私の実験/《カイ目線》
カイに案内されたテントの中には、大きなテーブルと何脚かの椅子が置かれていた。
私たちは早速、荷物をテーブルの上に置いた。
「カイさん、紙袋の中身を適当に並べてください」
カイは言われた通り、紙袋の中身を次々と出していく。
私も慎重に、持っていた四角い箱をテーブルの上に置いた。
道具は揃った。実験を始めるとしよう。
私は四角い箱の上に覆われていた布を取り除いた。
中には一匹の白鼠が入った籠があった。
本当は二匹欲しかったが、譲ってもらえたのはこの一匹だけだった。
「…………」
カイさんは無言で籠を見つめていた。
「気になりますか?」
その視線の意味を聞いてみる。
「……別に」
カイはすぐに視線を逸らした。
これ以上答えてくれる気はなさそうだ。
無理に聞き出すことはしない。
私は自分の実験に集中する。
栄養剤を少量、注射器に入れる。
「カイさん、お願いがあります。
ネズミを出しますので、抑えるのを手伝ってもらえますか」
「……わかった」
カイさんは籠のそばまで来た。
私が籠の入り口を開けると、ネズミはすぐに外へ出ようとする。
それをカイさんは素早く捉え、私に差し出した。
「なるべく、しっかり抑えていてくださいね」
私は慎重かつ手際よく、栄養剤をネズミに注射した。
「終わりました。ネズミを籠に戻してください」
カイさんがネズミを籠に戻すのを見届けてから、私は紙に実験記録を書き込んだ。
(栄養剤投入実験の準備は完了。
一時間ごとに様子を観察。
今日中に変化が見られなかった場合は、帰る前にもう一度投入。
それまでは栄養剤の成分を分析……)
すっかり実験に集中していた私は、
カイさんから向けられていた視線に気づくことはなかった。
――――
《カイ目線》
あの四角い箱の中に生き物が入っていることは、
彼女と会った瞬間から、すでに気づいていた。
微かだが、箱の中から走り回る音がしていたからだ。
彼女が籠をテーブルに置き、布を外したとき、
思わず目を奪われた。
籠の中にいた、かつての自分を思い出した。
ネズミへの注射を終えた彼女は、紙に何かを書き込んでいる。
そして、栄養剤の匂いを嗅いだり、他の液体と混ぜたりしていた。
実験に取り組む彼女は、驚くほど別人に見えた。
普段の彼女は冷静だが、
診療所の医師や知り合いに向ける視線には、柔らかさがある。
しかし今、目の前にいる彼女の目からは感情が抜け落ちていて、
異様なオーラを放っていた。
その目に、なんとなく、親しみを覚えた。




