サイテー男、出会う
昔からモテた。
家柄、容姿、スタイル、頭脳…全て揃っていたから。
それ故に、自分を放っておかない周囲。
(俺と言う彼氏を見せびらかしたいだけだろう…?)
(人気者の友達ってポジションが欲しいだけだろう…?)
常に心の中では疑うことしかしていなかった。冷めた性格に育ったことは、自分でも分かっている。
親友、愛しい恋人…
本当にそう思える人が、自分には存在しない。
でも、会社でもそれ以外でも俺が冷たいと思っている人はいないだろう。
自分が快適に過ごすための人付き合いはしてきたから。
この性格を知るのも兄弟くらいではないかと思う。
有名大学を主席で卒業し、父の会社に身分を隠して入社をして、早3年。
人生を見下していた俺に、母親が見合い話を持ってきた。
「本当、賢くて綺麗なお嬢さんなのよ~」
「…へ~」
まだ25歳であっても、社長令息。
将来のために嫁が必要だと言うことも理解できるが、
赤の他人との共同生活が苦痛すぎて、
あまり乗り気になれない。
心の中でうんざりするも、目の前の母親は会話を続けた。
「通っている料理教室の友達の娘さんなんだけど、もうすぐ28歳になられるのに恋人が居ないことをボヤいててね。
写真を見せて頂いたら、すごく美人な方だし大学も有名な所を卒業されてて、今は有名企業で社長秘書をされてるんですって!
あなた、就職してから彼女いないみたいだし、そろそろ身を固めるつもりでお見合いしてみなさい」
(美人なのに、その年で彼氏いないって、性格がキツくて恋人が出来ないだけなんじゃないのか…?しかも年上?すぐ結婚を迫ってきそうで微妙なんだけど…)
だか、この母親の事だ。会わずに断ることなど、出来るとは思えない。
しかし、1度会ってから性格が合わないと言えば、無理に話を進めることはないだろう…
この見合いを無くすことより、会ってから断る方が楽だと結論付け、俺は乗り気になれない見合いに行くことを了承した。
そして、見合い当日。
良い意味で俺は驚いていた。
まず、見た目が俺の好みドストライクであること。そして、
「すみません。ウチの母があなたのお母様にお見合いをお願いしてしまったせいで…
当然、お断りして頂いて結構です。」
俺に見惚れる訳でも、媚を売る訳でもなく、暗に俺に恥を欠かせない為に来たんだと言わんばかりのセリフ。
つまり、俺とは今日限りと断言する…
全く俺への興味がない彼女に。