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第四十二話 こいつはいくつ爆弾を落とせば気が済むのだろう


「なによ」


 もとい


「なんだよ」


 わたしは言い直してから全員を睨み返していた。

 この姿になると口調や考え方まで女の子のようになって困る。

 まあ、それは置いておいて。

 現在、わたしはみんなにジト目で見られていた。


 というのも、ホワイトタイガーの子供に加護を与えるために席を外したことが原因だった。


 うん。結局、皆の勢いに負けてこの子に加護を与えたのだ。

 もちろん、一人でだよ。

 そんなシーンをひとさまに見せる程、わたしは羞恥心を捨てていない。


 それにこれはわたしにとって初めての経験なのだ。

 だから、一人でさせて欲しかった。


 だって、授乳だよ。

 そりゃ恥ずかしい。

 恥ずかしい行為ではないことぐらいわかってるけど、恥ずかしい物はどうしようもないのだ。


 それで一人になって服をたくし上げて……


 うん。わたしの胸なんだけど本当に立派だ。

 これが自分の物だとはいつまでたっても慣れない。

 思わず一回揉んでしまう。


「あん」


 そう言う気持ちで触った訳ではないが思わず声が漏れてしまった。


「って違う。いまはこんな事をしている場合じゃない」


 わたしは顔を振って気持ちを切り替えてからホワイトタイガーの子を胸に抱えた。


 そして……


 本当に母乳が出てしまった。


 あの時はまた一つ何か失ってしまったような喪失感があって涙がこぼれそうだった。

 たけど、この子が一生懸命におっぱいを吸う姿を見るとなんだか心の奥が暖かくなってきて、不思議な感覚を味わった。

 世のお母さま方はみんなこんな感情を抱くのかなあ。

 なんだか嬉しくて得した気分だった。


 結果論だし、不本意だが、いまはやって良かったと思っている。


 それに……


 これは多分、わたしが男だから、それともこの子が自分の子供じゃないからあった感覚なのだろうけど……

 うん。女の子ってこんな気分になるのね。


 わたしは思い出して頬を染めていた。


 って違う! 

 いまはそんなこと関係ない。


 わたしはみんなを蔑むような目で見て


「あのねえ。みんなの前で胸を出して授乳なんてするわけないでしょ。少し考えれば分かることじゃない」


 盛大に溜息を吐きながら、あきれ顔で反論する。

 だけど、そんなわたしの想いは聞き入れられない。

 それでもそれ以上は文句を言ってこなかったのは誉めてやってもいい。


 空気を読めない約一名を除いては


「なんでわたしにも見せてくれないんですか! わたしは神ですよ。神の前で恥ずかしがる必要なんてないじゃないですか」


 ああ、そうだった。

 こいつはそういう奴だった。

 マジウザい。


 そんなことを考えていると


「そうだぞ。マルコ。男同士なんだから恥ずかしがるようなことないだろう。普段からオレ達は二人でお風呂に入る中じゃないか」


 なんだかジークまで訳の分からないことを言ってきた。

 それにわたしが言い返そうとすると

 リーナが強い口調で反発する。

 いけ! リーナ。

 いまだっけは応援してあげる。


「あんたねぇ。いまのマルコの身体は女の子なのよ。そんなマルコの裸を見たがるなんて最低! それに母乳を与えているところが見たいなんて変態なんじゃないの?」


「バカ言うな。オレはそう言う意味で言ってるんじゃない。今後の参考にだな」


「必死に言い訳している姿がさらにキモイんですけど。マジでそう言う趣味があるの?」


 リーナがドン引きして一歩後退している。

 ジークはわたしにそんなことないよと目で訴えながら


「って言うお前だってマルコの授乳シーンを見たがってたじゃないか! お前こそ、変態なんじゃねえのか?」


「何言ってるのよ。同じ女の子だから別に恥ずかしいことじゃないでしょ。それにあんたと違ってわたしは将来、子供を産んだらそういう事をする機会があるんだから見たいと思うのは不思議じゃないでしょ」


 う~ん、と唸りながら二人がにらみ合っている。

 本当にこの二人は仲が良いのか悪いのか分からない。


 そんな風にわたが呆れているとリーナがキッとこっちを睨んでくる。


「ねえ、マルコはどう思うの。こいつってキモイよね」


「そんなことないよな、マルコ」


 二人に詰め寄られてわたしはドギマギしてしまう。

 だから、思わず本音が


「ええっと、キモイかな?」


「キ、キモイッて」


 わたしの一言にジークがショックを受けている。

 リーナがニンマリ笑っていた。

 そこでわたしは初めて失言をしてしまったことに気付いて言い訳をする。


「えっとね。そんな意味で言ったわけではないの。なんか最近、ボディータッチが多いなあとか。触り方がいやらしいとかお風呂でわたしを見る目が~とか。朝着替えの時にこっちを見てたり……あれ? やっぱり、キモイ?」


「マルコ、それはちょっと言い過ぎなんじゃない」


 なんかフォローするつもりが止めを刺してしまったようだ。

 ジークはその場で跪いている。

 流石のリーナも可哀想に思っているのかそれ以上の追い打ちはかけないどころかわたしをたしなめてきた。


 そんな時だった。


「いまの言葉オレにも――」


 何かライルが言おうとしてたが、言い切る前にリーナの延髄蹴りが決まっていた。

 いつもなら一言、二言、言うところなのだが、不思議なことになぜか、リーナをたしなめようという気にならなかった。

 それになぜか軽い寒気を感じている。


 これも女の子特有の直感なのだろうか?

 なんか危険な気がするのでこれ以上考えるのはよして置こう。


 あと、リーナは女の子なんだから人前であんなに高く足を上げるのは止めた方が良いと思う。

 ここにはエロジジイもいることだし。


 わたしは村長を睨んでおいた。


 その時、リーナの足元で地べたに転がっていたライルが


「その眼をオレにも――」


 リーナがライルの顔を踏み潰してそれ以上は言わせない。

 なぜかライルの顔が紅潮していたんだけどわたしは意識してそれを見ていないことにした。


 と言う訳で場が混沌としてきてこの場はグダグダのままお開き、といういつものパターンになるかと思ったのだが……


 わたしはこの場にまだ爆弾が残っていたことを忘れていた。

 そいつがまたいらないことを


「それで次は誰がマルコに加護を貰うの?」


 こいつ何を言ってるんだ。

 小首を傾げる女神がわたしには悪魔にしか見えなかった。


いつもお読みいただきありがとうございます。

これからもよろしくお願いします。

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