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第二十七話 作戦会議


「それでどうするんだ?」


 僕たちは丘の近くでひとまず休養を取っていた。

 ここから南に少し行ったところにライトニングタイガーの巣がある。

 この先は獣道もなく、森の中をかきわけて進んでいかなくてはならない。

 休憩を取れるのはここが最後だろう。


 だから、僕たちはここで長めの休息をとることにしたのだ。

 腹ごしらえもしておかなくちゃいけないしね。


 そんなわけで軽い食事を摂り終わった頃、ライルが静かに声を上げた。


「どうする? ってどういうことですか?」


 質問の意図がわからなかったのかジークが聞き返している。

 僕も小首を傾げていた。


「ライトニングタイガーのことだ。オレなら一人で倒すことも出来るが、どうする?」


 ジークとリーネは俯いて少し考えている。

 僕としてはどちらでもよかった。

 雛鳥の生命が危ないのなら文句なくライルに頼むところだが、まだ時間に猶予がありそうだ。

 確かにライトニングタイガーと戦えるのはリーナとジークにとっていい経験になるだろう。


 でも、相手は今までになく強く獰猛な魔物だ。

 本音を言えばジークたちに万が一がありそうでライルにお願いしたいところではあるが……


「オレ達に任せてくれませんか」


 ジークがライルに真っ直ぐな瞳を向けている。

 そこには覚悟が伺えた。

 それに対してリーナは少しおどけた口調で答える。


「しょうがないわね。わたしも付き合ってあげるわ」


 ただ、口ではそう言っているが、その眼は真剣そのものだった。

 ライルさんは二人の真意を受け止めてしっかり頷く。


「わかった。オレは余程のピンチになるまで手を出さない。後ろに控えてマルコを守りながら見ていることにしよう」


 そう言うとジークとリーナは作戦会議を始めた。


「ライルさんが戦闘に参加しないとなると前衛はオレがやるわけだな」


「あんた、本当に大丈夫なの? ライトニングタイガーに効く魔法となると流石のわたしでも詠唱に時間がかかるわ。その間、持ちこたえられるの?」


「何とかしてみせるよ」


 そうジークは言ったが難しい顔をしている。

 ライトニングタイガーのスピードは有名だ。

 剣に多少自信があるジークでも断言するのは難しい。

 それに今回は自分の、いや、みんなの生命がかかっているのだ。

 軽々しいことは言えない。


 そんな中、ライルが応えた。


「確かにライトニングタイガーは速いが、マルコの強化魔法をかけた状態ならジークでも対処できるだろう。ただし、通常の状態ならな」


「通常の状態?」


「ああ、ライトニングタイガーは本気になるとその身体に雷を宿す。そうなると厄介だ。スピードが跳ね上がるし、その身に纏う雷撃で触れるだけでダメージを受けるんだ。――そうか、電撃攻撃か。それはそれで……やっぱりオレが相手をしようか?」


 何か思い当たったのかライルはそんな提案をしていた。

 ジークたちはそんなライルに呆れながらその意見を却下する。


「そうなると雷を纏う前に決着をつけるのが妥当ね。不意打ちできるのが一番だけど、それが無理ならジークが時間を稼いでわたしが渾身の魔法で倒すって感じかしら」


「お前、一撃で倒せるのか?」


「失礼ね。わたしの魔法は最強よ。何ならその身で試してみる」


 そう言うとリーナは掌に火の玉を生み出した。

 冗談でもそう言うことは止めて欲しい。

 僕がリーナを怒ると軽くシュンとしたリーナが炎の球を引っ込めた。


「それと、リーナ。火系の魔法は極力やめてくれ。火の上級呪文なんて使ったら、火事になって大変なことになる」


 ライルが呆れ気味にリーナを諭す。

 だが、リーナは軽く怒りながら反発していた。

 

「そんなの水魔法で消せばいいじゃない。それにわたしの魔法は狙った者しか燃やさないわよ」


「そう言って山火事を起こした魔法使いを何人も見てきた。とにかく、森の中での火魔法は厳禁だ。生命の危機がない限り絶対にダメだ」


 いつになく強い口調でそう言うライルに不満に頬を膨らませながらもリーナは頷いた。


「でも、そうなると次によく使う風魔法だけど――」


「それはダメだろう。雷を操るライトニングタイガーは風にも強い耐性があったはず」


 ジークの声にリーナは渋い顔をしていた。


「そうなると水魔法か土魔法かあ。でも、水魔法であたりを水浸しにしたところに雷撃なんて使われたらみんな感電しちゃうからダメでしょ。そうなると土魔法かあ」


 大きな溜め息を吐く、リーナ。

 そんなリーナに僕は疑問を投げかける。


「リーナって全属性魔法を使えたんだよね。土魔法は苦手なの?」


「そんなことないわよ。ただ、土魔法ってスピードが出ないのよ。素早い相手には不利なの。それに……」


「それに?」


「なんと言っても地味なのよね。石で何か形作って攻撃するだけでしょ。色が付けられればまだいいんだけど、それは難しいし。土龍くらい作らないと派手にならないのよね」


 僕たち三人はガクリと肩を落としていた。

 そして、ジークが額を抑えながら


「そんな見た目なんてどうでも良いじゃないか。使えるならそれで片付けろよ」


「ええ、天才美少女魔導士としては見た目のインパクトも大切なのよ。そうだ。派手な攻撃があった」


「どんな魔法なの?」


 僕が尋ねると喜々としてリーナが応える。


「ジークにライトニングタイガーを抑えて貰うでしょ。そうして身動きが取れなくなったところにアースクエイクの魔法で地割れを起こすの。ジークもろとも土の中ってのはどう?」


「ふざけんな! そんなことされたらオレも死んじゃうだろうが!」


「尊い犠牲って奴ね」


「地割れに挟まれるのか……それは良いかも。その役、オレが変わっても」


 ライルが訳の分からないことを言いだしたのはこの際、置いておく。

 こうして作戦会議はグダグダになってしまった。


いつもお読みいただきありがとうございます。

遅くなりましたが、明日、評価をいただいたお礼投稿をしたいと思います。

これからもよろしくお願いします。

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