四話
あれからどのくらい経っただろうか。何分何秒の話じゃない、何日の話だ。
私はあの日から彼女と目を合わすことが、どこか恥ずかしくて、そんな自分も嫌で。皆藤さんは何も悪いことをしていないのに、私が勝手に盗み聞きしてしまっただけなのに。
まるで私の考えを見透かしているかのように、彼女も私との距離を置く。
時々考えることがある。皆藤さんの彼氏が言っていたこと。彼女の秘密が何なのか、それが知りたいと思ってしまうのはなぜなのか。クラスメイトの内情など、親しくならなければ知ることなど到底ないだろう。いつも話している、お弁当を一緒に食べている友達の秘密を知りたいかと言われれば、私は左程関心を抱かない。では、皆藤さんの秘密を知りたいのはなぜなんだろうか。
そんな私の問いなど、意味を持たない。私自身が問いの答えを知っているのだから。
私は、男の子よりも女の子が好きだということ。それは誰も知らない私の秘密。
そして彼氏を作ろうとするのは、その事実を隠そうとして、私自身の気持ちを騙そうとした結果。
鹿沼くんを好きだという気持ちに嘘はないけれど、一番好きになれる自信は無い。
気付いていなかった、嘘、気付かないフリをしていただけ。
それが、自分の気持ちを騙す悲しい嘘だってことに。
皆藤さんの秘密が知りたいのは、騙してきた私の気持ちを彼女なら聞いてくれるのではないか。叶えてくれるのではないかという僅かな希望。そう感じたのは彼女がハグをしてくれたあの日だ。
彼女の鼓動が速くなるのを私の胸が感じ取っていたから。整然とした態度の割に、顔を赤らめた彼女の本性を知りたかったのに。邪魔な奴が現れた。
皆藤さんの秘密が私の予想と違っていても。脅して無理やり彼女にする、あの男が気に入らない。
だから私は、あの男をこの学校から消すことにした。
「皆藤さん。」
「あれ、どうしたの。ミサ。」
久しぶりに話しかけると、彼女は少しやつれている様に見えた。
「また来週ね。」
私は嘘をついた。もう二度と彼女に会うことは無いだろう。
それでいいと私は思う。これでいつも笑顔だった彼女が戻って来るなら。
落ち込んでいた私を励ましてくれる、心優しい彼女の役に立てるなら。
最後の嘘。
「私、皆藤さんのこと嫌いだったみたい。」
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