【第一章まとめ】
【主要な登場人物】
・ロズ
新人の装者の青年。ピンク色のショートヘアに、目つきの悪さが特徴。
通常の装者よりも屈強な肉体と“装者の糸”を持つが、その代わりに非常に不器用。マグテスに引き取られ、彼を師匠として、修業しながら一緒に暮らしている。そのためマグテスに恩義を感じており、その恩に報いることを最大の目的としている。
武器は自分の身の丈ほどある棒“ヌエ”で、左腕の刺青に収納している。灰色の湾曲した棒で、表面には炎のような赤黒い模様が描かれている。
ヌエには四つの型があり、第一の型“猿の顎”は相手を打ち砕く。第二の型“蛇の道”は相手を貫く。第三の型はロズの切り札で、彼自身も積極的には使わない。
第四の型はロズ自身も知らず、マグテスには『君が君を取り戻す時、第四の型は自然と解放される』と言われている。第四の型の正体を知るのもロズの目的の一つ。
・鵺
日和国でロズに取り憑いた守護霊。猿の顔、虎の体、蛇の尾を持ち、ヌエとの共通点が多い妖怪が元になっている。
力が強く、自由に空を飛ぶこともできる。
・スクレ=ヴェリッタ
白本の少女。西の村にある小さな家でひっそりと暮らしている。
他の白本と違い、旅に出ることを極端に恐れている。しかし、大事にしている指輪をロズに奪われたことをきっかけに、彼との旅を始めることとなった。
白本は銀色の髪が特徴だが、彼女の髪は上半分が黒く変色している。
ロズには「自分はビブリアを滅ぼす存在」と明かしているが、彼の「お前を守る」「絶対に裏切らない」という言葉に動かされ、わずかながら心を許している。
・光の巨人
日和国でスクレに取り憑いた守護霊。女性の形をしており、身長は約五十メートル。体は半透明で、宙に浮かぶこともできる。
触れたものをバラバラに破壊する“光の筋”を発生させる。日和国では暴走して涙を流し、そこから発生した光の筋で国を崩壊の危機に陥れた。
・マグテス
白本の老人で、ロズの師匠。
ビブリアで随一の刺青師として名をはせていた。過去に左腕を失い一線を退いたが、それでも時折客が訪れる。仕事をする一方で、ロズの師匠として装者のイロハや戦い方を仕込んでいる。
誰に対しても優しく物腰が柔らかい。弟子のロズをいつも気にかけており、溺愛している。
・ネイサ
ビブリアの姫であり、生みの親。しかし堅苦しいことは苦手で、いつもはラフな姿で本を読んでいる。普段は宙に浮かぶ居城にて、数人ばかりの使用人たちと暮らしている。
脳内に膨大なデータが記憶されており、それを“空中図書館”という形で保管している。
シックザールとアンサラーとの戦いで、人間になるためにビブリアを作ったことが明かされた。反感を抱く者も現れたが、表面的には平和が続いている。
自分の居城の中に図書室を作り、これまでに作られた本の一部を一般開放している。
【日和国の登場人物】
・五十嵐正蔵
日和国に住む還暦過ぎの男性。元警察官。偶然出会ったロズとスクレを自分のアパートの部屋に泊める。
街の治安を守るため、そして息子の正太郎を探すため、ほぼ毎晩夜回りをしている。
・ゴリさん
五十嵐の守護霊。ゴリラの姿をしており、黄金色の体毛に覆われている。その上に煌びやかな文様の羽織を着て、巨大な棒を武器にする。
守護霊の中でも特に強い力を持ち、野良の守護霊が暴れだした時などは五十嵐と共に力を振るう。
巨体に似合わず繊細な性格。
・五十嵐正太郎
正蔵の息子。正太郎という古臭い名前にコンプレックスを抱いており、親子の仲は非常に悪い。
野良の守護霊を操るという能力を持ち、何体もの守護霊を従えている。その能力を使って裏社会の権力者になろうと考えているが、正蔵には「ガキのような夢」と揶揄されている。
・守護霊
日和国の人間だけに取り憑く霊。守護霊と主とは共通する点が多く、自分の守護霊は以心伝心で操ることができる。
日和国が鎖国を解いたことで外国人の流入が増え、新たな守護霊が続々生まれている。そのうちの一部は上手く主に取り憑くことができず“野良”として暴れ回ることが近年問題視されている。
【用語】
・白本
立派な本になることを目指す、本の卵たち。水や火、刃物等に弱く、身体能力も低い。乱暴にすると腕がすっぽ抜けたりするが、血などは流れず、痛みも小さい。
基本的に、装者とは主人と従者の関係にある。世界間の移動も白本の側に主導権がある。
・栞
白本が装着している、髪の毛のような物。常に毛先が白く燃え続けており、それが燃え尽きるまでは旅が可能。基本的に、世界の移動後の七日間で燃え尽きるが、スクレのみ例外で四日ほどと短い。
切断されても、その面から新たに燃え始める。しかし短くなった分は滞在時間が短くなる。
基本的に髪の毛などに結び付けるが、取り外して体から離れた状態でも使用可能。栞の主導権は白本の側にあるため、装者だけが栞で世界間の移動を行った場合、記憶障害などの異常が現れることがある。
・装者
白本を守る存在。白本と異なり、卓越した身体能力と刺青の能力を持つ。
また、白本を修復する力も持ち、手の中から生み出した光る糸で傷を縫い合わせる。
体中にシンボリックな刺青が彫られており、そこに物を収納することができる。
・本の虫
本に成ることを止め、そのままの姿でいることを望んだ白本の成れの果て。ビブリアの西側にある寂れた村で暮らしている。
白本としての目標を放棄しているため迫害されることもあるが、蓄えた知識や経験は豊富で頼りにされることもある。
シックザールとアンサラーの戦いにおいて活躍し、現在は東の街との交流も盛んになりつつある。
・ビブリア
白本や装者たちの暮らす小さな国。この国一つでその世界が完結しており、他の国は一切存在しない。
広大な空にポカンと浮かんだ大地と、ネイサの居城がある土地、その二つをつなぐ石橋があるだけ。太陽、月や星々もあるが、天体があるわけではなくネイサが作り出した映像のようなもの。水に弱い白本を守るため雨は降らないが、水が枯れることは無い構造になっている。
東西南北の四つの区画に分かれており、南側にはビブリアを作った姫であるネイサが暮らしている。
・函
白本たちの家。まず函が生まれ、その函の中で白本は生まれる。ただし、かつてシックザールのように、ビブリアの守護者として生まれた者など例外もいる。
装者はネイサの居城で生まれ、まずは自分の家を作るのが最初の仕事になる。
・混沌の炎
ビブリアの北側に存在する巨大な白い炎。栞を燃やしているのは、この炎の一部。
白本や装者の死体を薪に燃えており、彼らの知識や経験が混ざり合うことで別の世界への扉を開いている。
白本にとっての最初の試練が、この炎に身を投じることができるかである。通常の炎と違って熱くはないが、本能的に炎を恐れる白本には簡単には受け入れられない。




