富士山と江の島
登り切った江の島もあとは下るだけ。
といいつつも時々下った登ったり。
またアイスを食べたくなるほど、初夏のような暑さ。
「けっこう足に来た・・・。」
急な階段で紀代が弱音を吐く。
高低差は本格的な山ではなかったとはいえ、
鎌倉アルプスの西側をずっと歩いてきたのだ。
疲れて当然だ。
すると前方に海が開けて見えた。
「わ。すごい断崖絶壁!」
眼下に海は広がっていた。
「江の島もこっちから見たら、険しい山なんだ!」
西野君が誇らしげに言う。
地元愛が強いね(笑)
紀代がまわりのカップルがいちゃいちゃしてるのを見て、
「今度来るときは恋人と来たいな・・・。」
「紀代さん、今度は僕が案内しますよ!」
え?西野君?
紀代もまんざらではない様子。
カップル誕生!?
茜さんが岩場まで降りてゆく。
干潮で大きく広がった岩場では、多くの人たちであふれていた。
「綺麗な魚やカニが、あのくぼみに残されてるのよ」
海水がところどころ残っている。
大きなくぼみは体がすっぽり入るぐらい深い。
「あ、お魚さん!フグ?」
それはとても大きなフグだった。
「綺麗でしょう!フグも。
この近くに洞穴があるんだけど、今日は混んでるのでボートで帰りましょう!」
岩屋とは、この島のシンボルでもある龍が降りてきたともいわれる洞穴だ。
富士山とつながっているという噂だが、古代から噴火してきた富士山だから、
古代の人は恐れ多い目で見ていただろう。縄文時代の遺跡も見つかってるくらいだかし、後に神様や仏様が安置され習合していったのだろう。
まさに江の島は古代から神の島なのだ。
この洞穴は昔からのパワースポットでお坊さんから武士まで、
ここで瞑想してきたらしい。
茜さんの話では、真っ暗な洞穴で潮騒の音しか聞けない環境にいると、人は変性意識状態になり、人によっては天から声が聞こえたり、映像が見えてきたりするらしい。
私たちはボートの船着き場まで、滑る岩肌に気をつけながら歩いていた。
突然、紀代が大きな声で叫ぶ。
「富士山、富士山!」
海の上に、思ったより高い位置に富士山の雄大な姿が見えた。
「わ~、葛飾北斎の絵みたい!」
紀代が言った通り、いつもの富士山より尖って見えた。




