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シャドウサーカス〜闇と光の出会い〜  作者: シン
Second Show

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51/55

それぞれの結末

 結論から言うと、領主は殺した。


 あの後、サックスは私とカイと合流し、庭から離れた。

 ニナとニノに両親と話す時間を作ってあげたいという、サックスなりの心遣いだろう。


 あの双子に今まで何があってサーカスに入ったのかはわからない。

 でも、時々垣間見える底のない黒い何かは、あの両親が原因なのだと雰囲気で察せられる。

 ウィルもきっと、双子達にとって必要だと思って、私に両親を連れて来るよう指示したのだろう。


 それに――一応、双子の両親は別の町の領主らしい。

 領主殺しの現場を見せるわけにはいかない。


 だから私達は、領主を屋敷の隠し部屋まで引きずり込んだ。


 あの執務室で、ロイドは相変わらず壁に寄りかかって座り込んでいた。

 まさに「何しにきたの」という顔だ。


「何戻ってきてんだよ。もう一度攫ってやろうか」

「そんな元気ないでしょう。その隠し部屋で領主を処分したいから、邪魔しないでね」

「言うなよ。知ったら後処理しなきゃなんねえじゃねえか」


 カイは部屋に入った途端、ロイドを睨みつける。

 それを見たサックスは戸惑いを隠せない様子だった。


「あの……りりィさん、こちらの方は……?」

「敵だったけど、カイが無力化してくれたから、放っておいていいよ」

「は……口止めしなくても?」

「大丈夫。後で私がするから」


 ロイドを殺して口止めすることもできなくはない。

 でも、多分おとなしく殺されてはくれないし、何より――私は彼を殺したくない。

 一応、長く組んできた仲だ。


「あの隠し部屋でやろう。終わったら部屋を閉めれば、すぐには気づかれない」


 ついでに証拠も持ち出そう。

 私に都合の悪いものがあっても困る。


 カイはなお暴れる領主を隠し部屋の奥へ引きずり込む。

 サックスも続いた。


「なあ、カイ。この人、俺にやらせてくれないか」


 サックスは見たことのない恐ろしい表情をしていた。

 ただならぬ気配。


 カイは領主を押さえたまま頷く。

 サックスは槍を持って部屋へ入った。


 領主の悲鳴が何度も響く。

 あっさり終わらせる気はないらしい。


 私はロイドのもとへ向かった。


 常に持ち歩いている包帯を取り出し、服を開いて応急処置を始める。


「……手当てはしてくれるんだな」

「これくらいじゃ死なないと思うけど、一応恩を売っておこうと思って」

「……お前は、あそこにいたくないのか」


「そうね……どちらかと言えば、いたくないかな」


 嫌いなわけじゃない。

 でも、忘れられない言葉がある。


 ――君は研究者として、最高につまらないね。


 多分、今私がここにいる理由は、その言葉だ。


「そうか」

「あっさり納得するのね」

「納得してねえよ……でも、止めない」


 手当てが終わると、ロイドは私の頭に手を添え、顔を近づけた。


「お前が望めば、あいつらにお前の居場所は言わない。それだけは約束してやる」


 それだけ言って、彼は立ち上がる。


「ありがとう……ついでに後ろで起こっていることも黙ってくれると助かるけど」


「注文多いな。上に怒られるのは俺だぞ」

「あなた、上の言うことほとんど聞かないでしょう」

「……わかったよ。そのおっさんが勝手に死んだって言っとく」


 窓辺に足をかける。


「あー、あの道化に言っとけ。俺はあきらめてねえぞって」


 そして飛び降りた。


 あきらめないって、何のことだろう……聞かなかったことにしよう。


 ちょうとカイとサックスは一仕事終わったらしく、隠し部屋から出てきた。


 「あれ、さっきの方は行ったのですか?」

 「うん、口止めしておいたから、気にしないで」


 私は隠し部屋へ入り、証拠を集める。


 かなり凄惨な光景だ。

 血に触れないよう本棚へ向かう。

 

 サックスはすぐニナとニノ達と合流しようと、執務室から離れた。

 

 カイは相変わらず私の後ろで、私を見ている。


 仮面の奥の目が、不安に揺れていることを、私は知らない。

 ――――

 後にカナから聞いた話、ニナとニノは両親とかなりもめたらしい。


 母親が泣き叫んで、必死に引き留めようとした。

 それても、ニナとニノの決意は変わることがなかった。


 最終的に、彼らの父親と、後に合流したサックスが必死に母親の暴走阻止した。


 今、私達は馬車で帰路についている。


 「みんな本当にお疲れ様!私はあまり役に立てなかったけど、みんな怪我がなくて本当に良かった」

 カナが馬車の上で私達を労う。

 

 「そんなことないよ!サリーのおかけで、速くニノと合流できたし」

 目の前の双子は、両親との修羅場が終わったばかりに見えないくらい、元気にしている。

 逆に何か憑き物でもなくなったみたいに、生き生きしている。


 「帰ったらニナと遊びに行きたいな」

 「ニナもニノと一緒に遊びたい!美味しい屋台に案内する!」


 「おや、あなた達、何かを忘れていませんか?」

 ここで、御者席に座っているウィルさんが話し出す。


 双子がはてな顔をする。


 「5日後、サーカスショーを行いますよ」


 そうだった。この人達、サーカスだった。


 「ショーなんてしていいのですか?この町、領主がいなくなったばっかですよ」

 私は問いかける。


 「いいのですよ。しばらく混乱は起きますが、統率者はいずれまた選びなおされます。私達にできるのは娯楽を届けることだけです」


 ウィルさんはさも当然のように語る。

 「町は案外、領主がいなくてもきちんと回れるのですよ」


 そういうものなのかもしれない。

 この町の混乱を招いたのはまさに私達だから、責任を取るべきと思わんなくもないが、自分から自首するわけにもいかないから、そうするしかない。


 「それからりりィ様、しばらく国境を出られないと思いますので、今後旅を続ける準備もしてください」


 まあ、そうなるんだろうな。

 国境を封鎖した領主がいなくなって、国境を解放できるものはいない。

 そもそも本当にあの領主の権限で封鎖できたのかもあやしい。

 国境の管理は国益にも関わるから、一介の領主だけで封鎖できる気がしない。


 なら、そう簡単に国から出られないことを想定して、準備をすべきかもしれない。

 私は馬車に揺られながら、今後のことを考えるのだった。

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