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茜の思惑

「茜さん、すいません、それって、イザナギとイザナミじゃないですか?つまりそのぉー、男神が先で女神がと、みたいな」


茜は笑った。


「確かにそうだったね!でも、だれが男が先と決めたの? 子供を産むのは女。だから私は男尊女卑の匂いのする日本書紀とかに違和感があって、あえて女神を先に行ってしまうの。ごめんね」



茜さん、相当にこのことに関しては、一家言ありそうだ。



お腹すいた~と西野君が言うので、


私たちは江の島駅の近くにある食堂でカレーライスを食べた。


駅前だったが、今日はお客が少ないようだ。


店内は1950年代風のアメリカンチックな内装とアメリカのオールデーズの曲が流れていて、ジュークボックスも置いてあった。



食後のコーヒーを飲みながら、茜さんが語り始めた。



その時、私は茜さんの登山に対する思いなどを知った。


今回、鎌倉を選んだのは、ここがナショナルトラスト運動を始めた日本最初の土地であること。

失われてゆく日本の記憶が、ここでは未だに身近に感じられること。

自然に触れ合うだけでなく歴史を知り、宗教をしることで、より深く土地のことがわかること。

登山の最終的な目標は、己を知ること。

様々な苦難、孤独を感じることで、自分の内面と対峙することで、本当の自分を知る。



などが、茜さんから教えられた。



紀代が質問する。


「茜さん、私も宮崎でここと似た環境の青島あたり、よく遊びに行ったのですが、田舎は何もないなーとかしか思ってなくて、都会に憧れて、東京の大学に入ったんですけど、あらためて、私の故郷のことをもっとよく知りたいなって、思いました。私の故郷は古い里って感じで嫌だったんだけど、何千年も連綿と受け継がれている伝統が根付いていて、それは誇りに思っていていいんだと・・・・。」



「そうね、宮崎も、ここ鎌倉も、古くは縄文時代からの人々の営みがあり、現在に繋がっている。そして、加奈子ちゃんのように純粋な気持ちの子は、自分の過去生まで見てしまう!」



「え? あれって本当に自分の過去生? まだ信じがたいんですけど!」


私が困惑している顔を横目でちらりと見て、続ける。



「洞窟などで修業して自分の過去生と対峙した人は歴史上とても多いんだよ。そして過酷な山に登るアルピニストも、極限の状況で同じようなものを見ることも多い。ただし酸素不足や過労などで、幻覚を見る場合もあるので、要注意だけどね」


西野君も紀代もポカーンとしていた。



「でも、本当に過去生?ですか。それと幻覚、どう違うんですか?見分けることできますかね」


私は聞いた。


茜さんは少し考えて答えてくれた。


「私は、それはとても難しいと思っているの。少なくとも酸欠状態の時は幻覚をみるわ。あと古代の修行僧などは麻薬などを使っていた時もある。でもそれも幻覚ね。悪魔や悪鬼まで出てきてしますから!」



「こわ~い!」紀代が叫ぶ。



「でも本当に怖いのは、山をなめてしまうことよ。命を落としてしまう。だからこそ、幻覚を見ないように、普段から心身を鍛え、山に登る前に万全の準備をする!」



「はい!」


私たちは背筋を伸ばして返事をした。


私はこうして初めての登山(?)を終えて家路についた。



私は、過去生と向き合う勇気もなく、まだ何故、あの洞穴での出来事が不思議でならなかった。その後は、家で夢を見ても、あの少女は現れなかった。


ホントに私はあの時、道に迷ったのか?


すれ違った女性は私だった。


そのあと、過去生の少女に会った。


その意味を考えながら、また私のキャンパスライフが始った。

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