第97話 二度寝から
「もう少し寝てみよう。俺がずっと抱きしめている」
「……ありがとうございます」
本当なら、気恥ずかしさが勝って断っていたでしょうが。
あの夢を見たあとでは、とても寝るだなんてできませんもの。
手を広げてくださったリデル様の腕の中に飛び込み、とても温かなぬくもりにはすぐにうっとりとなってしまった。
(優しい香り……とても良い匂いですわ。いつまでも閉じ込められていたいくらいに)
けど、ずっとでないことくらい……わたくしにもわかっておりますわ。
ジャディス国の封印を解き、穢れを祓いきり……あるべき姿に戻すこと。そして、王侯貴族や国民関係なく、魂も浄化しなくてはいけない。
元いた場所でしかなかった国を、わたくしの言祝ぎで正しく眠りを与えられるのか。
ひとりでないとわかっていましても、リデル様を必要以上に巻き込みたくはありません。
死した存在でしかなかった、わたくしを愛してくださるのはこの上なく嬉しゅうございますが……わたくしの替えはいくらでもいたでしょうに。都合で巻き込んでしまい、申し訳なく思ってしまいます。
(ですが。この腕の中に、いたい……ずっと、望んでいいのなら)
泣き止んだことで体力回復のために、意識が蕩けていく。
抱きしめてくださる、リデル様の腕が心地よくて、わたくしがジャディス国にとって……どれほど傲慢な生き方をしていたのかを溶かしてしまう優しさ。
リデル様のどこが凍てついた氷なのでしょう?
気づきにくいだけで、こんなにも愛おしい心配りをしてくださるお優しい方なのに。
わたくし……果報者と言うものでしょうか? もったいのないくらい、素晴らしい殿方に愛されているようですもの。
(……ああ、眠い)
蕩けてしなう意識が、二度寝を誘ってるようで気持ちがいい。
リデル様からも寝ようと言われていましたもの。このまま寝てしまえば、あの悪夢のような再会はもう起きないでしょうか? 元婚約者の言葉はともかくとして……お父様が出てきたら、問い詰めだけで終わらない気がします。
わたくしを、ジャディス国から逃すために。
封印に巻き込まれないように、なぜあの計画を立ててくださったのか。
聞きたいことは山ほどあったでしょうけれど……今度は本当にただただ眠気がやってきて、リデル様の腕の中で抱きしめられながら眠ってしまった。
再び意識が浮上した時には、リデル様のご尊顔が目の前にあったので叫びそうになるのを必死で堪えましたわ!?
(……美しい、御顔ですわ)
正真正銘の王子様ですし、お綺麗なのは当然と言えましょう。わたくしは、お姉様がおっしゃるにはお似合いの令嬢のようですけれど……穢れを抜いたせいでスッキリしている以外分かりませんの。
「……レティ。おはよう」
モニョモニョ考えているうちにリデル様がお目覚めになられたのですが。まだ抱きしめられているのをわたくし忘れていまして……リデル様が顔を寄せたかと思えば、朝からキスしていただけましたわ!?
これは恋人同士の甘々な展開ですのこと!?
次回は水曜日〜




