島になっていた熱海
私はついにリアル佐々木加奈と出会うことが出来た。
リアルな駅の中にあるカフェだった。
リニアは大宮から長野。そしてそこから箱根へローカル電車に乗り、熱海まではバスとなる。
かつての港はなくなり、山沿いの町が今の熱海となっている。
温泉は今でも沢山あり、茜さんはそこで長期の湯治をしているという。
「なんか初めて会った気がしませんね。バーチャルリアリティのおかげで」
「そうね、加奈さんは思ったより小柄で少し印象が違ったけど」
「顔の加工はしないんですけど、身長はサバ読みました!えへ」
ペロッと舌を出す加奈ちゃんは、未だに女子高生に見えるぐらい肌が若かった。
むしろ私の方が肌の加工をしていたぐらいだから、リアルな顔を見せるのが恥ずかしい。もちろん、厚化粧してばれないようにしてきたけど」
「いよいよですね。茜さんに会うのは」
「そうね。茜さんは電話のみで、お顔はわからない。もしかしたら超アナログ女性なのかも。でも、そこが茜さんらしいけど」
リニアはあっという間に長野駅についてしまった。
ここで伊豆方面へと向かう電車に乗り換え、箱根でバスに乗り換えた。
もう箱根から海が見えるほど、海面の上昇は進んでいた。
「もしかしたらあと数年以内に熱海も消滅してしまうかもしれないって」
加奈が寂しそうに、バスの外の風景を見ながら言った。
小田原は既に水没しており、箱根の山の麓からは水上バスを使う。
熱海はもう島なのだ。
「なんか昔は東京から直接、新幹線で来れたらしいわ。今は遠いわね」
私はこの20年間で水没した都市があまりにも遠く、人々が内陸へ内陸へと移住してゆくのを見てきた。母の住まい、つまり私の実家だが、群馬の山間だったので、水没は逃れたが、移住者が増えて社会問題になっていた。
「まもなく熱海港、熱海港です。終点です」
アナウンスが流れた。
島と言っても、かつては山だったところ。
太平洋が広がる伊豆半島は、ところどころ水没しながらも、半島の面影を残していた。
「着いたわね。加奈さん、まずはホテルにチェックインしましょう。そこで落ち着いたら明日の取材の為の準備ね。」
「そうですネ。ただ私、せかっくだから、島めぐりをしてもいいですか?」
「今から?」
さすがに若い。私は旅の疲れで一刻も早く、ベッドで寝たい。
「ホテルに荷物を置いたら、ちょっと小一時間ほど歩いてきます!」
加奈はそう言うと、チェックインしたら、部屋にも行かずそそくさとホテルを出て行ってしまった。
私は部屋に入り、お茶を飲んだ。
和風の佇まいの部屋に、なにか実家に帰ってきたような気がした。
私の母は和室が好きで、あえて古民家風にしていたぐらいだったから、このホテルの作りも懐かしかった。
私は加奈ちゃんが帰ってくるまで、ベッドで寝てしまっていた。




