政府の敵
「加奈さんがヤギのミルクダメって知らなかったわ」
「だめってわけじゃないのですが、その匂いが。でも、このミルクはくさみないですね!」
「そうね、私たちはあまりにも加工されたミルクに慣らされて、本当のミルクに出会ってないのかもしれないわね。私の親もよく言ったわ。キュウリもトマトも昔はこんなものではなかった。もっと臭くて食べるのつらかったって。今のトマトは果物みたいだって。よくね。」
確かに私の母もいってた。だから畑を借りて、自家栽培して、昔の味になんとかならないかってやってたわ。私はだから母の作った野菜は美味しくなかった。
「加奈子さん偉いわよね。娘さんの為に野菜を自分で作っって。」
確かにそうだ。私が子供の頃、お米が急に2倍になったって母が嘆いていた。
群馬に引っ越ししてからは農家さんとも仲良くなり、積極的に農業のお手伝いをしてたな。私もよく手伝わされた。無農薬の野菜やお米を道の駅で即売会やって。でも、あんなに健康に気を使っていても、ガンからは逃れられなかったな。
「ガンは確かに環境汚染というのも一因だけど、それだけじゃないの。面積不全が一番大きいの。」
免疫不全?
「あの時、そうメガソーラーが出現して新型コロナが猛威を振るったあの2020年以降。世界中の人たちが強制的にワクチンを打たされたの。今では馬鹿みたいだけど、コロナにかからないって大宣伝して。でもその後いつの間にかコロナに感染しないという文言は消えて、コロナで重症化しないっていう文言にすり替えられた。福島の原発爆発の時の同じ。メルトダウンしてたのに、それを発言した人はテレビから消えて、炉心溶融という言葉で統一されていた。10年以上たってから、あれはメルトダウンでしたって言ってたけど。」
加奈が気まずそうに言った。
「すいません、茜さん、これはオフレコとして聞いておきます。雑誌の記事として、もしかしたらふさわしくないものになってしまいそうなので」
「あ、ごめんなさい。昔の話なのにね。エキサイトしてしまったわ。だから私はダメなんだわ。ふふふ」
茜さんの何がダメなんだろう?こんなに大事な話なのに。
「洋子さん、あなたのお母さんも戦っていたの。政府やマスコミと。作家になったのも、真実を伝えるためだったと思う。でも、加奈子さんは私とは違うやり方で戦っていたわね。私はダメ。ホントの事言いすぎて、マスコミから総すかん。政府からも要注意人物扱いよ。だから私は山で隠遁生活のようなことを始めたわ。ヒマラヤやチベットに行ったのも、それが原因。」
そんな歴史があったのか。だから母は、茜さんのこと言わなかったのか。
ようやっと霧が晴れてきたような気がしてきた。
「でも、あの時が転機かな」
「なんですか?」
加奈が首を長くして、前のめりになった。
「野口君との再会ね。彼、ヒマラヤに会いに来たの」
「わ、元カレですよね?野口さんとの結婚、聞かせてください!」
加奈の目がキラキラしてる。
「野口君ね、確かに元カレだった。でも加奈子ちゃんとお付き合いして、結局、ふられて、私とまた付き合いたいって言ってきたんだけど、私は一人で痛かったの。それから色々あって、互い10年以上会ってなかったんだけど、突然、私の前に現われたの。ヒマラヤで生きてる私の噂を聞いて。
「わ、それって10年愛? ロマンテッィク~!」
「ふふふ、そんなんじゃないわ。彼も私もお互い年をとっていて、結婚なんてするとは思わなかったの。だってあの人は既婚者だったし、私は独身貴族。今さら感ばりばり」
「それって不倫になるんじゃ。わわわ。」
「ちょっと待って。その時は付き合ってないわ。彼は私の消息を調べていたのよ。彼、政府の回しものになっててさ。でも彼は私を守ってくれた。そして私はヒマラヤを出て、スイスへ向かった。そのころよ、彼と結婚したのは」
「えーやっぱり野口さんは昔から茜さん一筋だったのでは?というkとは20年愛?!!!」
「ううん、30年愛だって。彼が言うには。初恋も私だったんだって。幼稚園の時、同じクラスだったのよ。私、覚えてないんだけどね。ふふふ」
茜さんは、野口さんの話になると、とても表情が優しくなる。
「でも、その夫である野口健太郎さんが遭難されてからは大変なご苦労があったと思うのですけど。すいません、大変つらいことを聞いてしまって」
「いいのよ。私のライフワークを支えてくれたのが彼よ。どっちが遭難してもおかしくないほど、お互いに危険な山を登っていた。でも怖くなかったの。仮に死んだとしても、それは肉体の死であって、魂が死んだわけではないから。私はヒマラヤで過ごしてわかったの。加奈子さんは東日本大震災でわかったみたいね。すごいわね。彼女は見えていた。前世も未来世も。」
「未来生?って自分が次に生まれ変わる人生がですか?」
加奈は驚いていた。私も驚いた。そういえば、母の日記にも、未来生は書いてなかった。
「そうね、彼女は見えた。私はヒマラヤであるヨギに出会い、彼女に前世などを見せられたの。でも、未来世まで見せられなかった。ヨギは今は必要ないからって。今が大事なのだから、今を生きなさいって」
でも、母は未来世まで見えていたのか?
もしかして、母もヒマラヤに来たけど、同じヨギなのかもしれない。
そこでは、未来世を見たのかもしれない。
「加奈子さん、来たわよ。私の後にね。彼女はそこで未来世も見たって。でも、それがどんなものなのかは教えてくれなかった。たぶん、自分の中だけのものにしたかったのね。」
「実は私、母の残した日記を読んでいるんです。だから茜さんのことも、あんだか他人のような気がしなくて、今日も、ずっと、そのなんですか、日記にはない、わからなかったことを聞きたいと思い、ここに来たんです。」
「知ってるわ。みんな加奈子ちゃんに聞いてるわ。いつか私の娘が会いに来るから、その時はよろしくねって。彼女、私の事、どこまで書いてるのかしら」
私は、今までの日記で知ったことを伝えた。
そしてその日記が不思議なことに、どんどん増えたり、改訂されていたりしてることも。
「不思議ね。でもヒマラヤの修行僧から聞いたことあるわ。似たような話。仏教の経典が、見るたびに違ってるって。その人の修行レベルによって、中身が変わるらしいの。私は修行僧ではないから、その経典は見たことはないけど。」
「じゃぁ、加奈子さんは、それと同じ原理で日記を書いた?確かに出来ないわけではないですよね。実際に似たアプリあるわけだし」
でも私はテキストだけのフォルダをコピーして持ち帰った。
私のパソコンは、そんなアプリを入れてない。
不思議な日記だ。まるで母の意思が働いてるような・・。
「加奈子さんがどういうカラクリを使ったか私にもわからない。でも現実としてあるわけだから、それを洋子さんへの贈り物として作ったのは事実ね。そして加奈子ちゃんが言った通り、私は洋子さんと会えた。あ、加奈ちゃんともね。高校生以来よね。あんまり顔が変わってないから、年齢わすれちゃったけど、今幾つなの?」
「あ、もう29歳です!・
「えー若い!まだ制服に会うわよ!その肌!」
「えへへ、そうですか?JKまだできますかねー?」
会話があちこち脱線してしまったが、女子会のようで楽しかった。
私たちは、茜さんの病気のこともあり、取材は一旦、ここで打ち切った。
また次の日の約束をして、ホテルに戻った。
そして、私はまた母の日記を読んだ。




