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シャドウサーカス〜闇と光の出会い〜  作者: シン
First Show

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30/55

リリィの願い

 あの潜入から三日が経った。

 あの時、意識を失ったラヒルをカイに引き渡し、彼が倒したとウィルさんに説明するようお願いした。

 あの時のカイの目は、やけに熱を帯びていた気がしたが……たぶん気のせいだろう。


 暴走した使用人たちは、ほとんどが回復した。

 薬が足りなかった数人は、エルメさんの診療所へ運ぶよう手配した。


 幸い、暴走中の記憶は曖昧なようで、領主も屋敷内で起こった出来事に勘づくほど回復していなかった。

 そのため、あの夜の出来事は誰にも知られずに済んだ。


 もし当時、使用人を一人でも殺していたら、こうはいかなかっただろう。

 おそらくその点も考慮して、ウィルさんはサックスに刃物ではなく長棒を持たせていたのだと思う。


 後処理はサーカス側に任せ、私は朝早く、エルメさんが起きる前に診療所へ戻った。


 それからの三日間、私はエルメさんと共にアイリス服用者の診察を続けた。

 患者の数は日に日に減っていき、アイリスの影響も徐々に薄れていった。


 そして今日。

 ウィルさんからの手紙を受け取り、すべての診察を終えた後、私はサーカスへ向かった。


「リリィ様、いらっしゃいませ。どうぞお好きなところにおかけください」


 ウィルさんは相変わらずキラキラした笑顔で、私をテントの奥へ招いた。


 カイと出会ってから、何度も足を踏み入れた場所だ。

 だが今日は、カイとウィルだけではない。サーカスのメンバー全員が揃っていた。


 ウィルは定位置のソファに座り、カイは一番奥に立っている。

 相変わらず、こちらをじっと見ていた。


 双子のニナとニノは手をつないでウィルの隣に座り、

 サックスはウィルの背後に控え、

 カナはソファの背もたれに体を預けている。


 私は、いつも座っていたウィルさんと向かいの椅子に腰を下ろした。


「まずはお礼を申し上げたい。この度の任務は、あなたのおかげで滞りなく完遂することができました」

「こちらこそ、とても貴重な経験をさせていただきました」


 普段なら嫌味の応酬になるところだが、今回は違う。

 お世辞でも皮肉でもなく、本心からの言葉だった。


 私にとっても、アイリスを研究できたことは有意義だったし、

 例の()()()()()を回収できたのも大きな収穫だった。


 エルメさんの頭痛薬のレシピを最後まで再現できなかったのは心残りだが、

 これ以上深掘りしない方がいいだろう。


「さて。協力関係を持ち込んだ際に提示した、交換条件の答えを伺いたい」


 ウィルさんの条件はひとつ。

 無償で依頼を一件引き受けること。


 この一週間で、彼らの実力は十分に理解した。

 ウィルさんの胡散臭さはともかく、彼は優秀な策士だ。

 カイは機動力と対応力に優れ、

 カナは動物の扱いに長け、

 サックスは高い戦闘能力を持つ。

 双子の能力はまだ未知数だが、ショーを見る限り、相当な敏捷性がある。


 総じて、このサーカスは能力のバランスが取れている。

 ――彼らなら、私の目的を果たせるかもしれない。


「あなた方の実力を見込んで、依頼しましょう」


 私は一人ひとりの顔を見渡し、告げた。


「私を、このガナート帝国から連れ出しなさい」


 ウィルさんは真っ直ぐに私を見た。

「理由を伺っても?」

「理由は教えられません」


 無条件で依頼を引き受ける。

 それが、彼の提示した条件なのだから。


「承知いたしました」


 ウィルさんは立ち上がり、胸に手を当てて一礼する。


「我々、()()()()()()()()が、

 あなたの依頼、必ず完遂いたしましょう」

 

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