第51話 募る想いは
お仕事のひとつは、無事に終えることが出来ましたわ。お兄様たちからの、ご褒美には本当に甘えてしまいましたけれど……何故でしょうか、少し『足りない』と感じましたの。
ご飯が美味しくないわけではありませんわ。それはそれは美味しゅうございました。
ですが、いつもリデル様がご褒美に……と、作っていただくのが多かったので、きっとそれかもしれません。王太子殿下であれ、リデル様はとても器用にご飯をつくってくださいますもの。わたくしも、少しずつ出来るようにならなくては。
契約とはいえど、リデル様の妻になる身として。
と意気込んだのはいいのですが、胸の奥が少しもやっとしましたの。わたくし、お仕事のためにアースト国へ来たはずですのに……リデル様とごいっしょするのが楽しく思っているのに、今気づきましたわ。
「……そうですわ。リデル様とお仕事をしたり、ご飯をつくるのが楽しくて」
これはどういう感情なのでしょう?
仕事への意気込みなどではありませんわ。もう少し、違うなにかだというのはわかりますが。ここはひとつ、リーリルお姉様にご相談に乗っていただきましょう。ベルでメイドを一人呼び、お姉様を呼んでもらいました。
「姫様。なにかお困りごとでも?」
穢れを内側から出すことが出来たお姉様は、やはり輝かしいほどのお美しさ。それはさておき、わたくしが持つ疑問を相談しなくてはいけませんわ。これは、いきなり殿方のリデル様へご相談というわけにはいきませんもの。
「その……ひとつ、気になることが」
「はい」
「……いけないことかもしれませんが。リデル様とごいっしょしていると、もやもやするのです」
「もやもや? 胸の奥が、とかでしょうか?」
「はい。何故か……ですが」
ご尊顔も、お料理の腕前もなにもかも。
素晴らしい殿方とは存じておりますのに。ごいっしょしていて、ほかの方々と語らうのを見ていると……わたくしの胸の奥がもやもやしますの。それを正直にお姉様へお伝えすると、何故か手を掴まれてしまいました?
「姫様! それはよいことです!」
「……いけないことではありませんの?」
「喜ばしいことです。姫様は殿下をお好きだと自覚されかけていたのですよ」
「……尊敬はしておりますわ」
「そうではなく。……まだ未熟な個所もありますが。殿下のことを『愛そうと』していませんか? 寄り添いたいという感じから」
「よ、寄り添う??」
「隣にいたい。手を繋ぎたい。……少し欲張ると口づけてほしいとか思いませんか?」
「えぇえええ!?」
さすがに、最後のはやり過ぎでは……と思ったものの。リデル様から口づけていただくことになれば、拒まないという想像ができるくらいに……わたくし、リデル様をお好きでしたの??
ぽ、ぽ、ぽっと顔が熱くなる感じがしてきますと、リーリルお姉様はさらに手をぎゅっと掴んでくださいました。
「良いことですわ。ですが、今のままだとまだ蕾がほころぶかどうかの淡い想いに近いです。もう少し、様子見を致しましょう。殿下は殿下で、おそらく大丈夫です」
「……大丈夫?でしょうか??」
「むしろ、姫様優先ですわ。明日以降も、また別の繭殿へ向かわなくてはいけませんから……これから、たっぷりお風呂で磨きましょう!! ご無理なければ、スキルを存分に使いましょうか?」
「……そうですね。穢れには触れましたから」
「あ、いえ。……それもそうですが。殿下に身綺麗な格好を見ていただけるのはよいことでは?」
「! そうですね! それはその通りですわ!!」
やはり、わたくしはまだまだ未熟な淑女のままですわ。殿方に好いていただける身だしなみを整えない、薄汚れた女のままではいけません!! お姉様にもお手伝いいただき、夕ご飯の前にお風呂で存分に穢れを落としたのですが……。
「……繭殿でまたさらに、穢れが出たのですね」
「美しいですけれど……これは」
念のために、と穢れで染め上げた布は真っ白だったはずが青い生地に虹の雨という柄に染まりましたの。
次回は月曜日〜




