第八十五話 待たされたものは怒ってます
長らくお待たせして申し訳ありませんでしたm(__)m
連載再開です。
「ふう、やっと休める」
僕は溜息を吐きながら城の長い廊下を歩いている。
前には先導するようにメイドさんが歩いていて、僕の隣をリーナとジークが争っている。
ダンジョン探索とあんな重い話を聞かされた後なのにホント元気だね。
僕はもう一度深い溜め息を吐いた。
ちなみにクリスはこの場にいない。
多分、自室に戻ったのだろう。
いつも能天気で明るいクリスも流石に暗い表情でトボトボと去っていった。
別れ際に笑顔を浮かべようとして失敗していた姿が痛々しかった。
いつもならキランと輝く歯が曇っていたのは気のせいではないだろう。
という感じでしばし歩いて、城の広さを痛感しているとようやく客間に着いた。
今日は色々あって疲れているだろうからと部屋を用意してくれたのだ。
正直ありがたかった。
宿屋まで歩いて戻る元気はもう残ってなかったのだ。
メイドが立ち止まり、ここが僕の部屋だと告げる。
「じゃあ、僕、寝るからご飯の時間まで起こさないでね」
そう言って部屋に入ろうとすると
「なんでついてくるの? 部屋は一人一人あるって言ってたでしょ」
メイドに確認するように目を向けると彼女は頷いていた。
そして、どうしようもない二人の抗弁が始まる。
「なんか物騒だからな。オレがマルコのことを守らないと。部屋の中とは言わず、布団の中も」
「疲れてるでしょ。わたしが添い寝して癒してあげる」
日頃ならここで思いっきりツッコむところだけど、もうそんな元気は残ってない。
だから、盛大な溜息を吐きつつ。
「ジーク。公爵の城で何かあるわけないじゃない。あと布団の中で守るって頭おかしいんじゃない? リーナも。僕は疲れてるの。一人でゆっくりしたいの」
いつにないマジトーンで返されて、僕の怒りや呆れが通じたのか、二人が動揺している。
僕はその隙を見逃さずに部屋に入った。
「じゃあ、お休み。ふぁあああ」
欠伸交じりにそう言った時だった。
「ぐふぁ」
何かが僕のお腹にぶつかってきた。
ちょうど鳩尾に入ってかなり痛い。
僕は思わず苦鳴を上げてひざを着く。
なにが起きたんだと視線を下げると
「シロ?」
そこにいたのはホワイトタイガーの子供のシロだった。
そして
「いたい、いたいよ。ニー止めてよ」
ファイアーバードのニーが嘴で僕の頭を突いてくる。
二匹はどうやら怒っているようだった。
多分、ずっと放って置かれて拗ねているのだろう。
「ごめん、ごめん。放って置いて。でも、ダンジョンは危険だからね。まだ、小さいお前たちを連れてはいけなかったんだ。だから許してね」
そう言って二匹をよしよしと撫でてあげる。
シロとニーは気持ちよさそうに目を細めていたが、直ぐにこんな事では誤魔化されないぞと唸りだした。
「う~ん。疲れて寝たいんだけどなあ」
眠たくて瞼が閉じそうになるがこのまま二匹を放って置くわけにも行かず、途方に暮れてしまった。
ちなみに二匹は宿屋に預けていたのだが、メイドさんが気を使って城に連れて来てくれたらしい。
公爵は僕達が依頼を引き受けた時点でここに泊めることを決めていたそうだ。
既に宿屋は引き払われていて、今日までの宿代も公爵が払ってくれたそうだ。
流石、お貴族様は違うね。
と言う訳でどうやってなだめようかと思案してると
「とりあえず、母乳を与えてあげたら?」
「それなら、女体化しないとな」
「お前等、まだいたの」
僕は二人を半眼で睨む。
疲れているので言葉遣いも荒くなっていた。
そんな僕の視線に怯みながらもジークは先を続ける。
「大人しく待ってたんだからご褒美を上げてもいいと思うんだ。謝罪の意味を含めるとなると母乳が一番じゃないかなあと愚考しました」
ジークがよくわからないことをのたまいだしたので僕の視線がどんどんと冷たくなる。
それにつれて彼の言葉遣いがおかしくなっていった。
「ジークの言いう通りだと思うわ。その子たちも期待しているみたいだし……ごめん、そんな目で見ないで」
何か言い出したリーナに視線を向けると珍しく彼女はライルの影に隠れた。
いつも汚い者扱いしている彼の背中に隠れるとは余程僕の視線が怖かったのだろうか。
失礼な奴だ。
そして、必然的にライルを睨むことになったのだが……
「おうふ。そんな目でわたしを見てくれるなんて。もっと、もっと」
いつもの病気が発動したのかプルプル震えだしたライルのことは気にしない。
小声で何か言っていたけどよく聞こえないのでとりあえず無視でいいだろう。
聞こえないで正解の様な気がするし。
そんな中、二匹が母乳という言葉に反応したのか期待するような目を向けてくる。
思わず抱きしめたくなる程の可愛さだが、グッと堪える。
これ以上、男としての尊厳を失う訳には行かない。
「上げないよ。さあ、寝よ。僕は疲れてるんだ」
その言葉に
「なああ」
「ピー」
ガクリと項垂れて悲し気な声を上げる、二匹。
そして、涙目でこちらを見上げてきた。
「そんな目で見ても」
「にゃあ」
「ぴー」
「ダメだよ。ダメだったら」
そんなやり取りがしばらく続いたが僕には勝てそうになかった。
「わかったよ。ちょっとだけだからね」
そう言うと元気な鳴き声を上げながら二匹は部屋の中を飛び回ったり、走り回ったりしている。
僕はしょうがないなあと吐息を漏らした。
そこに
「じゃあ、これを使わないとね」
満面の笑みを浮かべながらジークがあの忌まわしい杖を取り出す。
一体どこに持っているのかいつまでたっても不思議だ。
リーナも目を爛々とさせながら僕に期待の眼差しを向けてきた。
その反応に僕は額に青筋を浮かべて
「もういいから、二人はとっとと出てって!」
部屋から二人を押し出す。
「でも、女体化しないと母乳の醍醐味が」
「そうよ。やっぱり大きいおっぱいの方が出が良いと思うし」
「もう! いい加減にして!」
二人を部屋から追い出し、バタンと音が鳴るくらい勢いよくドアを閉める。
ハアハアと荒い息を吐きながら僕はベッドに向かった。
そして
「おいで」
二匹に声を掛けて上の服を脱ぐ。
その後のことは秘密である。
ただ、本当に男でも母乳が出た。
そして、僕はまた一つ何かを失った気がした。
目の端からこぼれる何かを意識しながら
「女体化してた方が良かったかっもしれない」
と呟いたことはここだけの話。
もう一度
長らくお待たせして申し訳ありませんでした。
今週から再開です。
書き溜めがないので定期的な更新にならないかもしれないですが出来るだけ週一ペースは守りたいと思っています。
これからもよろしくお願いします。
PS 更新停止中なのにポイントが減るどころか何故か上がってて感謝の言葉しかありません。
誠にありがとうございます。




