熱海で邂逅
「もしもし、突然のお電話すいません。私、茜、野口茜です。旧姓は溝口茜。加奈子さんとは大学時代からのお付き合いしております。失礼ですが、洋子様ですか?」
「あの、私、洋子です。失礼ですが、以前、浜松茜という名前でお電話されたと思うのですが・・。」
「すいません、あの時は偽名を使ていました。失礼しました。今は野口が本当の名前です。私は、加奈子さんと実はずっと連絡を取り合っていました。野口姓は秘密でいたかったので、偽名を使っていました」
「それは、野口茜という名前で検索されると個人情報がばれるからですか?」
「それもあります。今の私が何をしているのかすぐわかってしまうので、あえて伏せることにしていました。でも、やはり故人の娘さんにまで偽名を使うこともないと、その後悩みました。そこへ佐々木加奈さんと連絡がとれ、是非、電話をし、誤解を解いたほうがいいとアドバイスされました」
「今、熱海なのですよね。是非とも会いたいです。茜さんに。電話だと色々あるだろうし、母のことで知りたいことがいっぱいあるんです!」
「わかりました。実は今、私はガンを療養中で、熱海の温泉に湯治に来ています。体力的には問題ないのですが、熱海まで来ていただければいつでもお会いします。そして加奈子さんのこともすべてお話します」
「ありがとうございます!」
そういって、私は熱海で会う約束をした。
茜さんには輪廻転生の事は言わなかった。
それにしても茜さんが、ガン?
熱海に湯治?
母の日記の中で、まだまだ20代前半の茜さんのイメージだが、あれから40年以上が経っていた。これから会う茜さんは、私が知っているイメージから40年経過しているのだ。
私は、スイス行きで思い描いていた旅程を、急遽、熱海に変えざるを得なかった。




