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母の動画

洋子はまたパソコンを開いた。


今まで読んだことがない文章があるかどうか祈った。


フォルダを開く


あった!


でも、それは動画ファイルだった。


ファイル名は ”洋子へ”


ドキドキした。


加奈は隣の部屋でまだ起きてるようだ。


取材の録音したものを聞いて編集しているようだ。


洋子はイヤホンを耳に着ける。


ファイルをクリックした。


動画が再生された。


母の顔が出てきた。


「洋子、久しぶりね。この動画にやっとたどりついたのね。これはAIでがないの。合成はされてないわ。今写っているのは、私がこの世からお別れする前に撮った映像よ」


最近は個人の声や顔をAIが使って、まるで幽霊が降臨したかのようにしゃべるものが一般化されてきたけど、母はそういうのは嫌いだからやめてねと、生前から言っていた。


だから、この動画は本物なのかもしれない。AI分析ソフトも加工なしとの字幕が表示されて入る。今までもそうだったが、母が残したものに、一切の手が加えられていないのは確かっだった。


「おかぁさん」


私は思わず、涙を流してしまった。


「洋子、ごめんね。こんなに早くあなたとお別れの時が来ることを。でもね、私はこの世にいなくなっても、向こうの世界で元気でいるから。そしていつかまた、あなたに会える。それまで、あなたはあなたで、生きてください」


すると、映像が切り替わった。


雪を抱いた山の映像が現れた。


「どこの山だろう?」


「ここは、大雪山。アイヌ人が神の山と称した山」


「神の山?」


「そうよ、神とは、アイヌ語で、ヒグマのこと」


「ひぐま?が神様なの?」


「アイヌ語でカムイ。アイヌ人は熊を大切に扱っていた。それを和人がやってきて、アイヌを奴隷にして、ヒグマを鉄砲で打った」


「そんなひどいことを」


洋子は気が付いていた。

自分の疑問を思い浮かべると、それを聞いたかのように母が答える。


「おかぁさん、どこかで私の声が聞こえてるのね。」


「そうよ。私はあなたのそばにずっといる。パソコンも操作できるの」


「本当に!」


「でも、今夜が最後よ。私はどうしても茜さんに伝えたいことがある。でも、洋子にしかこうして言えないの。だからあなたを通して、今までメッセージを送ってきた。そしてあなたは実際に茜さんに会えた。今日、私もあの旅館にいたの。全部見てたわ。」


「本当?」


洋子はわかっていた。実は。


母の匂いを感じたのである。


でも、それは最初は茜さんの匂いかと思っていた。


どこか懐かしい匂い。


「そう似ているのよ。だって茜さんは前世では私の母。ツインソウルなの。長い間、転生を繰り返して、出会ったの。今世も。」


映像が、また変わってゆく。


日本の川? 


「あ、かわうそ!」


かわうそが泳いでいる。口に魚をくわえている。そして巣の中へ入った。その魚をメスにあげていた。メスのお腹には、乳に吸い付く小さな赤ちゃんが何匹もいた。


「これって?どこかの動物園かしら?」


「このカワウソは二ホンカワウソ。1979年を最後に姿が消えたの。日本中の川にいたのに。そして2012年、絶滅宣言がされた。かつて北海道を開拓するためにオオカミを害獣として絶滅させ、コウノトリの絶滅させた。」


「ほんとうに残念なことだわ。でも今は遺伝子技術で復活したものいる」


「そうね、でも、次に絶滅するのは人間かもしれない。人間が滅んでしまえば、誰が人間を復活させるの?」


あまりにも難しい話に私は何も言えなくなってしまった。


「ごめん、洋子。人間が絶滅するかしないかは、今後にかかっているの。私も茜さんも、そのことを痛感して今ままで活動してきた。この地球を守るため。そして人間を絶滅させないため」



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