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黒髪に秘めたスクレ=ヴェリッタ  作者: 望月 幸
第四章【祝福の国】
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【第四章まとめ】

挿絵(By みてみん)

【主要な登場人物】

・ロズ

 新人の装者の青年。ピンク色のショートヘアに、目つきの悪さが特徴。

 通常の装者よりも屈強な肉体と“装者の糸”を持つが、その代わりに非常に不器用。マグテスに引き取られ、彼を師匠として、修業しながら一緒に暮らしている。そのためマグテスに恩義を感じており、その恩に報いることを最大の目的としている。


 武器は自分の身の丈ほどある棒“ヌエ”で、左腕の刺青に収納している。灰色の湾曲した棒で、表面には炎のような赤黒い模様が描かれている。

 ヌエには四つの型があり、第一の型“猿の顎”は相手を打ち砕く。第二の型“蛇の道”は相手を貫く。第三の型“虎の爪”はロズの切り札で、飛躍的に戦闘力が上がるが暴走のリスクがある。

 第四の型はロズ自身も知らず、マグテスには『君が君を取り戻す時、第四の型は自然と解放される』と言われている。第四の型の正体を知るのもロズの目的の一つ。


 第三章でシゾーの呪剣“グリジャグル”の攻撃を受けて意識を失った。しかしスクレたちが持ち帰った聖水のおかげで復活する。



・スクレ=ヴェリッタ

 白本の少女。西の村にある小さな家でひっそりと暮らしている。

 他の白本と違い、旅に出ることを極端に恐れている。しかし、大事にしている指輪をロズに奪われたことをきっかけに、彼との旅を始めることとなった。

 白本は銀色の髪が特徴だが、彼女の髪は上半分が黒く変色している。


 ロズには「自分はビブリアを滅ぼす存在」と明かしているが、彼の「お前を守る」「絶対に裏切らない」という言葉に動かされ、わずかながら心を許している。

 ロズが自分を見失うほどの切り札“虎の爪”を使用して彼女を守ったことで、信頼関係を築き始めた。


 第四章では命がけで聖水を持ち帰り、ロズの復活に大きく貢献した。



・マグテス

 白本の老人で、ロズの師匠。

 ビブリアで随一の刺青師として名をはせていた。過去に左腕を失い一線を退いたが、それでも時折客が訪れる。仕事をする一方で、ロズの師匠として装者のイロハや戦い方を仕込んでいる。

 誰に対しても優しく物腰が柔らかい。弟子のロズをいつも気にかけており、溺愛している。



・ネイサ

 ビブリアの姫であり、生みの親。しかし堅苦しいことは苦手で、いつもはラフな姿で本を読んでいる。普段は宙に浮かぶ居城にて、数人ばかりの使用人たちと暮らしている。

脳内に膨大なデータが記憶されており、それを“空中図書館”という形で保管している。


 シックザールとアンサラーとの戦いで、人間になるためにビブリアを作ったことが明かされた。反感を抱く者も現れたが、表面的には平和が続いている。

 自分の居城の中に図書室を作り、これまでに作られた本の一部を一般開放している。




【“祝福の国”の登場人物】

・ネグロ

“生きる伝説”と称される凄腕の装者。しかし昔の戦いで片足を失い、今は義足を着けている。

 一線を退いたが、スクレの懇願を受けて一時的に力を貸す。


・オジー

 ビブリアの義肢装具士で、ネグロの義足のメンテナンスも担っている。意気消沈するスクレの力になってくれた。


・ヘルティク夫妻

 ヴルムたちが暮らす西の村の中でも、さらに辺鄙な場所に住んでいるシロアリのヴルム。夫は特定の世界に飛べるスピンを、妻は高い医療技術を持っている。

 しかし今ではほぼ休業状態で、本当に困っている人物の依頼しか聞かない。



・マハド

 祝福の国こと宗教国家“マーウィア国”の元住民で、マーウィア教の信者。大規模な水害に襲われたマーウィア国を逃れ、妻や仲間たちの遺品を探しに来ていた。その途中でスクレたちと協力し、聖水の回収に力を貸した。


悪魔ディーモン

 水害と共にマーウィアに侵入した大蛇のような生き物。名付けたのはマハド。

 聖水を求めるものの保管庫に入ることができず、ネグロたちが開けるのを虎視眈々と狙っていた。その目論見は上手くいったが、ネグロの力とスクレの勇気の前に敗北した。




【用語】

白本はくほん

 立派な本になることを目指す、本の卵たち。水や火、刃物等に弱く、身体能力も低い。乱暴にすると腕がすっぽ抜けたりするが、血などは流れず、痛みも小さい。

 基本的に装者とは主人と従者の関係にある。世界間の移動も白本の側に主導権がある。


スピン

 白本が装着している、髪の毛のような物。常に毛先が白く燃え続けており、それが燃え尽きるまでは旅が可能。基本的に世界の移動後の七日間で燃え尽きるが、スクレのみ例外で四日ほどと短い。

 切断されても、その面から新たに燃え始める。しかし短くなった分は滞在時間が短くなる。

 基本的に髪の毛などに結び付けるが、取り外して体から離れた状態でも使用可能。栞の主導権は白本の側にあるため、装者だけが栞で世界間の移動を行った場合、記憶障害などの異常が現れることがある。


装者そうじゃ

 白本を守る存在。白本と異なり、卓越した身体能力と刺青の能力を持つ。

 また、白本を修復する力も持ち、手の中から生み出した光る糸で傷を縫い合わせる。

 体中にシンボリックな刺青が彫られており、そこに物を収納することができる。


本の虫(ヴルム)

 本に成ることを止め、そのままの姿でいることを望んだ白本の成れの果て。ビブリアの西側にある寂れた村で暮らしている。

 白本としての目標を放棄しているため迫害されることもあるが、蓄えた知識や経験は豊富で頼りにされることもある。


 シックザールとアンサラーの戦いにおいて活躍し、現在は東の街との交流も盛んになりつつある。


・ビブリア

 白本や装者たちの暮らす小さな国。この国一つでその世界が完結しており、他の国は一切存在しない。

 広大な空にポカンと浮かんだ大地と、ネイサの居城がある土地、その二つをつなぐ石橋があるだけ。太陽、月や星々もあるが、天体があるわけではなくネイサが作り出した映像のようなもの。水に弱い白本を守るため雨は降らないが、水が枯れることは無い構造になっている。

 東西南北の四つの区画に分かれており、南側にはビブリアを作った姫であるネイサが暮らしている。


はこ

 白本たちの家。まず函が生まれ、その函の中で白本は生まれる。ただし、かつてシックザールのように、ビブリアの守護者として生まれた者など例外もいる。

 装者はネイサの居城で生まれ、まずは自分の家を作るのが最初の仕事になる。


混沌カオスの炎

 ビブリアの北側に存在する巨大な白い炎。栞を燃やしているのは、この炎の一部。

白本や装者の死体を薪に燃えており、彼らの知識や経験が混ざり合うことで別の世界への扉を開いている。

 白本にとっての最初の試練が、この炎に身を投じることができるかである。通常の炎と違って熱くはないが、本能的に炎を恐れる白本には簡単には受け入れられない。

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