名前は音巻秋穂。
15歳、来週の四月から俺と同じ高校に入学する女子高校生だ。
綺麗な黒髪はいつもグロスピンクの髪留めをしている。容姿は皆が言う通り可愛く兄である俺が言うのもなんだがそこら辺の女の子と比べても頭一つ抜けている。
周りからは「自慢の妹ですね」「あんな妹羨ましい」などと言われるが、俺には全く理解出来ない。
何故なら秋穂と俺は1年以上も口を聞いていないのである。
実際に兄妹を持つ人にはわかる人はいると思うが家にいる時は基本的に関わりがないことは普通ないのである。少ないなりにもまだ食事中などに少しのコミュニケーションがある人が殆どだと思うが俺達は少し異常だ。
本当に"全く"関わりがないのである。
俺の名前は音巻春希。
16歳の高校生で四月から高校二年生である。
趣味も特になく帰宅部ということもありスーパーの品出しのバイトをしてるくらいで、ごく普通の男子高校生だ。
自分で言うのもなんだが勉強は得意な方だ。大げさだが趣味もない俺にとってはそれに近いものがこれで目標点数を取れた時の快感を味わってしまってからは好きになっている。
俺の家族は俺に秋穂、そして両親の四人である。
話を戻すが俺と秋穂は関わりが全くない。
食事は必ず俺のいない時、俺が自分の部屋にいる時、もしくは自分の部屋で食べている。
何か用がある時や何か持ってきて欲しい時には母親の携帯にメール、電話して部屋まで持ってきてもらってる。
学校の登校……はたしか俺が起きるより早く出ているって言ってたっけ?帰りはだいたいバイトか友達と遊んでることが多いから逆に妹は早く帰ってくる。
とにかく同じ家にいても関わりを持つどころか会うことさえない。俺があいつを最後に見たのは何ヶ月か前だったっけか……?
マナーに厳しい母もある日を境に全て許し、父は元から秋穂に甘いことからこの状態が許されている。
な?異常だろ?こんなの家庭崩壊寸前……いやもう崩壊しているのかもしれない。
徹底した俺への拒絶。
当初は拒否されていることに悩んだりもしたが1年以上もこんな状態が続けば嫌でも慣れる。
今になっても何でこうなったかは分からない。俺は何をしたかと言われれば特に思い当たる節もないし、何よりそれ以前はとても素直で俺に懐いてた(……と思う)のに…。
「……そろそろ行くか。」
部屋掃除してた時に出てきた昔のアルバムを閉じバイトの準備をする。
部屋を出ようよした時ふと本棚に足を運んで再びアルバムを開く。
「……昔みたいに戻れたらいいのにな」
再びアルバムを閉じて机の上に置き部屋を出た。
平凡な日常に家族が笑い合えた昔に戻りたい。
そんなことを思いながら玄関の鍵をかける。
「行ってきます───」