英国人記者と日本人翻訳
「从这里前头是封锁范围以内」
完全武装の中華人民武装警察部隊(武警)隊員は言った
「なんて言ったんだ」
私は極東人の通訳に聞いた、念の為言っておくが英語だ
「ええ、これより先は封鎖されているようです」
「ならそいつらに伝えて、どうしても通してほしいと」
そんな!と通訳は言った、向こうの言葉は分からないが、驚いているのだろう
極東人は皆して中国政府を恐れているようだが、そこまで恐れる必要があるのだろうか
通訳はしぶしぶと言った様子で
「请通过(通してくれませんか?)」と言った
その後少し話した後、彼は振り返り
ちょっと困った様子で
「・・・5000ポンド、だそうです・・・」
「・・・」
お金で通用するチャイナってホントすごいよな
私は札束が入っているショルダーバックから5000ポンドを出した
しかし元ではなくポンドを請求されるとは
「ジェームズさん、一体この山奥に何があるっていうんです?」
「お前も見ただろ、あのニヤニヤしている武装警察たち」
「ええ、多分帰りも金取られますよ」
「いや、そう言う事じゃなくて、こんな山奥が封鎖されてる理由だ」
「ああ、そっちですか」
先日、農村の人から物流が滞っていると聞かされた
多少物流が減る事はよくあるが、今回は全く入らなくなってしまったそうだ
「勘だな」
「勘ですか」
「ああ、でもこれはきっと大スクープになるぞ」
「ホントですか??」
「多分、な」
山道を進んでいくと、人が活動したあとが見えてきた
しかし、やけに静かだ、空高く飛ぶ鳥の鳴き声しか聞こえない
「ジェームズ、あれ・・・」
「戦車?」
「いや、装甲車だと思うけど、そう言う事じゃなくて」
なぜ、こんなところに軍がいるんだ??
「とにかく、人を探そう」
変なにおいがする、何だろう?
ようやく建物が見えてきた、が
「おい、イシダ、あれを見ろ」
「え、」
村は騒乱の中・・・いや、狂気の渦中にあった
小さな村に住んでいるには多すぎる人々が、他の人々を喰っているのだ
食べているのではない、フォークもナイフも、イシダがよく使っているハシも使わずに喰っている
「な、なにが・・・」
イシダがつぶやく
すると、血が口の周りについた男――――驚くべきことに彼は人民解放軍の制服だ――――がこちらに気付き迫って来る、変なにおいは血の匂いだったのだ
「うわ、くるぞ」
「ジェームズ、写真!!」
忘れてた、写真を取り出し沢山写真を撮る
人民解放軍の男はこっちに近づいてきて、イシダは警告する
しかし一向に止まらない彼を石田は止めに入る
あの技は・・・
どうやるのかさっぱり分からないが、イシダは慣れた手つきで男を転ばせ、抑え込んだ
「おお!これがジュージュツかっ!」
「なんだこいつ、力が強すぎる、ジェームズ、こいつをやってくれ!!」
え?今こいつ何と?
やってくれって、殺せってこと??
「はやく、気絶させろ!」
ああ、そっちか
殺さないように、相手を気絶させてから(殺してしまった可能性は否めないが、この様子なら正当防衛が認められるだろう)イシダの方を見て愕然とした
人々が、こちらに向かってくる
イシダのジュージュツでは1人を相手にするのが精いっぱいだろう
「写真は撮った、逃げるぞ!」
さっきまでは反射的に淡々と動けていたが事がひと段落すると急に恐怖で体が埋め尽くされてきたのだ
二人は慌てて逃げ出した
「はあっ、はあっ・・・」
「逃げ切りましたね・・・」
「といっても、一本道だからすぐ見つかるだろう」
「とりあえずさっきの検問まで行こう」
「あ、そうだ」
イシダが思い出したように行った
「さっきの軍人、胸に保健部隊って書いてありましたよ」
「となると衛生兵なのか?」
「いえ、感染症のみを専門的に扱う部隊ですよ、前回のインフル後に作られたとか」
「となると、私の勘は正しかった訳か・・・」
「・・・大丈夫なんでしょうか?」
「ああ、この調子だとここら一帯はやばそうだな」
「そうじゃなくて、我々ですよ、感染とか・・・」
「噛まれてないし、大丈夫だろ」
そういってから、その言葉の重要性に驚く
私は今起きている事といわゆるゾンビ映画を一緒にしてしまったのだ
慌てて発言を訂正しようとしたが、イシダは言わせてくれなかった
「そうだといいんですが・・・あ、見えてきました検問です」
「事结束了吗?」
「结束了」
イシダは適当に会話をしているようだ
「在对面的村是什么没看?」
イシダが振り返った
「なにか見なかったかっていってますが・・・」
「ふむ・・・適当に返しておいてくれ」
「適当にって、言うんですか??」
「言ったら捕まりそうだ、止めとけ」
「了解、什么都没看,不过,是什么发生了?(何も見ませんでしたが、どうかしたんですか?)」
「嗯…什么都没有哟」
やけに口ごもった言い方で彼らは答えている
そして、
「那是照相机!(カメラだ!)」
と誤魔化すように言った
え?うわっ、カメラ隠してなかった!やべえ!
その様子を見たイシダは慌てた様子で
「搞钱,请放过(金ならやる、見逃してくれ)」
と懇願するが、私のカメラはあっさり取られてしまった
・・・さっきの混乱で、バックアップを取り忘れてしまった、なんてミスだ!
「どうするんです?」
「どうしようか、」
本社には連絡したが、やはりというべきか取り合ってもらえなかった
写真がなければ話にならない、という事だ
「とりあえず記事はインターネットにアップしとくよ」
「そうですか、信じる人が少しでもいるといいんですけど・・・」
街の明かりは明るい――――もっとも中国の山間なので大したことはないが――――しかし、暗闇よりも恐ろしい敵が迫っている事を彼らは知っていた
「日がのぼったら、すぐ移動する、逃げられるといいんだが」
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