公爵令嬢と雨
初投稿です。設定が甘いです。お砂糖より甘いです。
0812 △ 誤字脱字見直しました。
0813 △ 再度誤字脱字見直し、少し文を足しました。
1003 △ 誤字脱字を見直しました。
1212 △ 男爵令嬢と一緒にいなきゃいけない理由をもう少し必然性のある理由にしました。
公爵令嬢と雨
小さな頃から公爵令嬢レイニー・フェルナンドは不思議な力を持っていた。ある時は転んで泣いたら突然空が雲に覆われ雨が降り、またある時は遊びに来ていた婚約者クルト・バークハーツ様に酷いことを言われ大泣きしたら忽ち何処からともなく黒い雲が現れ雷が鳴り大雨が降った。それはもう、すごい雨だった。
そして仲良しのシェフ・ターチが作った砂糖菓子で機嫌が治ると雨は止み雲から太陽を覗かせ、ゴロゴロと鳴る空に驚愕して更に泣くわたしにクルト様は罪悪感に苛まれわたしをぎゅっと抱きしめたら、瞬く間に雷と黒い雲は何処かへ行き太陽がサンサンと照らし出した。
この時から公爵位以上の貴族には、公爵令嬢の機嫌を損ねると雨が降るというジンクスが伝えられた。
幼き日の不思議な話。
わたしは学園へ通えるような年になり、今はもう滅多なことでは泣かない。が、最近とても不服である。
何故なら最近クルト様の隣をべたべたと付きまとっている人物がいる。男爵令嬢サラ・ブラウスだ。公爵令嬢の婚約者だと知っても関わらずべたべたべたべたべたと婚約者様の腕に縋り付いている。
これは未婚男女において由々しき問題だ。クルト様も何か言ってあげればいいのにほどきもせず集中して書類を読んでいる。
彼は成績優秀、王族の証と言われている青い髪で切れ長な真っ黒な目が特徴。
その為か男爵令嬢のように彼を狙う令嬢が多い。でも公爵令嬢との婚約と発表されているので、あくまでも憧れるだけ。ギラギラと猛獣のような目で彼を狙うのはあの男爵令嬢しかいない。
「はぁ…」
中庭でお花を見ながら読書をしようと思ったら偶然窓から彼らの姿が見えてしまいこんな気分になってしまった。ため息をついたからかさっきまで暖かった日差しが雲に隠れてしまった。いけないいけない。
気分を変えようと、最近お気に入りの本を読む。素敵な恋愛物語だ。読んでいるとさっきまでどんよりした気持ちがスーっと無くなっていき太陽が雲から顔を出した。
物語が中盤に差し掛かった頃、わたしと読んでいた本にひとつの影が掛かった。わたしの気持ちと関係なく雨が降りそうなのかしら?と不思議に思い顔を上げたら大公爵トウマ・レフティ様が立っていた。
トウマ様はクルト様の親しいご友人で将来宰相になるお方。銀色の髪の色に吸い込まれそうな薄紫の瞳。少しキツめに上がった目はより一層女性に人気だ。物腰が柔らかく基本聞き手にまわり、自分のことを一切話さなくても相手の懐に入るのがうまく一部ではミステリアスで素敵と大人気らしい。
わたしは何を考えているのかわからないので少し苦手だ。でもこの性格こそが将来クルト様の手助けになるのだと思う。
本を閉じ立ち上がってご挨拶をする。
「ごきげんよう。レフティ様。」
「やあこんにちは。フェルナンド嬢。いいよ座ってて。」
人懐こい笑顔でこちらを見ながら華麗にエスコートをし、わたしを椅子に座らせる。………とても気まずい。
「ええと、どうなされました?レフティ様。」
いたたまれなくなったわたしはぎこちない笑顔で彼に問いかけた。
「ううん。隣いいかな?」
「はい、どうぞ。」
いいえとは言いづらい雰囲気に圧倒され、わたしの隣の椅子に優雅に座る。たった座る動作でも優雅でしなやかで素敵だなぁと心の中で思う。
「クルトさまぁ!」
猫なで声が空いてる窓から聞こえてくる。それに対しての反応は聞こえないが、クルト様は男爵令嬢と一緒にいるのが伺える。若干イラつきながらも頭の中で冷静になれと暗示をかける。このイライラで大雨が降って綺麗な花壇が台無しになったら学園の庭師さんに失礼だ。
深呼吸をしているとトウマ様がこちらを見ていることに気がついた。
「あれだけ毎日べたついてたら気になっちゃうよねー。」
ちらっちらと効果音が付くような感じで、声が聴こえてきた窓とわたしを見比べる。
「いえ、そんな事はございませんわ。」
相手は人の感情を汲み取るのがうまい。動揺を悟られないように目を逸らして見るが、何故だか目が泳いでしまう。そんな様子をみたトウマ様は面白そうに目を細めて笑った。
「こーんなに可愛い婚約者がいるのに放っておくなんてクルトは何やってんだろ。俺なら放っておかないのにね。」
何を考えているのか分からない透き通った目でわたしの目を見つめた。…悔しいけどとてもかっこいい。
わたしは母譲りの腰まで長い金髪に天然癖毛だ。雨になると湿気で爆発したみたいになるけれど、母とお揃いだから嬉しい。目は亡き祖父の碧色で、水辺に映る自分を見ると祖父を思い出させる。
「…えっと、ありがとうございます…ですが、他の令嬢方が勘違いしてしまいますのでその発言は撤回した方が……」
「レティ!」
遠くの方からクルト様が近付いてくるのが分かった。その隣にもべたべたとくっついてくる者も含め。
「クルト様…?」
「王子様のお出ましだね。」
彼の瞳が楽しそうに揺らぎながら彼の到着を待った。
「レティとトウマ? 珍しい組み合わせじゃないか。何してるんだ?」
「えーと、」
「公爵令嬢と仲良くお話してたんだよ。ね。」
ね、とウィンクしてわたしに同意を求めた。仲良く話してたなんて冗談じゃない。ぎょっと目を見開いてると、クルト様の隣でしかめっ面してる男爵令嬢がわたしを睨んでいた。
「あらレイニー様。御機嫌よう。そんなブサイクな顔してどうしたんですの?」
「…サラ様。御機嫌よう。」
男爵令嬢はしかめっ面でも可愛らしい顔をしている。淡い水色の肩までつく髪の毛にぱっちりとした目。物言いはとてもキツく我儘だが、姿だけなら好き、と言う殿方も少なくない。
「サラはいまクルト様と中庭でお散歩中なの。邪魔しないでもらえるかしら?」
得意げにフフンと鼻を鳴らしてわたしに言う。でも意中の彼はそのお散歩とやらを続けることなく中庭の近くにあった椅子に座る。どうやらわたしとトウマ様の仲間に入りたいようだ。
「クルトさまぁ!はやくあっち行きましょお!?」
駄々をこねるようにクルト様の腕を引っ張るが、クルト様はビクともしないでトウマ様と何やら何かを話している。
「もお!……あなたのせいよ!レイニー・フェルナンド!今すぐここで婚約破棄してもらうわ!あなたが居なかったらクルト様はサラと仲良く出来るのに、あなたがいるからよ!今すぐにこの学園から出ていくか、婚約破棄しなさい!」
あまりにもめちゃくちゃなことを言う男爵令嬢。頭痛がしてきた。
「おい、」
「あのねえ!知ってるう?あなたが婚約破棄しなくても卒業パーティには、あなた婚約破棄されちゃうのよ!それでね!修道院に送られちゃうの!サラをいじめた罪で!きゃははは!」
クルト様が言葉を遮れ、サラは言い続ける。婚約破棄?修道院?サラをいじめた罪?サラを苛めたという事実はない。でも婚約破棄は、ないとは言いきれない。最近ずっとこの2人はべったりだ。べったべただ。
クルト様は呆れながらこちらを見ているし、トウマ様は読めない表情をしてるし、サラは勝ち誇った顔で見つめている。誰も止めようとはしない。
「クルト様はねえ!サラのこと好きだって言ってくれたのよお!サラもね、クルト様のことだぁいすき!だからね?あなたが邪魔なの。この世界はサラが幸せになる運命なの。ゲームって知ってるぅ?って言ってもわかんないかぁ。そうよね、だってサラの都合がいい世界だもん。」
言い忘れていたが、未婚の男女において名前呼びは親しい関係でないと呼んではいけない。でもサラは嬉々としてクルト様の名前を呼んでいる。つまり親しい仲、ということになる。
彼女が言っていた単語、げぇむ…げーむ…ゲーム?何処かで聞いたような、そんな印象を受けたが、わたしには今そんな余裕が無い。
「黙っちゃってどおしたの?サラはこの国で1番必要なお姫様なの。つまり王子様と婚約するのが当然ってことよ!分かる?ただの何も出来ない公爵令嬢風情がクルト様と婚約なんて図々しいのよ!!!!」
「おい、やめろ。そのへんにしとけ。」
叫ぶようにサラはわたしに向かって吠えた。クルト様が仲裁に入ってきたけど、良くない感情がわたしの心を渦巻いていく。あ、だめだ、だめだ………
泣きそう。
突然どす黒い雲が現れ太陽を覆った。
「レティ!!」
「きゃああああ!」
「クルト!!フェルナンド嬢!!」
クルト様が叫んだ時にはもう遅かった。轟轟と空が鳴り響いた途端に物凄い勢いで雨が降った。青い稲妻が踊るように鳴り響いた。それはもう前が見えなくなる程の雨で、誰が何処にいるのかも分からないほど降った。
ああ、庭師さんごめんなさい。お花を台無しにしてしまって、ごめんなさい。
「クルト様ぁ!!!!」
「ブラウス嬢、危険だっ」
「いやあ!離して!………なんで、なんで!あの女がわたしの能力をっ…!」
遠くでサラとトウマ様がさけんでいる気がするが、わたしはいまそれどころじゃない。頭が痛い、吐きけがする。
「レティ!しっかりしろ!こっちだ!」
クルト様はきっと雨で前が見えないだろう。それでもわたしだと認識してくれて優しくそう言ってぎゅっと抱きしめられながらトウマ様とサラがいる所とは別の雨が入ってこない建物についた。
「レティ、落ち着いて。ね?」
深呼吸しようと言われて言われるがままクルト様と一緒にふかいふかい深呼吸をした。外から聞こえる雨の威力が少し弱まった気がした。
「くる、とさま…」
「ごめんね、俺の可愛いレティ。あの女が言ってることは全部嘘なんだよ。信じてくれるかい?」
わたしはふるふると首を振った。クルト様はこくんと頷いてくれると思っていたのだろう、目を見開いて今までに見たことがないほど悲しい顔をした。
「ごめんね、ごめんよ…こんなこと言ってもレティが傷ついた心は癒えないと思うけれど、こんな弱い俺を許してくれ……これで、レティを泣かせてしまったのは2回目だね。本当に愚か者だ、俺は。」
わたしは朦朧とする意識の中わたしはひとつの記憶を思い出した。彼女が言っていたゲーム。乙女ゲーム''Rainbow road''それは美男子達と恋をしていく物語。主人公のデフォルト名がサラ・ブラウス。と言うことはこの世界はあの''Rainbow road''の世界になる。
どんな物語かと言うと、この国は雨をとても大切にしていた。サラ・ブラウスは国宝とも呼ばれる雨の命を生まれとともに手にしていて、彼女がオギャーと生まれた日はそれはもう雨が降った。国は何故だか分からないが大雨が降りとても喜んだ。その後時には泣いたりしたが、泣かせたくないという両親の思いで幼少期は笑うことが多く、彼女が泣くと雨が降るという関連をつける者はいなかった。
彼女が学園へ通える年になり、ひとつ事件が起きた。
悪役令嬢レイニー・フェルナンド。彼女の婚約者でもあり、恋愛対象者クルト・バークハーツがサラに対してとても友好的だったのだ。それを見たレイニーがサラに嫉妬していじめ倒す。それを更に見たクルトがサラを守るという名目で一緒にいることになった。度々受けるいじめにサラは心が折れて泣いた。泣くと雨が降り、それを見たクルトが雨の命だ、と現国王に報告する。そして一緒にいるうちに2人は愛を育んでめでたくゴールイン。
レイニーはいじめた罰として婚約破棄、没落、修道院と言う最悪コンボで結末を終える。
いやいや。冗談じゃない。でもわたしは今まで彼女をいじめた事がないし、いじめたいなどと思う気持ちもなかった。そして今のクルト様の対応。こんなの、ゲームの中にあったっけ…?
「最初はあの女がレティに虐められたと泣いてきたんだ。レティは俺の婚約者で、将来王妃となる。信じる気はなかったんだ。でも毎日レティにいじめられた、階段から落ちたなどと言うから気になって調べてみたんだ。…結論、そんな事実一切なかった。あの女にそう事実を伝えたらまた泣き出して、俺に守って欲しいと言った。そんなにレティがいじめてくるのなら俺自身の目で見てみようって。そう思ってあの女が側に来るのを許したんだ。本来ならレティがいる場所なのに。」
クルト様はそう言うととても苦い顔になった。
…ちょっと、一気に色々考え、話を聞いてたせいで外から聞こえる雨はさっきよりも静かになった。頭は冷静になってきた。
「数日間あの女をそばに置いてみた。レティが来る気配がない。むしろ俺がそばにいないからって調子に乗った男がレティと談笑してる姿が見えた。…心底あの女を恨んだね。名前を呼んでいい等と許可した覚えはないし毎日べたべたされて良い気持ちはしなかった。一刻も早くレティに会いたかった。でもあの女は言ったんだ。あなたがあの女に近付くなら、あたしあの子に何しちゃうか分からないわ。だって日頃虐められてるんですもの、あなたが離れていったらまた虐められてしまうんですもの。復讐したっておかしくはないわ、って。」
わたしは彼女にそこまで嫌われていて、そこまでクルト様が欲しかったのかと思った。クルト様は震えながら次の言葉を紡いだ。
「レティが傷付けられるのは嫌だ、いなくなってしまうのはもっと嫌だ!泣かせたくないんだ…もう泣かせてしまったけど…本当にごめん…。でも俺がレティと離れている間、色々手回ししといたから、もう安心して。大丈夫。俺がレティを守るよ。」
か細い声から力強い声に変わり、クルト様はわたしをぎゅっと抱きしめる。心が暖かくなる。クルト様はこんなにもわたしのこと思って、苦悩して、わたしが傷付けられるのを恐れた。わたしがヤキモチをしてる間にいろんなことを考えてくれていた。こんなにも愛されていたんだ。
気がつけば雨は止んでいた。クルト様はわたしの頭を撫でながら、大丈夫と繰り返していた。
一体何が大丈夫なのだろうか。
ダダダダダッとはしたない音が響く。
「クルトさま…?どおして…?どおして、サラの思い通りにならないのお…?」
わたしとクルト様を見た瞬間、彼女のまんまるい目からぼたぼたと涙が零れ落ちる。
「なんでよお、この世界は、サラの、ものなのお!サラが、クルト様と幸せになるのよお…なんで、あんたがっ、サラの雨の命を持ってるのよお…?」
「サラ様」
彼女に身体を向けてて彼女の名前を呼んだ。さっきから声を出してなかったから枯れた声になってしまった。未だに彼女のまんまるい目からぼたぼた涙を零している姿はとても愛らしいけれど、わたしを見る目はとても鋭かった。
「ここは、現実世界なのですよ。空想世界ではありません。」
「ちがうもん!サラの世界だもん!!!!」
「それを言うなら、わたくしの世界でもありますわ。クルト様の世界でもあります。貴方だけが特別なのではないですよ。」
「なっ…なによお!この世界はサラのものなの!サラ・ブラウンのものなのよ!ありえない、クルト様が貴方のものになるとか、ありえないのっ!!!」
「おい、いい加減にしろ」
サラが癇癪を起こしてると、凛としたクルト様の声が後ろから聞こえた。そして振り返って表情を伺うと、とても良い笑顔でサラを見据えてた。こんな笑顔見たことないし、こんな声も聴いたことがない。
「トウマ」
クルト様はここにいない人物の名を挙げた。が、すぐにトウマ様はやってきた。クルト様に呼ばれるまですぐ近くの通路で待機していたみたいだった。
通り通路なのか、なんだどうしたと野次馬が寄ってたかってきた。
「丁度いい。トウマ、全部出せ。」
「御意。」
そう言うとトウマ様は何処からともなく書類をだして順に読み上げて言った。……主に男爵家の悪事や、男爵令嬢の悪事などを。
男爵令嬢は心当たりがあるのかサァっと顔色を悪くさせ、野次馬達をどきなさい!と蹴り散らしながら逃げていった。が、そうは行かず野次馬に捕まえられ、何事だと騒ぎを聞きつけた先生方に連れて行かれた。
中庭で見かけた、クルト様が集中して見ていた書類はこの書類だったのかもしれない。
「さて、みんなもいる事だし少し早いけど。」
そう言ってクルト様はわたしの手を取って膝を折った。
「公爵令嬢レイニー・フェルナンド、第一王子クルト・バークハーツは生涯貴女を愛します。」
手の甲をちゅと音を立てキスをした。野次馬達はわぁっと盛り上がり拍手をした。
何が何だか分からずわたしは涙をぼろぼろ零してしまった。あ、しまった、泣いたら雨が…と思い空を見上げてみると雨は降っていない。
代わりにわたしたちを祝福するように虹が出ている。
「まるでクルト様と公爵嬢のプロポーズを祝ってるみたい。」
野次馬の誰かがそういったけれど、盛大な拍手と祝の声でかき消された。でも虹はふたりの幸せを祝福するようにいつまでもずっと7色を魅せていた。
ずっと幸せでいられますように。
ご覧いだきありがとうございました。
アドバイス等、誤字脱字など評価お願いします。
中庭のお花は何かの力によって守られているので大雨降っても綺麗なままでした。蛇足でした。