もう一人の部員
「あ、そうだった!」
頭をぺしっと叩いて、西城八十男が言った。
「あのね、加奈子ちゃん、友達いないかな?一人でいいんだけど、部員をもう一人、欲しいんだよね。
そうすれば5人になって、この我が明朗大学山岳部も廃部から免れる!」
あれ?一人入れたとしても、4人では?
「あ、いやいや、ここにはいなんだけど、2年生にもう一人、いるんだよ。」
え~?そうなの!で、どんな人なんですか?
野口健太郎がもぞもぞと口を開いた。
「2年生の子は、今、海外に行ってて、まだ戻ってこないんだ。一応、女性なんだけど。。。」
なんだけど? 先輩の口は何かはさっまたかのように、もごもごしてた。
「猛者なんだよ。猛者。いや、鬼かな?登山の鬼!」
鬼?なんか怖い。加奈子の頭の中には、オリンピックレスリング女王の顔が浮かんだ。
「ま、いいや、彼女ことは!今はさ、1年生の子。男女問わず!
とにかく5月の連休に合宿するからさ。それに参加出来ることが条件!」
GWに合宿ですか? わ、どうしよう!お金かかりますよね!
「いやいや、そんなにかからないよ。うちの大学の宿舎がある処。電車賃も往復3千円ちょいだから。」
でも、私、装備とか何にも持ってなくて・・・。
顔を見合わせる先輩二人。
「大丈夫!そこへはスニーカーでもいける!リュックも着替えとタオルがあれば、軽装でOK!」
ほっとした私がいた。さすがにまだ高山はやばい。低山でさえ、未経験に近いのだから。
「じゃ、加奈子ちゃん、部員勧誘お願い!」
「お願い!」
2人は両手を拝むように加奈子に頭をさげた。
「今日は驕り!じゃ、加奈子ちゃん!また大学の部室で!」
その日の新人歓迎コンパは終わった。
加奈子は、帰り道、新しい部員のことで頭がいっぱいになった。