新人部員勧誘
私は翌日から新人スカウトの為に、キャンパスのあちこちで勧誘を試みた。
といっても、生来の引っ込み思案。声掛けなんてなかなかできない。
ましてや男子に声掛けは無理!
そんな時、同じゼミになった、山口紀代から声をかけられた。
「ハロー!加奈子ちゃん!ここで逢ったが100年目!何食べてるの~?」
明らかに私とは正反対の性格の女性。誰とでも仲良くできる性格が羨ましい。
あ、まてよ、この人、山岳部に入れちゃおうか?
「あ、山口さん、こんにちわ。今、私は学食のオムライスを食べていますの。」
「何それ?ここは学食だから当たり前でしょ?というかその話し方、変!」
なんだか、波長が合わないと言うか、こっちの調子もおかしくなる、この人といるの。
やっぱやめようかな・・・・。
「ねぇねぇ、もう倶楽部入ったんだ? どこの倶楽部? イケメンいた?」
「いやぁ、イケメンはどうかなぁ~。山に登るクラブなんだけど、実は新人私だけなんだよね。山口さんは?」
「一人?てことは女子一人?もてもてじゃん!」
いや、もてなくてもいいかな。想像すると、ちょっとぞわっと背筋が寒くなる。
「ねぇねぇ、山ガールの所じゃないよね?あそこは女子しかいないしね!ワンダーフォーゲル部?
もしかして!」
どちらも違います。とは言えなかった。こんなド素人がいきなり本格的な山岳部に入りました!
とは言えなかった。
「や、山口さんはどちらののクラブに入ったの?」
「それがさぁ、まだなのよ!どっかイケメンばっかりのクラブないかしら?あ、でもチャラ男系の男子はお断り!私、筋肉フェチだし、渋い男が趣味なのよねぇ~」
それって、なんのクラブでもいいわけか。イケメンさえいれば。
その時、先輩二人が話しながら、学食にやってきた。
「あ、加奈子ちゃん!こんなところにいたの?どう新人みつかった?」
山口紀代がいきなり立ち上がった!
「あ、私、いま、この加奈子から勧誘された山口と申します!今、決めました!
山岳部、入部希望です!」
え~~~~!
驚いたのは私だ。な、なんで?イケメン好きじゃなかったの?
あとで教えてもらったが、紀代は、ファッションとか綺麗な顔は興味なくて、日に焼けた顔やひげ面の顔がいい!好き!と告白してきた。どうも私のイケメンのイメージとはだいぶ違うが、まさに蓼食う虫も好き好きの諺がリアルに沁みてくる。