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シャドウサーカス〜闇と光の出会い〜  作者: シン
Second Show

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54/55

It's Showtime

 今日は待ちに待った、ショーが行われる日。

 私は準備に間に合わなかったから、裏で見学することになった。

 観客席には既に多くの人が座っている。

 ショーの始まりを、今かと待っている。


 今日の演目は《赤目の少女》。

 演出は、私がカターレで見た時のものからガラッと変わるらしい。


 やがて照明が落ちていった。

 燕尾服を着たウィルさんはシルクハットを手にし、ゆっくりステージの中央まで歩く。

 彼の声が、バックステージまで響く。


「Ladies and Gentlemen、ようこそサーカス・ルミナへ……」


 ウィルさんは前座として簡単な魔術を披露してから、今日の演目を紹介した。


「どうぞ、夢のようなひとときを」


 優雅に一礼し、ウィルさんはぐるりと体を振り返り、バックステージに戻った。


 最初に出場するのはニナとニノ。

 彼らはステージ中央で一礼してから、社交ダンスを踊り出す。

 同時にクラシック音楽が流れ出し、まるで貴族の舞踏会に参加しているようだ。


 スポットライトが彼らの動きに合わせて移動する。

 ニナを照らすスポットライトだけ、赤みがかかっている。

 彼女こそ、この演目の主人公なのだ。


 音楽に合わせて踊っていると、四方八方から事前に仕組まれたナイフがニナ達に向かって飛んでいく。

 それを、ニナとニノは踊りながら、時に体を宙に浮かび上がらせながら躱していった。


 時折、観客席からの歓声がここまで伝わってくる。


 締めに、ニナとニノは飛んできたナイフを一本取り、お互いを刺そうと手を振り上げた。

 そして、ニナのナイフはニノを貫いた……ように見せた。

 そこで音楽が止み、照明が消えた。


 次の瞬間、緊張感を漂わせる音楽と、深い緑の照明が灯る。

 カナが黒豹のマリーと共にステージに登場し、観客席に向けて吠えた。

 まるで、自分こそが人々を脅かす存在だと示すかのように。


 ステージに炎が燃え上がり、サックスが槍に炎を纏わせながら振り上げる。

 そこへニナがナイフを手に近づいていく。

 黒豹とサックスが一斉にニナに襲いかかる。

 それを、ニナは優雅に躱し、さばいていく。


 また場面が変わる。

 ニナはステージ中央に跪き、祈るように両手を絡める。

 再び、四方八方から花びらがテント中を舞う。

 しかし、ニナの表情はとても悲しそうだ。


 そこでピエロの仮面を被ったカイがニナの前まで歩き、彼女に手を差し出す。

 そこでやっと、ニナは笑顔を浮かべた。

 彼女はカイの手に手を添える。


 そして踊り出す。

 今度は祭りのような、軽やかな音楽。

 徐々にニナとカイは宙に浮かぶ。

 踊りながら、照明が徐々に落ちていき、二人の姿が見えなくなる。


 ここでショーは終わり、割れんばかりの拍手と歓声が轟いた。


――――


 ショー終わりの夜、サーカスはささやかな打ち上げパーティーを行った。


「みんなお疲れ様!!!」

 カナがテンション高く、持っている酒を掲げる。


「ねえねえ、りりィ姉ちゃん!ニナのショー、どうだったどうだった?」


 ニナはここにいる唯一の“観客”である私に感想を聞いてきた。


「良かったよ。相変わらずいい動きをする」


 とにかく、感じたことをそのまま口に出す。


「次からりりィちゃんもショーに出るよね。りりィちゃんはどんなことできるの?」


 そっか、私も彼らのように演者になるのか。

 困ったな。

 私の身体能力は一般人並みだ。

 カナのように動物と心を通わせられないし、双子達のように俊敏に動けない。


「りりィ様はわたしと一緒に、演出を考えましょう」


 ここでウィルさんから提案が来た。


「りりィ様は目立つのを避けるべきですし、体を動かすより脳を動かす方が合っているのでしょう」


「そうしましょう」


 食い気味に了承する。

 カイ達みたいに動き回るより、出来そうだ。


 そこでニノが私の服の袖を引っ張った。


「りりィ姉ちゃん、僕の活躍を増やしてね」


 キラキラした顔と上目遣いで、私を見上げる。


「あー、ニノずるい!ニナもいっぱい活躍したい!」


 双子達はじゃれあい、カナとサックスは楽しそうに酒を飲む。

 ウィルさんは一人だけ少し離れて座り、ワインを啜る。


 ここでやっと、カイがいないことに気付く。


 私はテントの外に出た。

 そこに、夜空を眺めているカイがいた。


「中で一緒に食べないの?」


「……」


 カイは答えない。

 ただ、顔を私の方に向けた。


 私は彼の隣に立って、同じく夜空を眺める。


 別に空が好きなわけではない。

 ただ眺めていると、心が静まっていく。


 満ち欠けの月が見える。

 隣のカイを見てみる。

 月の光に照らされる彼は、やはりきれいだ。

 初めて会った日のことを思い出す。


「初めて会った時も、カイは月から背を向けていたね。あの時、きれいって思ったよ」


 普段なら思っても言わなかったけど、今夜はなんとなく口に出してみたいと思った。


「……」


 やはり返事がない。


 沈黙が続く。


「俺は――」


 カイはゆっくり話し出す。


「あの夜、お前の目を見て、きれいだと思った……と思う」


 私は小さく吹き出す。

 彼は不器用に返事を返してくれた。

 それが少し可笑しく、可愛いと感じた。


 彼の横顔を覗いてみると、相変わらず無表情だ。

 でも耳が、微かに赤くなっている。


 そのことに失礼ながら、また可愛く感じてしまった。

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