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未曾有の大災害に遭遇する

その日の夜、私は茜さんのことを念じて、母の日記を開いた。


そこには、やはり今まで読んだこともない文章が現れた。


やはり、この日記にはなんらかの仕掛けがしてある


しかも、こちらが知りたい内容が出てきた。


今までそこまで意識しないで開いていたので、それなりの文章しか出てこなかったのだ。


それにしても不思議な現象だ。


とりあえず、私は日記を読んでみた。


~母の日記より~

私は2年生がほぼ終わるという時に茜さんからメールが来た。


『こんにちわ。茜です。加奈子ちゃんももう3年生になるのね。私は4年生だから、これまでのように登山だけというのも難しくなるかもしれません。就活始っちゃうしね。それで実は今、東北のとある山に来ているの。まだ雪深くて春には程遠いけど、そんなに危険な山じゃないし、心配しないでね。加奈子ちゃんたちも雪山登れるようになったら、一緒に行こう』


それだけだった。

日付は3月10日


そう、翌日、あの大きな地震と津波があった日の前日。


あの時の事は忘れない。


あの日、私は東京でアルバイトをしていた。


野口さんの紹介で、私はアルペン系のお店で店員をしていた。


スキー客が多いので、どうしてもそっちの方に駆り出されていたのだけど、登山の用具に詳しくなるし、実際に自分が登るので、社員割引で買えるのが嬉しかった。

夕方になる前、まだお客さんもあまりいない時、大きな揺れが突然来た。


私は商品が大きく揺れて、まるで木が倒れる様に、棚やハンガーラックが倒れていった。

商品は飛び出し、蝶が舞うように床中に散乱してゆく。

天井もいつ落ちてくるかわからないほど、建物全体が大きく音を立てながら揺れている。


あまりにも強く、長く揺れているので、死の恐怖を感じた。

死ぬかもしれない。

本当にそう思ったのは初めてだった。

そいてもう収まるのでは?と期待した瞬間、もう一度、下から突き上げるような揺れ。


それは揺れというより、暴力的な装置の上で、これでもかこれでもかと落ちるまで激しく動かされてるような振動だった。もう死ぬ!と思いながら、必死に床にへたり込みながら踏ん張っていた。


たがて揺れは収まるが、店内は大いに乱れていた。


まずい、お客様に被害はないか?


他の店員と声掛けしながら、商品をどけてゆく。


幸いけが人はいなかたった。


しかしまももや大きな地震が、携帯の緊急警告音とともにやってくる。


逃げるどころではない。


そして収まるごとに店内を片付けるのだが、そのたびに揺れ、必死に倒れないようにハンガーラックにしがみつく。


そうこうしてるうちに、だいぶ地震の間隔も長くなった。


店長が本社からの指示で、店員は家に帰るように言われた。


私も帰らなきゃと思ったが、電車が動いていないとの情報が入った。


この店に泊まるのも怖かった。


でも歩いて帰るには道順も分からないし、暗くなってきているので、本当に途方に暮れた。


携帯はどうにもつながらない。メールも出来ない。


そんな時、茜さんが店に現われた。


え?今、東北じゃなかったの?


「加奈子!いる?」


確かに茜さんだった。


私は大声で叫んでしまった。


「茜さん、私はここ!」


「よかった!無事なのね!さ、帰りましょ!ここにいると2次災害も怖いわ。私についてきて!」


言われるままに私は茜さんについていった。


どうも茜さんの住んでいるマンションに行くらしい。


「茜さん、今は東北ではなかったのですか?」


「その話は後よ。うちは小金井なんだけど、歩けるわよね?」


神田から小金井か。相当歩かねばいけないが、登山で鍛えた脚。全然いけると思った。


「行けます!大丈夫です!それより、紀代とか野口先輩とか無事なのかな」


「大丈夫、野口は殺しても死なないやつだから!紀代ちゃんは実家に帰ってるの。宮崎」


私はとりあえずホッとしたが、後輩や友人が今どうしてるか心配だった。


「今はこれ以上確認はとれないわ。とにかく未曾有の災害に間違いないわ。東北では津波が押し寄せてるという噂もお店に来る前に聞いたの。もし私があの山にそのままいれば、土砂崩れに巻き込まれていたかも!」


なにかの虫の知らせで、今日の朝方、東京に戻らないと!と思ったそうだ。

登山家は第6感を大事にする。

その直感に従ったまで。と茜さんは言った。


そしてその直感はあたった。


東北は今まで誰も見たことのないような大規模な津波で沿岸地域が全滅。


その後のニュースで約2万人が犠牲になった。


関東でも犠牲者が出て、東京でも死者が出た。


交通機関はマヒし、東京外から迎えにくる車で、都市の機能は完全にシャットダウンした。


こういう時、歩くしかないのだ。


私は歩いて歩いて、ようやく小金井の茜さんのマンションに着いたのは明け方近くだった。



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