驚き、そして爆笑
テントの中が、まだそわそわとし始めた。
「カイ兄さんが喋った!」
「久しぶりに聞いた!」
最初に反応したのは双子だった。
(なんか、驚く方向が想像と違う……)
どうやらカイは、サーカスの中でも相当な寡黙らしい。
「カイが、自分から何かをやるって言ったの?!」
次に、カナが真っ当な驚き方をした。
「……珍しいですね。作戦に口出しするなんて」
ウィルも少なからず驚いたのか、目をかすかに見開いた。そしてすぐに、探るような視線をカイに向ける。
けれど当人は、他の人の言葉には目もくれず、終始私だけを見ていた。
(なんだか、出会ってからずっと意味深な視線を向けてくる)
ただ、今までの視線と違って、今回はかすかだけれど感情を感じた。
(私、彼に何かしただろうか)
いくら考えても、心当たりは見つからない。
カイからの返事を待つのを諦めたのか、ウィルはため息を吐いた。
「……いいでしょう。あなたが言うのであれば、リリィ様の参加を許可します。その代わり、カイはリリィ様の安全を最優先にすること。リリィ様は、きちんと手がかり探しに協力すること。いいですね」
圧をかけるように、ウィルさんは強い口調で私たちに告げた。
カナはまだどこか心配そうな表情だったが、反論を思いつかないのか、特に何も言わなかった。
サックスも戸惑いはありそうだったが、反対する素振りは見せない。
双子に至っては、どこか楽しそうに私たちの反応を観察している。
「わかった、約束する」
私は簡潔に答えた。
その後、集合時間や場所を手早く決め、最終リハーサルがあるからと、カイに私を送らせることになった。
――そういえば、ずっと疑問に思っていたことがある。
「本当に今さらだけど、聞いていい?
カイはリハーサルに参加しなくていいの?」
ウィルはすでに退室していたので、気兼ねなくカナに尋ねた。
この一週間近く、カイはずっと私についていた。リハーサルをする時間なんて、あったのだろうか。
すると私の問いに、カナはぷっと吹き出した。
「ぷっあはははは! カイに練習なんてさせたら、私たちいらないじゃん」
カナだけでなく、双子たちもおかしそうに笑う。
サックスだけが、どこか複雑そうに苦笑していた。
――なんとなく、カイのサーカス内での立ち位置がわかった気がした。
そして私はまだ、大人しくカイに抱えながら、診療所に帰った。




