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スキル『洗濯』の能無し悪役令嬢は、冷酷王太子殿下と虹染めに夢中〜無自覚溺愛に振り回されつつも、隣国は楽園です!〜  作者: 櫛田こころ


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第77話 記憶をいじられて

 絶望の底へと落とされたと思いましたのに。


『抜けた』感じがありましたの。


 ヤハル様たちとの会話で得た『情報』が耳にも頭にも残らず……毛束を食べ終えられたあとの会話がぐにゃりと歪めたかのように、わたくしの記憶には何も残りませんでしたわ。



(……なに、か……)



 大事なことを告げられたような気がしますのに。


 とても、恐ろしい事実を告げられたような気がしましたのに。


 わたくしの記憶から、しゅるりと抜け落ちたそれはどこかへと言ってしまいました。



『……む? 我々は今なにを?』

『……告げた、はずなのに。記憶がない』



 ヒューリ様も、口にした言葉が記憶から抜け落ちてしまったのでしょうか。わたくしに『何か』を告げられたことは覚えていらっしゃっても、肝心の『内容』については全然記憶にないそうです。


 どうして、わたくしたちは穢れを浄化したあとの会話を成立させていたのでしょうか?



「……とりあえず、ですが。我々は残るあとひとつの繭殿の浄化を成せばいいのでしょうか?」



 ひとり、黙っていらっしゃったリデル様が問いかけられると、ヤハル様は考えられていましたが……少しして、頷かれましたの。



『そうじゃな。今日明日とは言わん。無理せずに、南の方へ行ってくれんか?』

『……穢れは、まだどこもかしこも多いけど。繭殿を軸にしていた邪気はきちんと祓えている』

「承知しました。レティ、今日は帰ろう? 疲れてないかい?」

「あ、いえ……大丈夫ですが」



 違和感を抱いたままの、わたくしが最後の繭殿に出向いても……きちんとスキルを発揮できずに穢れを移せないでしょう。


 そのことをリデル様もお見通しなのか、『帰ろう』ともう一度おっしゃってからお二方には別れの挨拶をされました。



『繭殿がすべて浄化が完了したあとの……本来の姿に戻るまでの経緯は、我々でも想像がつかない。そこは慎重にしりゃれ』

「わかりました」

「……わかりましたわ」

『……ありがと。穢れを抜いてくれて』



 最後に、ヒューリ様がわたくしの方に来られ、肩を軽く叩いてくださいましたわ。冷たい手でしたが、氷のようでないそれは優しくて気持ちが良いものだと思いましたの。


 その心地よさに、もやもやしていた気持ちが少し薄らいだ気がしましたわ。



「いいえ。わたくしは成せることをしたまで」

『けど。無理はしないで』

「はい」



 今度こそ、繭殿から離れて転移方陣へと向かい。お城へと戻りましたら……緊張が解けたのか、また空腹の合図が出てしまいましたの!!?



「……くく。今回も結構な魔力を使ったからな?」

「……大変見苦しいところを」

「そんなことはない。レティの素直な個所がすぐわかる証拠だ」

「はぅ……」



 なので、陛下に報告をしたあと……食堂ではなく、お庭の方に向かい。リデル様がまたホットドックとかを作ってくださいましたわ。


 本当に、肉とパンだけですのに。変に味付けせずとも美味しゅうございますの。毎回毎回美味しいですわ!!


 その美味しさに少し心を癒され……またもやもやした気持ちが蕩けていくようでした。


次回は金曜日〜

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