第84話 夢でしかなくとも(リデル視点)
レティの夢見が悪かったと、リーリルに聞きはしたが。
どうも、ただの夢ではなかったようだ。
現実味を帯びているそれは、レティ自身がジャディス国を封印したというものだそう。
だが、鮮明にそれを覚えているレティを宥めるのは俺しか出来ない。
本当はデートへ出かける日だったが、それは日を改めるくらいいくらでも出来る。今日はただの休暇日にすることにして、部屋でレティを抱きしめるだけにした。
方法はいくらでもあるだろうが、一番はこれではないかとベッドの上で抱きしめてやるだけにした。
涙は次第に落ち着いていても、心にダメージを負った傷はなかなか癒えないだろう。
この場合、どうすればいい? 女性の扱いにてんで慣れていない俺は……愛しい人に何と言葉をかけて慰めてあげればいいのやら、とディオスやライオスに聞きたいところだったがふたりともいない。特に、ライオスはセレストに帰還しているのでこのアーストにそもそもいないのだ。
「……申し訳、ございません」
しばらくして、レティが言葉をこぼした。俺に迷惑をかけたと思っているだろうが、そんなことはないと背を撫でてやった。これくらいのことしか出来ないのに、レティは顔を上げてくれたが涙目のまま笑顔になっていた。
「落ち着いたか?」
「……夢、のことですのに。わたくしには現実そのものと思ったのです」
「スキルの能力が桁違いの、君なら……それがあり得る過去だったと?」
「はい。ばかげているでしょうか?」
「そんなことはない。逆に、俺がその立場だったら……ひとりで抱えていたかもしれない」
話してくれたのは喜ばしいことだったが、内容が内容だ。簡単に口外しにくいものでしかない。今のところ、俺とリーリルにしか打ち明けていないらしいが……この夢の内容をクロノ様が知れば、『本当だよ』などと言われかねない。
でなければ、あの発言との繋がりが出来てしまいそうだからだ。そうだとしたら、レティは罪人となってしまう。
俺の愛しい人が、そんな罪を犯した張本人だと思いたくない。つい、俺は力を強くしてレティを抱きしめた。
「……リデル、様?」
「……大丈夫だ。レティが悪いわけがない」
「……ですが。封印に手を貸したのは、間違って」
「それは俺もだ。あのときに、穢れを飛ばしたのは俺自身だ」
「……すみません。忘れかけていましたわ」
「穢れを『汚れ』だと思っていたのなら、お互い様だ。俺も調子に乗りすぎた」
「……」
それ以上、お互いに何も言わず、ただただ抱きしめ合うしかなかった。どちらが悪いわけではない。しかし、神であるクロノ様からの言葉があることから、俺たちはジャディス国への封印に手をかけたことには変わりないのかもしれない。
あの国の情報が、変に操作されている可能性はあるにしろ。
レティの夢見が本当だったとしたら。
ジャディス国の封印解除を、繭殿がすべて終わってから向かわなくてはいけないのか。
その覚悟をしようとお互い頷くこととなった。
次回は月曜日〜




