第62話 気分転換に少し
「姫様? 気分が優れませんか?」
朝寝坊してしまったこともですけれど、ぼーっとしているのにリーリルお姉様から心配の言葉をかけられてしまいましたわ。
なんでもありません、と今更言えませんし。夢のことであれ、ジャディス国のことをあまり話したくはありませんもの。
「少し、お寝坊したからでしょうか?」
「お風呂でさっぱりされますか?」
「よろしいですの?」
お姉様はわたくしの言いたくないことを察してくださったのか、違う提案をしてくださいましたわ。朝からお風呂……魅力的な提案に頷き、せっかくなのでスキルを使わずにメイドの方々にお願いして隅々まで髪を洗っていただきました。
髪を魔法で乾かし、少しほっとしながら部屋へ戻ったのですが。
お部屋の中が、まるで虹色になったかのようにたくさんの糸束が用意されていましたわ?
「明日は殿下とのデートですし。おでかけとは別に気分転換なさいませんか?」
「糸束で?」
「姫様は組紐はご存じでしょうか?」
「くみひも?」
「糸束をほぐさずに、ブレスレットや髪紐のように編んで作る手法です」
「……それを、わたくしが?」
「殿下は髪紐を身に着けるには短い御髪ですので。ブレスレットを作ってみませんか?」
「……プレゼントに?」
「はい。どうでしょう?」
「素晴らしいですわ!!」
いつもいつも、お世話になってばかりのわたくしが……リデル様になにか贈り物を作ることが出来るかもしれない。それでしたら、暇つぶし以上の有意義な時間を堪能することが出来ます!!
わたくしの承諾に、お姉様はまず色を選ぶところから教えていただきました。出来るだけ、同じ系統の色から少しずつ色を足していく方法で作っていくことになりましたの。
「どのお色にしましょうか?」
「……青、と緑が良いと思うのですが」
「まあ、素敵。きっとお喜びになられるでしょう」
「初心者ですので、失敗しそうですけど」
「それもまた、可愛らしい欠点ですわ」
「そうでしょうか?」
お姉様もせっかくだからと、手本も兼ねてお兄様への組紐を作られるそうです。紫から赤へと情熱的なお色ですわ。お世話好きなお兄様にはお似合いだと思いますの。
少し糸束を片付けたあとは、専用の台座を使って組んでいく紐をひっかけ……慎重に編んでいく。単調な組み方からですが、糸束がほどけないように気を付けて編んでいくのはなかなか楽しいですし、無心になれますわ。
あの夢をあまり、思い出せないくらいに熱中出来ましたの。
「飲み込みが早いと思っておりましたが。姫様、そのあたりで一度止めてください。ブレスレットでしたら、そこからベルト部分を編んでいきましょう」
「あら、もう?」
ささっと編んでいたつもりはありませんでしたが、どうやらお姉様が想像していたよりも早く編みあがってしまった組紐。青から緑への移り変わりが美しく、リデル様に喜んでいただけるか無心で作ってしまいましたが。
ベルトの部分も然程難しくなかったので、せっかくだからとわたくしの分も編んでみることにしました。ピンクから水色の可愛らしいブレスレットになったので……少し、おそろいですわとこっそり思いましたの。
明日、リデル様にお渡ししますが……本当に、喜んでいただけるでしょうか? 少し不安ですが、お姉様からお墨付きをいただきましたので大丈夫のはずですわ。
次回は金曜日〜




