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見えない糸

佐々木加奈は言った。


「私、電子機器には頼りたくないんです」


その訳はこうだ。


電子機器は確かに便利だ。


しかしそれに頼りすぎると、自分の五感、しいては第六感まで鈍ると言う。


極限状態では自分自身の判断で生死を分けることもあると言う。


その時、電子機器がもし止まっていたら?GPSで自分の場所も分からなくなったら?


だから普段から彼女は直観を大事にしてると言う。


「若いのに、自分とは全然違うわね」


そう感心して彼女に言うと、彼女はこう答えた。


「この考えは茜さんの考えなんです」


え?どういうこと?


「茜さんが1冊だけ出した本があるんです。それが当社、笠松出版から出した唯一の著書。

その中に、電子機器に頼ってはいけない。と、あったんです。それをたまたま高校生の時に古本屋でみかけて、私はそこから山岳部に入部しました。ロッククライミング以上のスリルを味わいたかったかもしれません」


私の母が作家だということは、会社に入ってから知ったらしい。


母が亡くなり、色々なものが見えてきた。


何か見えない糸で、私たちは繋がっている。


「ところで、紀代さんてお友達いましたよね?その方は今、どうされているかご存じですか?」


そういえば、お葬式の時、多くの学生時代の友人とおぼしき人たちがいた。もしかしたらあの中に板のかもしれない。あとで過去帳を見ておかないと。確か、個人の名前ではなく、山岳部一同とだけあった。住所も分からず、返礼もしていない。私はそこまで気が付かなかった。住所のわかる人だけに返礼していたからだ。


「私ったら、ごめんなさい。肝心な友人を忘れてました」


そういって、佐々木加奈との会話は途切れた。


もう一度、母の日記を読まなければ。


紀代さんのこと、もっと知らないと。


「加奈さん、じゃ。また!」


私は時計を見ながら神田駅に向かった。


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