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シャドウサーカス〜闇と光の出会い〜  作者: シン
Second Show

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52/55

答え合わせ

 あの暗殺決行の日から二日が経った。

 案の定、領主が暗殺されたことで町はしばらくその話題で持ちきりだった。

 けれど、ウィルさんの言う通り、人々は今まで通りに生活している。


 その朝、私はウィルさんを呼び出した。


「あなたからわたしを呼び出すなんて、珍しいですね」

「ウィルさんに聞きたいことがあります」


 ウィルさんは紅茶を淹れ、私の前に置いた。


「聞きたいことは? ちなみにわたしの好みは、少しおっとりした女性ですよ」


 聞いてもいないのに女性の好みを語る。

 私ではないということだけは分かった。


「ウィルさんは、双子達をどうしたかったんですか」


 ウィルさんは紅茶に口をつけようとした手を止めた。


「と、言いますと?」

「あなたは最初から、双子達を両親に会わせようとしていましたよね」


 ウィルさんは空き地の使用許可を取るため、領主邸に入っている。

 なら双子達の両親――アケドール夫妻を見かけてもおかしくない。

 だから屋敷では、私にあの指示を出せた。


「やはり鋭いですね」


 ウィルさんは小さく笑った。


「わたしも他人の家庭事情に踏み込むほど暇ではありません。ただ、あの双子はまだ幼い。選択肢を与えるべきです」

「選択肢とは?」

「自分を捨てるか、他人を捨てるか、です」


 今度こそ紅茶に口をつける。


「双子達がサーカスに入る時、彼らの父親に会いました。貴族の子供を預かる身ですから、挨拶は必要でしょう」


 アケドール卿はサーカスのことを知っていた。

 だからあの時、彼だけが比較的冷静だったのか。


「その時、アケドール卿に頼まれました。『あの子達は少し他の子と違う。情けない話だが、我々の手には余る。妻には内緒にするので、どうか代わりに導いてほしい』と」


 少し驚いた。


「今回のことが、あなたの導きの結果ということですか」

「わたしが子供を導くなど、大それたことをすると思いますか?」


 意地悪な返しだ。


「彼らは光の中に生まれながら、闇を抱えた子です。だから両親とは相容れない。しかし光に馴染もうとしている。このままでは、いずれどちらかが崩壊する。だから一度、きちんと選ばせるべきでした」


「光を受け入れるか、自分の闇に生きるかを……」

「ええ」


 理解した。

 彼なりの責任の取り方なのだろう。


「質問がそれだけなら、次はわたしから」

「何ですか?」


 ウィルさんは今度、探るような目を私に向ける。

 「サックスからの報告がありました。りりィ様は赤い瞳の男性とお知り合いのようですね」


 あの執務室でのことか。

 いずればれるだろうと思ったけど、こんなすぐとは。


 「りりィ様は、エクリプスの関係者ですか」

 「そうですよ」

 

 間を置かずに答える。

 別に隠すことはない。

 この国では、エクリプスに入るだけで、優秀というレッテルが張られるくらい、光栄なことだ。

 ――表向きには。


 「よくわかりましたね」

 「個人的に調べているので、知っているのですよ。赤い目をした闇部隊について」


 これを知っているということは、彼はかなり深いところまで調べているのだろう。


 「あなたの正体を暴く気はありませんが……あなたの目的は、エクリプスから逃れることでしょうか」

 ウィルさんにとって、これこそ本題だろう。


 「そうですね……今のところはそうでしょうか」

 「おや、目的は定めてない感じでしょうか」


 ウィルさんのいう通り、私にははっきりとした目的はない。

 とりあえず、あそこから逃げ出しただけ。

 本当はロイドに連れ戻されても、きっとどうでもいいのだ。

(でも、私はまだ答えを探している)


 「なら、わたしに協力していただけますか」

 ここで、ウィルさんからお誘いが来た。


 「協力、とは?」

 「実はわたし、エクリプスを潰そうと思いまして」

 彼は満面の笑みで、怖いことを言ってきた。

 領主の暗殺よりも、国を揺るがすようなこと。


 「随分大胆なことを考えていますね」

 「個人的にあそこが気に入らなくてね。あなたが協力してくれれば助かりますけど」

 「……」


 さすかに即答できない。

 あそこから逃げる度胸はあっても、喧嘩を売る無謀さはない。


 「一緒にエクリプスを潰そうとは言いません。あなたにはサーカス入団し、情報提供していただきたいのです。その代わり、あなたの安全を引き続き保障します。あなたの目的も協力します。あなたに損はさせません」


 正式なスカウト、ということか。

 正直私も、あそこから離れたいという曖昧な目的だけで、行動している。

 ここで彼に協力することも、悪くないかもしれない。


 それに、あの双子、カナ、サックス、そしてカイ……

 彼らを見てたら、答えのヒントが見つかる予感がした。


 「――別にいいですよ」


 なんとなく答えた。

 ウィルさんは満足げに微笑み、私に右手を差し出す。


 「これからあなたの、サーカスの一員です。よろしくお願いいたします。」

 私も手を差し出し、彼の手を握りしめた。

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