第53話 恋への目標
今日は、別の繭殿を浄化するお仕事ですが。
昨晩、リーリルお姉様へ相談したことで……わたくしの中に芽生えた『感情』をどうするかについてですが。わたくし、ひとつ決めたことがありますの!!
(お姉様のように、立派な淑女になるだけでなく……自分なりに、リデル様のお隣に立てるくらいの王太子妃を目指しますわ!!)
恋心ももちろん大事ですけれど、わたくしの今の立場は王太子の婚約者。
その立場に相応しい英才教育を今後受けることになりますもの。気合を入れて、打ち込まねばなりませんわ!! 感情も大事ですが、周囲の環境も整えないといけませんもの。
(……ですが。わたくしが、恋……心、だなんて!!)
朝起きてから、身支度をメイドに手伝っていただきながら……考えてしまうのは、リデル様のことばかり!!
麗しいご尊顔。
艶やかな御髪。
手はわたくしのスキルで綺麗になられ、殿方らしい大きな手でわたくしの頭を良く撫でてくださいます。
身体つきは……じっくりは見ていませんが、薄着のときはディルスお兄様ほどではなくともがっちりしていると思いますの。あの方に、アースト国へ連れて行かれるとき……抱っこされたんですわ!!
思い出しただけでも、恥ずかしい以上に嬉しい感情を持て余しそうで大変ですの!! 契約とはいえ、王太子妃に望まれたのは……嬉しゅうございます。
しかし、それ以上を求めてもよいのでしょうか? わたくしの、気持ち……というものを優先しても。
ですが、お互いに好き合うことで……たとえば、お兄様がお姉様に施された口移しみたいなことはしていただきたいです。救急処置といえど、好きな殿方にしていただきたいですもの。そこは、出来る限りですけれど。
「姫様。ご準備整いました」
「ありがとう」
基本的に少し変わった敬語を使うわたくしですけれど、使用人には目上のものとして口調を崩さなくてはいけない。王太子妃になるのなら尚更。これは、リーリルお姉様からのご助言ですけれど。
「おはよう、レティ」
食道へ向かうお迎えに、わざわざリデル様がいらっしゃってくださるのも……慣れたと思っておりましたが、お慕いしていると自覚するとご尊顔を直視できないと思いましたの!! できるだけ、目線を少し……と、ずらしましたが、何故?と思い直して、元に戻しました。
正装ではない軽装ともいうべき身なりですけれど……まぶしいほどにお似合いですわ。この方をお慕いしてよいのですと、お姉様はおっしゃっていましたが……本当に、よいのか向かい合うと自信が少し弱くなります。朝起きた時はあんなにも意気込んでいたのに。
恋という感情は、気持ちを強く持てると同時に少し臆病にもなってしまうのですね? はじめての経験だらけで、わたくし……もっと精進しますわ!!
「おはようございます。リデル様」
ですが、リデル様にご心配をおかけしてはいけませんので、出来るだけ笑顔でご挨拶させていただいたのですが……少し首を傾げられ、わたくしとの間合いを詰めましたの。
「大丈夫か? 顔色が少し、青い」
「そ、そうでしょうか??」
「……今は赤いが、熱でも?」
「ありませんわ!! その……お腹が空いたかもしれなく」
「ふ。レティの腹は正直者だからな?」
いつも空腹なのは、スキルを使っていたためです!! これではお仕事以外は食べ盛りの娘と思われるのは少々恥ずかしいですが……顔を離していただけたので、よしとしましょう。実際、少しばかり空腹だったので、今回はそういうことにしますわ!!
ですが、リデル様の隣に並んで歩く位置はちゃんと確保しましてよ? このような小娘が婚約者だとしても、相応しいレディになれるように頑張りますわ!!
次回は金曜日〜




