表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シャドウサーカス〜闇と光の出会い〜  作者: シン
Second Show

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/55

女の子達のデート

 ファルムの大通りに並ぶ建物はどれも華麗で、立派な意匠が施されていた。

 カターレの町並みも綺麗だが、ここはそれ以上に華やかだ。


 行き交う人々も、綺麗なドレスや清潔な正装に身を包んでいる者が多い。

 逆に平民らしい身なりの人は、あまり見かけない。


 その中で比較的質素な服装をしている私達は、少し浮いている気がした。


「東領は貴族が多いって噂だけど、本当? ニナ」

「本当だよ。特に東領の中心部は貴族の住宅地って感じ。この町は商人が入りやすいから、買い物の場所って感じなの」

 ニナは得意げに説明し出した。


「ニナは東領出身?」

 私は話の流れから推測したことを、そのまま口に出す。

「そうだよ! ニナとニノは、ここから隣の町に住んでたの!」

 ニナは笑顔で答えた。

(なら、今回は彼女達にとって里帰りにもなるのかな)


「ニナとニノは、家に帰らないの?」

「うーん……どうだろう。ニナとニノ、パパとママに黙って家を出たから、帰らないと思う」

 ニナは笑顔を崩さなかったが、声色がほんの少し沈んだ気がした。


「ねえ、あそこのお店。綺麗なドレスが並んでる! 入ってみよう」

 カナは話題を逸らすように、すぐ近くの服屋を指差した。


「わあ、あのピンクのスカートかわいい! 行こう行こう!」

 私はニナとカナに手を引っ張られ、服屋に入った。


「いらっしゃいませ! どんな服をお探しで――」

 店員は満面の笑顔で挨拶をしてくれた。


 だが、私達を見るなりその笑顔はすっと消える。

「あー……すみませーん。うちには平民の服を置いていないのです」

 遠回しに出て行けと言われた。


 店内には高そうなドレスがずらりと並んでいる。

 貴族向けの店なのだろう。


「はあ? 私達、お客さんなのよ! 何、その態度!」

 カナが不満そうに声を吊り上げる。

「すみませーん。でもお客様方には、ここのドレスは少々高価すぎるかと」

 店員は嘲笑うように手で口元を押さえた。


 カナは今にも暴れ出しそうな形相をしている。

 ここで騒ぎを起こすのはまずい。


「カナ。私、服より何か食べたい」

 私は彼女の腕を軽く引っ張った。

 ニナも元気よく乗っかる。

「食べ物? ニナ、甘いもの食べたーい!」


「あなた達がそう言うなら……」

 カナは渋々、店を出た。

 背後から愉快そうな「ありがとうございまーす」が聞こえてくるが、私達が振り返ることはなかった。


 屋台が並ぶ通りまで歩くと、ようやく少しずつ平民らしい人の姿も見かけるようになった。


 鮮やかな色をした瑞々しい果物や野菜。

 香ばしい匂いを漂わせる肉串。

 可愛らしく飾られたお菓子。


 美味しそうな食べ物が並び、ニナのテンションは一気に上がった。

「わあー、全部美味しそう! 何を食べようかなー」

 彼女はあっちこっちへ走り回り、屋台を素早く見て回った。


「逸れるわよー」

 カナが少し声を大きくして呼びかける。


 ニナは肉串を少し眺めた後、私達のところに戻ってきた。

「ニナね、甘いお菓子が食べたいの!」

 そう言って、飴菓子を並べた店までカナを引っ張っていく。


(さっき肉串を見てた気がするけど……本当に甘いものが食べたいのかな)

 小さな疑問はすぐに心の奥へしまい、私は二人の後を追った。


 一通り腹を満たした後、私達は雑貨屋に入った。


 どうして入ったかというと――

「ニナ、ニノにお土産を買いたい!」

 その一言で、私達はニナのプレゼント選びに付き合うことになったのだ。


「せっかくだから、リリィちゃんもカイに何か買わない? カイ、喜ぶと思うよ」

「うーん、考えておく」

 いつも荷物を持ってもらっているし、お礼に買ってもいい。

 でも彼は本当に喜ぶだろうか。


 そもそも、彼に懐かれた理由がまだよく分からない。


「カナは買わないの? サックスとかに」

 この一週間の旅で、カナとサックスが結構親しいのはなんとなく分かっていた。

「そうね。サックスだけプレゼントがないのもかわいそうだし、何か選ぼうかしら」


 ――では団長は可哀想ではないのか。

 そう思ったが、私から何かを贈るなんて絶対にない。

 彼も喜ばないだろう。むしろ気味悪がられる。


 私は店内に並ぶアクセサリーをざっと眺めた。


 視界の端に、ぬいぐるみを見つめるニナの姿が映る。

 彼女の顔から表情が消えていて、少し珍しかった。


(あれは熊……いや、犬?)

 緑色で、頭の上には耳らしきものがついている。

 どこか不格好で、奇妙なデザインのぬいぐるみだ。


「そのぬいぐるみが欲しいの?」

 私はさりげなく聞いてみた。


 私の声を聞いた瞬間、ニナはぱっと笑顔を作った。

 そしてそのぬいぐるみの隣に置いてあった、女の子の人形を抱き上げる。

「ううん! ニナはこっちのお人形さんが好き!」


 いつもの笑顔、いつもの声。

 それでも、さっきの無表情を見てしまった今――その笑顔がどこか嘘っぽく見える。


「……この人形がいいの?」

 確認するように、私はもう一度問いかけた。


 ニナは驚いたように目を見開いた。

「リリィ姉ちゃんは、この人形をかわいいと思わないの?」

「別に。どっちかというと、隣のぬいぐるみの方が面白いデザインだと思った」

 そう言って、私はその謎のぬいぐるみを持ち上げた。


 ニナは口を結び、微かに息を呑んだ。

 そして抱き上げていた人形をそっと置き、私の手からぬいぐるみを取った。


「……リリィ姉ちゃんが欲しいって言うなら、ニナはこっちにする!」

 そう言って、ぬいぐるみを抱えてカナの方へ走って行った。


(欲しいとまでは言ってないけど……。きっと言い訳が欲しいだけなんだろう)


 私は再びアクセサリーへ視線を戻した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ