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一話

 嘘も方便、そんな言葉を誰もが聞いたことがあると思う。

 生まれてから一度も嘘をついたことが無いという人がいたら、その人は嘘つきだ。

 だって人は嘘をつく生き物だから。

 嘘が悪いこととは私は思わない。だって優しい嘘だってあるのだから。



「ごめん、俺好きな人がいるんだ。だから君とは付き合えない。」


 私は振られてしまった。彼と同じクラスになってからのこの一年は本当に楽しい日々が続いていた。彼を思うだけで胸が苦しくなる時もあったけれど、彼が優しく話しかけてくれる度に胸が弾んだ。そう、私は彼に片想いをしていて、高校二年になって違うクラスになってしまったことをきっかけに私は勇気を振り絞って彼に告白をした。このままだと彼と疎遠になってしまうことは明白だったから。

 ダメで元々、私は彼に好かれるところなんてなにも無い、クラスメイトの一人に過ぎなかった。

 でもイチかバチか、私は自分の想いを伝えずにはいられなかった。そのはずだったのに、彼が申し訳なさそうにする顔をみて、後悔している。私が告白しなければ彼に余計な気遣いをさせることも無かったのではないかと。


「気にしないで、私の一方的な想いだったから。それに、もう吹っ切れたから!もし廊下であったら、気軽に話しかけていい?」

「それは勿論構わないよ、俺たちクラスメイトだったんだから。」


 私は嘘をついた。その嘘で彼は笑顔を見せてくれた、それだけで十分。振られて傷つくのは私だけ、優しい彼が私なんかを気に留める必要なんてないのだから。


 昼休み、私は新しいクラスで仲良くなった友達と一緒にご飯を食べていると、廊下から聞き覚えのある声が聞こえてくる。今朝告白した相手、鹿沼くんの友達の声だった。その友達とも三月までは一緒のクラスだったから顔を見なくても分かってしまった。

 鹿沼くんの友達の言葉を聞いて、私は気分が悪くなってしまい、友達に一声かけて保健室に向かった。廊下に出ると、彼らの言葉の続きが嫌でも聞こえてきてしまう。


「期待させるようなことするから、告白なんて面倒なもんされるんだよ。てか、お前彼女いるだろ。」

「彼女いることが知れ渡ったら、もう告白されないだろ?」


 何も聞こえない。そんな言葉は知らない。彼のそんな素顔なんて知らない。私にあるのは、彼の優しい笑顔だけ。一度だけ振り返ると笑う鹿沼くんの姿が見えた。

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