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2月20日 SHIBUYA CRYSIS 前篇

なぜか英語です、日本語は「渋谷危機 前篇」


・・・まあ、危機なのは封鎖区全体なのですが、今回の話は渋谷なので

『おはようございます、今日は2023年2月20日、水曜日です。本日よりNHK渋谷からの放送を安全面の観点から一時休止し、ここNHK大阪より「おはよう日本」をお送りいたします。それでは…』


テレビはいつも通り動いていた

漫画雑誌などは発売2週間前には原稿が完成しているの場合が多いので、すぐには店頭から消える事はないだろう

新聞も、そう簡単に発行されなくなる訳ではない

外国では新聞というと地域密着の地元新聞が主流だ、しかし日本では全国で大手の新聞が読まれている

そうなれば支部は各地にある訳で、そう簡単に原稿が書けなくなることはないのだ


しかし、いつも通りなのは『封鎖区』の外だけかもしれない










「若者の街」

そう聞けば人々の頭には様々な場所が思い浮かぶだろう

・・・原宿や秋葉原、封鎖区の外だっていい


そんな活気ある街の一つ、ここ渋谷では、こんな状況下でも活気あふれんばかりの街だ

いや、表現を間違えた、『活気がある』というよりも『騒然としている』が正しい


昨日まで東京都の四区のみに指定された緊急避難区域は、すでに十区にまで拡大され、避難民の数はすでに数えられないほどに膨らんでいた

しかし、すでにほとんどの地域で感染者が目撃されており、今日か明日には封鎖区内の全地域が避難区域になってしまうという、ある意味矛盾した現象が起きると予想されている


さらに、昨日の夜には封鎖線に隣接している羽田空港でも戦闘が発生しており、幸いにも敷地内には一切侵入を許さなかったものの、最大の保護観察所が襲われた事は反社会的人格障害者たちの習性と関係があるのか、専門家たちの間におおきな論争を巻き起こしていた


避難所に関する問題はそれだけではない、チェックが甘かったのかウイルスが強かったのか、避難所で保護観察中の人々が次々と発症し、隣の人に噛みつく事例が多数報告されているのだ

もちろん避難所では碁盤状に仕切りを設置、人々にはそのマス目の中に分かれて入ってもらい、その境目を自衛官や警官が巡回している

しかし、避難民が多すぎて、一つのマス目にどうしても多くの人が入ってしまい、そのマスの中にいた人への感染は免れない

冷酷だがそのマス目にいた人たちには感染・非感染の有無を問わず、即刻避難所を出て行ってもらう事にしている、しかし決してそれが徹底されている訳ではない

なんせ追い出されても、もう一度受付に並べば、保護観察を受ける事が可能だからである

とはいえ、いちいち身分証明書を確認したりして二回目の受付を拒否する暇も時間もない


・・・いや、避難所の話はどうでもいいか

ここ渋谷に集まった人々がなすべき事は、逃げ遅れた人々を避難所に送る事である

残念ながら、渋谷区の大半が事実上放棄された今でも、逃げ込んで来る人はいまだに減っていない

楽観論者――――いや、ここでは常識人と言うべきか――――はほとんど危機が迫る寸前まで避難しなかったのだ、当然のことである




号令が響いた


それと同時に整列していた警官達が前に出る

警官は皆、暴徒鎮圧用の盾を持っていて、決死の覚悟でここに立っている

これ以上の恐怖を味わった警官はいたであろうか、目の前にいる人々はB級ホラーのゾンビ物で出てくるエキストラのような恰好をしているが、はっきり言って数がB級じゃない、もはや彼らの群れを『群れ』と呼ぶ事はできないであろう

彼らが守る道の、その前を埋め尽くす、いや飲み込まんばかりの量だ

そして、盾を構えた警官達は一列の防衛線となり、感染者達の進行を妨げる

しかし、電車も感染者も急には止まれないとはよく言ったものだ、後ろからドンドンぶつかってきて、前列の感染者を押しつぶしたりもする

当然、何重もの感染者に押されれば、防衛線も崩れそうになっていく

しかし、それが狙いだ


再び号令が響く


その言葉と同時に、警官たちは一斉に身を引く

防衛線は一列を保ったまま後退し、盾に全体重を乗っけていた前列の感染者は一斉に倒れる

前列が倒れてしまえば、前の列に全体重を乗っけていた後ろの列も同時に倒れる

たちまち数列の感染者が倒れ、重なり、標高が低い山ができる

できるならこの山に感染者の波を押さえて欲しいものだが、さすがは元国民、感染者達は山を乗り越えるべく、登山を開始した

しかし、すでに警官達の防衛線は解散して後退済み、感染者の山の前に立ちはだかるのは自衛官たちだ(正確には膝撃ちの姿勢)


「撃て!」

その声とほぼ同時に小銃の射撃音が響き、山を乗り越えようとして頂上によじ登る感染者の頭が次々と吹き飛んでゆく

自衛官たちは、距離も近い事もあり着実に目標を撃破してゆくが、敵の長所は恐怖を感じない事と数の暴力、自衛官たちが弾倉を交換している間に、山を乗り越え切る者が数体出始めた

恐らく、このまま次の弾倉交換を行うことは無理だろう

そう判断した自衛官たちは弾倉に残った弾を全て撃ち切ると、次々後退していった

そして全員が後退した後、山を乗り越えた感染者達の目に映ったのは(感染者の視力はあるのかどうかは視力検査をした事がないので分からないが)


――再び盾を構えた警官達の防衛線であった






「で、状況は?」

渋谷区防災センターに指揮所は存在した、センター内に設置されたいくつものモニターが状況を示していた

その指揮所の中、コーヒーを飲んでいた男はそう尋ねた

背中には大きく『渋谷区』と書かれており、ゆっくりとコーヒーをすする姿はこの状況に全くそぐわない

しかし、これが彼の落ち着き方だ

「まあ…じりじりと後退しています…」

まあ、そうだろうな

彼は事実を再確認するかのようにつぶやいた

時計に目を見やる

いつもより百倍ゆっくりコーヒーをすすったはずなのに、時計の針はほとんど進んでいない

それにもかかわらず、状況は刻一刻と悪くなっていく


早く逃げてくれ・・・

区民の為、自分の為、彼は心の中で祈った

・・・日付ギリギリに更新です


残念ながら三日に一度のペースで投稿するのに限界が来ました

当面は一週間に一度のペースを目標にやっていきます

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