協力関係
サーカスの団長から、協力関係を持ちかけられた。
見返りとして、こちらの依頼を一つ受けるという条件付きで。
正直、かなり悩んでいる。
町で起きている異変は気になるし、エルメさんの負担を減らす意味でも、事件は早く解決した方がいい。
けれど――彼らを信用していいのか、まだ判断がつかない。
「お話は理解しました。ただし、私はまだあなた方を信用していません」
「当然です。こちらとしても、すぐに信頼していただけるとは思っておりません」
ウィルは穏やかな声で続ける。
「これはあくまで、お互いの目的を達成するための互恵関係です」
その言い方が、少し引っかかった。
彼らの目的は聞いた。だが、私の目的については一言も話していないはずだ。
「……お互いの目的、ですか?」
ウィルは笑みを崩さず、私を見つめた。
「失礼ながら、少しあなたを調べさせていただきました。
一年前、突然この町に現れ、診療所を営むエルメ・シャノンに拾われ、助手として働き始めた。
過去の経歴は一切不明。
――ずいぶん訳ありのようですね」
胸の奥が、ひやりと冷えた。
相当、食えない男だ。
おそらく、彼らの事情を聞いてしまった瞬間から、私に本当の選択肢などなかったのだ。
それでもなお、こちらの意思を尊重するふりをする。
挙げ句の果てには、私の過去を材料にして圧をかけてくる。
「……わかりました。協力します。ただし、私の依頼内容は、あなた方の働きを見てから決めます」
「ええ。こちらも精一杯、あなたの信頼を得られるよう努めましょう」
(この男と、うまくやっていける気が一生しない)
「それでは、この栄養剤はあなたにお預けします。
また、カイは今日から監視役ではなく、護衛としてあなたにつけましょう」
ウィルは軽く視線を後ろへ向けた。
「彼は有能です。任務中の安全は保証しますよ」
「……ありがとうございます」
(カイさんの有能さは、ショーの時も、あの男と対峙した時も十分にわかっている。
正直、この人よりは信頼できる)
「話が終わったなら、帰ってもいいですか? こちらは連日、長時間労働の後なんです」
最後に、つい本音が漏れた。
「それは失礼しました。あなたからの報告、期待していますよ」
ウィルは最後まで、腹立たしいほど穏やかな笑顔を浮かべていた。




