表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/27

2月18日 広がる感染と内閣総理大臣

『ただ今入りましたニュースによりますと、中央区にて反社会的人格障害に感染したと思われる会社員が発見され、自衛隊はこれを射殺!繰り返します自衛隊は会社員を射殺しました!これに対し…』










画面を見ながら永田官房長官はつぶやいた

「ふざけやがって・・・」

画面には視聴者から提供された映像が流れていて、画質は悪いが、確かに市民に襲いかかろうとした(・・・・・・・・・)感染者を自衛官が射殺するシーンが映されていた

永田は秘書官の方を向き、伝える

「この件もこの後の会見原稿にいれる必要があるな」

秘書官はわずかに顔を上げ

「そうですね」

とだけ言った


そんな二人の様子を眺めるように座っている長瀬総理はというと、浮かない顔をしていた

そう、ついに発砲し始めたのだ

この事態に対し、警察などには身の安全を前提(・・・・・・・)としたうえで警察官職務執行法に基づいた行動をするように指示していたが、いよいよ事態は差し迫ったものになりつつある、という事であろうか

「早い、早すぎる!」

思わず声に出てしまい、永田と秘書官が不安げにこちらを見やる

仕方のない事だ、今回の事態は『想定外』ではない『規格外』なのだ

人類の英知が届かないレベルなのだ


伊東準教授が言っていた感染爆発前の(プレパンデミック)ワクチン(ワクチン)はまだ試作段階、全国の研究機関が総出でもようやく試作段階だ

それにも関らず、すでに感染者の発生は確認されただけで3区、試算によると明日にはあらたに5区で大規模なアウトブレイクが発生するのだそうだ、プレパンデミック・ワクチンはもはや間に合わない


――――東京は感染爆発(パンデミック)に突入した


それは信じたくはない、信じたくはないが、疑いようもない真実である

伊東が言っていたように感染から発症までの所要時間は1、2時間になり、感染者の総数はネズミ算式に増えていく、超過密の都心部ならなおさら、だ

今はまだ組織的な感染者の「確保」が進んではいるものの、今やってる事は洗面器に蛇口全開で入って来る水が洗面器からあふれる出るのを、必死に防ごうとしているだけで、そう遠くないうちに限界が来る


そうなれば、完全封鎖に踏み切るしかなくなる・・・


だから今政府にできる、いや、しなければならない事は、封鎖区から1人でも多く逃がす事だ

今政府は封鎖区内に住んでいない人を優先で希望者の保護観察を行い、48時間の保護観察が終わり次第封鎖区の外に出して行くしかない

保護観察を行う場所は多摩川や荒川にある河原の空き地だが、人手は圧倒的に足りず、とにかく政府関係者で手の空いてる人は――――そう、官僚すらも――――河原で見張りや手続きをしている


それにも関らず、人手は足りず、作業は進まない

三日後にはようやく全ての希望者が保護観察下における予定だ、だが・・・


長瀬はパソコンの画面に移った報告書を見る


希望者の数は都内にいる人数と比べ、圧倒的に少ないのだ

つまり、封鎖区外に出たがらない、出ようとしない人がとても多いのだ

調べてみれば、いや調べなくても簡単に分かるが、希望者のほとんどは封鎖区内に家がない人なのだ

つまり「家に帰りたいから出る」という理由の人がほとんどで、「危ないから出る」という人は全然いない

日本人の持つ協調性の成果か、それともただの楽観主義か・・・


なにより、これは喜ばしい事なのか、嘆くべき事なのか

「・・・きっと、嘆かわしい事なんだろうな・・・」

「どうしたんですか?」

官房長官が声をかけてくる、声が出てしまったらしい

「いや、都民がほとんど避難していない事がな」

「まあ、今は『帰宅困難者』の避難が最優先ですから、いい事かもしれませんよ?」

「いや、誰も危機感を持っていないような気がしてね」


確かに、それは職員一同が思っている事であった

テレビが騒いだのは初めの数時間のみ、その後はほぼ平常の番組となった

もちろん学校は休みになり、大学では医学部だけが開いていて、電車やバスは一台に大勢が乗りにくいように本数を増発しているなど、きちんと対応している団体、企業はいる

しかし、市民はどうだろうか?

ほとんどの学生や会社員は降ってわいた休みと思っているのだろうし、どんなに政府が呼びかけても、今起きている事は『規格外』なのだ、信じてくれない人は実物を見るまで信じないだろう

なら我々は何をすればいいのか・・・




「総理、そろそろ時間です、準備を」

秘書官に声をかけられ、長瀬は立ち上がる

これから放送前の着こなしチェックをするのである


「それにしても、長瀬総理」

最終チェック中に永田が声をかけてきた

「どうした」

「本当に建物前でやるんですか?」


そう、今回の記者会見は異例中の異例、官邸の前で行う事にしたのだ

本来ならば官邸の一階にある記者会見室で行うのだが、これを官邸の正面玄関前で、さらに後ろに自衛官の護衛をつけて行うのである

これには賛否両論が閣僚からもでた、外で記者会見を行えば当然危険は高まるし、「自衛官をテレビに映す」というあまりにも政治的意味合いが強い行為はやめるべきだ、と主張する関係者は多かった

しかし長瀬は自衛官の護衛は総理が持つ自衛隊の最高指揮監督権が理由である、と説明した

そしてなによりも、長瀬はこの事態がただ事でないと少しでも国民に伝えたかったのだ

その上で、国が国民の為に最善を尽くしている事を伝えたかった


もっとも、信じてもらえるかは分からないが







放送関係者が声をあげる

「本番入りまーす、5秒前、4、3」

指で示されたカウントが減っていく


とにかくできる事をやろう、報道は報道の、自衛隊は自衛隊の、総理は総理の

長瀬内閣総理大臣は、自分に向けられたカメラと、その先で凝視しているであろう国民達に顔を向けた













『ただいまより・・・』

次回投稿は三月三十日

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ