第58話 レイシアを考えて②(リーリル視点)
姫様はお優しい。優しさが当たり前だと思い込んでいる節があり、それをとても謙虚にされているのが不思議なくらい。
祖国であるとされる『ジャディス国』については、現在国交を取るどころではない事態なのはこちらも把握済み。クロノ様が封印なされたことは王族と一部の貴族には伝わっているけれど……姫様のご家族は、もう無事ではない。あくまで、そこは予想だけども。
『イリス=アースト』の王太子がわざわざ婚約パーティーで令嬢をかっさらう真似をされてしまった。この事実で、爵位が曲がりなりにも『公爵』の家柄であれば……末娘の養育者の管理が整っていない上に、国交としてもこれは由々しき問題。姫様自身ではなく、『元』婚約者の方ですけれど。
(仮にも『公爵令嬢』を婚約破棄だなんて……立場上、おかしく思わないのかしら? 姫様のようなご令嬢が卑下されるなどあり得ない)
まだお会いして十日かそこらの私にでもわかる。少し子どものような口調以外は『仕事熱心』が前に出る以外……姫様はとてもお優しいご令嬢だ。そして今は、我らの仕える王太子殿下のリデル様への好意が芽生えたばかり。
ご自身の美貌に自覚のない者同士の婚礼……素晴らしい!!ことだわ。姫様も何かしらの穢れを受けていた可能性があったため、お風呂で磨くたびにお美しくなられていく。そのあとの姿を確認するたびに、リデル様がはっとされる表情……近しい身内の者として、私はそんな激変とも言える表情を見たことがないと言うのに!!
お互い想い合っていらっしゃるというのに、自制なさるのが歯がゆいというか……むしろ、初々しく感じます。『呪いのイリス』と謳われてしまう王太子の立場で、表情など幼い頃から殺す傾向のあった殿下が!! 姫様に関しては、蕩けるような『それ』を惜しみなく見せますもの。
つい先ほどの、『デートの申し込み』も完璧でしたが……半分は、我が愛しのディルス様にでも教わったのでしょう。悔しいですが、女性に聞き込み調査をされることもあるあの方の口説き文句は星の数ほどありますから……。
(……デート。ピクニックと、殿下はおっしゃっていたけれど)
街で買い物に行くと、殿下は顔バレしているから目立つ。そこに姫様が加わると、変な噂が立つかもしれないので正式なお披露目まで保留はいい判断。もしくは、単に街の男に見せたくないだけでしょうね? 独占欲丸出しなのは見ていてわかるから……そこはそう思っておきましょう。
ピクニックとなると、遠駆けで……お弁当はご用意以外は、いつものような? それもまたいつもと変わりないような気がするも、姫様が気負わずに過ごせるのなら……いいのかしら??
(触れ合いはまだしも、せめてきちんとお互いの気持ちを言い合える仲まで動けば良いのだけれど……)
こればかりは、殿下がうまくリードしなければ進まないでしょうね? 姫様はまだどうも、自分は『契約結婚』させられるために『雇われた』という感覚が抜けきっていないもの。殿下、頑張ってください。あとわかっていないのは、当事者の姫様だけですから!!
次回は水曜日〜




