茜の秘密
茜はそういうと、さっさと書類を加奈子たちに渡した。
「そっか。植田 加奈子。あなたの入部書類もまだ出してないね。じゃぁ、いい機会だわ。
一緒に学部長の所へゆきましょう。私も大学事務局に用事あるし。」
そういうと、茜はしばらく部室の中を見渡しながら、掃除を始めた。
「書類書けた?」
はい。私たち2人は答えた。
なんか緊張する。
「二人はさ、今まで登山とか、あんまりやったことないんでしょ?」
え、なんでばれちゃったんだろう。
「はい、私、加奈子ちゃんが誘ってくれたので、どこでもよくて。それに先輩たちがめちゃかっこよくて。へへへ。」
ちょっと、紀代~。
「やっぱりね。いいよ。私が登山の魅力、教えてあげる。それに、今どき、山岳部とか流行らないしね。みんな山ガールとか言って、ピクニック感覚で山に登るのがファッションになってるし。」
そんな軽いつもりで山岳部に入ったわけじゃないんです。なんか、自分を変えたくて!
「そうなんです!私も大学に入って、地味な私から脱却したくて!」
え?紀代が地味?どこが?しかも、やたら都会的でファッションセンス良くて、コミュニケーション能力高そうなあなたが、地味?
「そうね、二人とも、田舎の匂いするものね。加奈子ちゃんは北関東。紀代ちゃんは、九州?」
そうです!
私たち二人は同時に答えた。なんで、わかったの?
「私さ、去年、一年大学を休学してて、本当は3年生なんだけど、ワーホリでカナダ行ってたんだ。」
ワーホリ?
茜先輩は私の疑問には答えず、自分の話をし始めた。
それによると、茜先輩は、1年生の時に派閥闘争のように分裂した山岳部のメンバーに嫌気がして、
カナダへ行くことを決めたらしい。山に登るのにお金がかかるので、一度働いてお金を貯めなきゃというのも理由だったし、語学力(英語、仏語の習得)もブラッシュアップできそうだったので、1年間限定でワーキングホリデーを選んだらしい。
「それにさ、デナリに登るのが私の夢でさ。カナダは近いからね。」
デナリ???
デナリって何? エナリ?