第七十二話 聖女の力は凄い。って僕は男だ
「この先、曲がったところに魔物が三体いる」
場に緊張が走った。
ジークがクリスに確認を取る。
「魔物の種類はわかるか?」
「この気配は多分グールだ。ゾンビ系の魔物であまり素早くないが無駄に耐久力が高い。火に弱いけど洞窟では酸欠が怖いから気を付けて。あと、斬撃はあまり効果がない。多少のダメージなんかはお構いなし。頭を潰されるまで襲ってくるから」
「そうなるとオレより、ライルのシールドバッシュの方が効果的かな?」
「暴れても暴れても咬みついてくるグールってのも悪くない」
ライルの言葉は良く聞こえなかったのでとりあえず無視しておく。
リーナやジークが気にしてないということは問題ないだろう。
一番近くにいたクリスは聞こえたのか目を点して驚いている。
「面倒臭いからわたしが風で押しつぶすわ」
「洞窟の中では空気が少ないから風魔法も大変だろ。なにがあるかわからないからここは魔力を温存しておけよ」
「でもどうすんの。変態に任せるの?」
「戦闘ではライルは信用……できると思うぞ」
「煮え切らないわね」
そこに僕が手を上げる。
「ちょっと僕に任せてもらえないかなあ」
「マルコが?」
ジークとリーナだけでなくクリスも首を傾げていた。
僕は自信満々に頷く。
ライルはというと
「身体中を腐った死体に咬みつかれて、あいつら毒もあるから痺れて動けなくなって、でへへ」
なんか気持ち悪い顔をしているから気にしないでおこう。
「新しい魔法を覚えたみたいなんだ。じゃあ、試してみるね。失敗した時の為に警戒よろしく」
そう言い残して僕は集中する。
頭の中に言葉が降りてきた。
「地上に縛られ彷徨える汚れた魂。いま、神の力を持って清めたもう。あるべき場所に輪廻の輪に帰れ。浄化!!!」
僕の詠唱に反応してあたりに暖かい光が溢れる。
そして曲がり角のあたりから呻き声が聞こえてきた。
そして
「反応が消えた」
クリスが驚いたように声を出す。
皆で警戒しながら曲がり角までやって来たが、そこには何もなかった。
グールの残骸すら存在していない。
「スゴイな。マルコ君の浄化の魔法は。普通、死体は残るのに跡形も残らないなんて。こんなの高位の司祭でもできるかどうか……」
「マルコ、こんなに高度な魔法を使って魔力は大丈夫なの?」
リーナが心配そうにこちらを伺っている。
「大丈夫だよ。そんなに魔力消費は激しくないみたい」
にへへと笑う僕にクリスとリーナが唖然としていた。
初めて戦闘で役に立ててなんだか嬉しくなってくる。
そんな時だった。
クリスがボソリと
「流石、聖女ですね」
「僕は男だ!」
思わずこぼれた言葉なんだろうけど僕は激しくツッコんでいた。
そして、グスリと鼻を鳴らす。
確かに聖女のスキルには助けられることが多いが男の僕にはやはり聖女はおかしいと思う。
『あの駄女神の所為で』と地団駄を踏まずにはいられない僕だった。
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