第四十三話 マルコの母乳は誰の手に
「それで次は誰がマルコに加護を貰うの?」
こいつ何を言ってるんだ。
小首を傾げる女神がわたしには悪魔にしか見えなかった。
「アクア様。その加護を貰うの? とはどう意味なんですか?」
「そのままの意味なんだけど?」
質問の意味がわからないようでアクアは首を傾げている。
それはジークたちも同様だ。
ただ、リーナがいち早く女神の意図に気付いて声を上げる。
「もしかして。幻獣や魔物だけじゃなくてわたし達にも効果があるってことなの!」
その発言にジークやライル、村長までも目を剥く。
村長、あんたは関係ないでしょう
「はい。そのような条件はありません。マルコの母乳を飲んだものは等しくマルコの子となり、加護を得られます。
「「「おおおおお」」」
三人がどよめいた。
わたしはこの状況に頭を抱える。
「あのね。なんでわたしが――」
わたしの声を遮るようにジークがアクアに詰め寄った。
「ぼ、母乳を飲むというのは搾った物を飲むのでも問題が無いのか?」
「ジーク? あなた、何言ってるの?」
わたしが蔑むような目で見てもジークは怯まない。
それどころかすごい勢いでアクアに迫っていく。
彼女もその威圧感に身体が引けているが素直に答えていた。
「それはダメです。直に吸わないと効果は発揮しません」
「「「おおおお」」」
再度どよめきが上がる。
「それは元からある。加護と同程度の効果があるの?」
「リーナまで」
「それほど大きな効果はありません。あのスキルはマルコの性的興奮の度合いと接触方法によって大きく効果が異なります。母乳の加護は通常の1.5倍ほどでしょうか」
「母乳の加護って」
変な名前を付けられてわたしは耳まで真っ赤になっていた。
だけど、そんな構わず次々に質問が飛ぶ。
「じゃあ、効果は重複可能なのか?」
「ライルさんまで」
「重複はしません。タダ、母乳の飲んだ後でもマルコと性的接触をすればそちらの加護が優先されます。それに意思疎通の効果は消えませんよ」
「もう、あんたもバカ正直に答えないでよ!」
わたしが女神に対して暴言を吐くが、誰もそんなこと気にしていなかった。
いまはそれどころじゃないらしい。
もう嫌だ。
「じゃ、じゃあ。母乳の効果はどれぐらい続くの持続時間や一回に飲む量とか」
「いい加減にして!」
わたしはとりあえずジークを殴って置いた。
彼は錐揉み回転しながら壁に受かって飛んでいく。
それでやっと我に返ってくれたのかライルとリーナがスゴスゴと引き下がった。
わたしはキリっと三人を睨みつけながら怒鳴る。
「ぼ、母乳なんか誰にも飲まさないわよ! 知り合いとそんな事出来る訳ないでしょ!」
顔を真っ赤にしながらわたしは叫んでいた。
なんでこんなこと叫ばせるのよ!
そんな中、今まで蚊帳の外だった村長が手を上げながら前に出てくる。
「じゃあ、わしなら問題ないだろう。今日会ったばかりだし」
「あんたなんか問題外よ。赤の他人に母乳なんて飲ませる訳ないでしょ」
ぜえぜえと息を切らせながらわたしは声を荒げる。
ホント、バカばっかりで頭が痛くなる。
そこに埃まみれのジークが戻ってきた。
こいつ本当に丈夫だなあ。
わたしは軽くイラつきながらジークを睨むと彼は軽く頬を染めながら視線を逸らして
「でもなあ。オレ達は魔王と戦わないといけないだろう。少しでも戦力は強化しておいた方が良いと思うんだ。それに何かの拍子にはぐれたりすることもあるだろう。その時に心の中で意思疎通が出来るというのは有効だと思うんだ」
「そっ、それは」
ジークの正論にわたしは少したじろぐ。
確かに魔王討伐の旅は危険だ。
生命を落とす可能性はかなり高いだろう。
そのことを考えれば……
「だからマルコ。そんな深く考えず。それにオレ達は男同士だし、幼馴染だろ。ちょっとくらいなら」
「で、でも」
「そんないやらしく考えるなよ。そう言う風に考える方がいやらしいぞ」
「わたしはそんなこと――」
「直ぐ済むって。ちょっと、ちょっとだけだから」
ごくりと生唾を飲み込みながらジークがにじり寄ってくる。
そして、彼の手がわたしの肩に触れた。
わたしも観念して覚悟を決める。
ジークがわたしの服に手をかける。
わたしはやっぱり恥ずかしくて潤んだ瞳でジークを見詰め
「いくら強くなるためだって、やっぱり、こんなの間違ってるよ」
「でへへ。大丈夫だって減るもんじゃないし」
わたしは軽く震えていた。
そして
「やっぱり、いやああああああ!!!!」
「なっ、なんで、ふげらほげえええええ!!!」
ジークは錐揉みしがら再度飛んでいく。
わたしは胸元を抱えるように抑えて蹲る。
そんなわたしをリーナが優しく抱きかかえてくれた。
「マジキモイね。あいつ。良く殴ったわ。マルコは悪くないわよ」
そんな風に責められるジークは瓦礫の中から立ち上がって言い訳を始める。
「ゲホゲホ。酷いじゃないか。オレは今後のことを考えて仕方なく」
「何言ってるの。あんないやらしい顔しといて。下心満載じゃないの。汚らわしい」
「汚らわしいって!」
「ねえ、マルコもそう思うでしょ」
「――うん。なんかいやらしくて怖かった」
「なっ!」
わたしの言葉にジークはショックを受けて固まっていた。
そんなジークを余所にリーナがわたしを立たせてくれる。
「もうこんな野獣たちの中にいたらいけないわ。さあ、行きましょ」
優しく抱きかかえてわたしを外に連れ出してくれる、リーナ。
そして、その手は妖しく蠢き、わたしの――
「あん。ちょっと、リーナ何するの!」
「しまった。あまりにも魅力的な胸があったから思わず我慢しきれずに」
リーネなの本音が駄々洩れだった。
その間もリーナの手はわたしの胸を揉み揉みと優しく揉みしだいている。
しかも、同じ女性だからかツボを心得ていて的確に……
って違う!
「もう、止めてよ。本当に油断も隙もあった物じゃないわ!」
わたしはリーナを振り解いて振り返り全員を睨み付ける。
そんな中、ライルが
「じゃあ、オレ――」
言い終わる前にわたしが射殺すような視線を向けるとライルはおずおずと引き下がった。
ただ、なぜか顔が紅潮してて気持ち悪い。
「わたしは誰にも母乳を上げるつもりなんてありませんから!」
そう言い残してわたしは足音荒く部屋から出ていくのだった。
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